1話女の子
幼いのはどうだったのだろう。
今よりは喜怒哀楽がまだあっあのだろうか。
峰淵 梨穂高校2年生に上がったばかりだ。
他の女子と私は違い、なかなか生理というものが来なかった。
「遅れているだけよ。私の友達の子なんて高校3年生でやっときたって言ってたし」
お母さんがそう言っていたので気にもとめていなかった。
でも、女子との会話はたまに生理の話になる。私はその話に入ることができなかった。
5月11日お腹が急に痛くなった。
「お母さん、今日ずっとお腹が痛くて…」
「大丈夫?明日病院に行ってみようか!」
「わかった。」
次の日学校を休んでお母さんに連れられた病院は、産婦人科だった。
(先に言ってくれれば制服なんて着て来なかったのに…)
心の中ではそう思っていた。
お母さんは、少し抜けてる人だった。
周りの人の目が気になる。
高校生で妊娠してると思われても仕方がない。
「3番でお待ちの峰淵様ー」
看護師さんに呼ばれたので診察室に入るとおじいちゃん先生だった。
(先生って男の人なの?まぁ、おじいちゃんだからいいか)
「今日はどうされました?」
「はい!この子まだ生理が来てなくて、昨日学校でお腹が痛くなったって言ってたのでもしかしたらと思って…」
「まだお腹は痛む?」
「はい、少し…」
「では念のためエコーで見てみましょうか!」
先生はそう言うと私をベットへ寝かせお腹を出して看護師さんが冷たい透明なジェルをお腹に塗った。機会を押し当ててモニターを先生が見ている。
「うーん。これは尿かな?ちょっと尿を出して来てもらってからまた見てみましょう。」
看護師さんがジェルをぬぐいトイレまで私を誘導した。
(そんな急に尿を出してこいって言われても…)
頑張って尿を出した。時間は何分かかっただろう。
診察室に戻るとなんかおかしい。
お母さんが心配そうに私を見ている。もう一度ベットに横になりジェルを塗られた。先生がモニターを見ながら険しい顔になる。
「うーん。私の方から大学病院を紹介しますので、そこでもう一度診てもらってください。」
「わかりました…」
(え…なに?なにかあったの?)
受付で支払いを済ませ、車に乗った。
「お母さん、先生なにか言ってた?」
「…まだ詳しいことは分からないって言ってたよ。」
「ふーん」
それ以上は教えてくれない気がしたので聞かなかった。大学病院はお母さんの仕事の都合もあったので来週となった。
「梨穂ちゃん!おはよ!昨日病院行ったって聞いたけど大丈夫?」
いつも一緒にいる優子だ。人見知りは激しいが慣れてくるとくっついてくる。
「優子おはよー。大丈夫だよーでも、来週また大学病院で見てもらうんだって。」
「えっ!本当に大丈夫?心配してた生理じゃなかったの?」
「なんかそれも怪しくなってきたよね。親もはっきりとは教えてくれないし。まぁまた教えるよ。」
「そっかぁーわかった!」
そのまま今までの通りの学校生活を終えいよいよ明日は、大学病院に行く日となった。
大学病院は想像していたより大きな病院だった。
私は、基本的には病院は嫌いだった。単純に待つのが嫌だったからだ。大きなことともあったのでようやく呼ばれ診察室に入るとまた男の先生。
(産婦人科の先生って男しかいないの?)
「えーっじゃあお座りください。今日は紹介でいらしてますね。一度CTを撮りたいのですがよろしいですか?」
「わかりました。お願いします。」
違う部屋に案内されバスローブみたいなものに着替えたら横になり大きな機会のなかにゆっくりと入っていった。なんだか暖色系の明かりで暖かくて眠ってしまいそうになりながら梨穂は寝顔を見られるのも恥ずかしいので頑張って起きていた。ようやく終わり、着替えてまた別の部屋へ案内された。次に案内された部屋は変わった部屋だ。入ってすぐ椅子が置いてあるが椅子に掛かるくらいのカーテンがある。
「それではこのスカートに履き替えて下さい。パンツも脱いでね。終わったら椅子に座ってもらっていいかな?」
「わかりました…」
(産婦人科だもんね…)
椅子に座るとさっきの男の先生の声がする。
「えーっじゃあ股を開いてー」
(は?)
すごく嫌だった。診察なのは分かってはいるのだけれど、体が抵抗する。
「ごめんねー嫌なのは分かるけど診察しないと分からないから…」
「すいません…」
嫌々ながら股を開いた。すると、なにやら硬い棒のようなもので膣口をついてくる。
(痛い…)
「はい!ありがとう。」
少し涙目になっていた。
「お疲れ様でした。着替えて待合室でお待ちください。」
(なんだったの…生理の検査ってこんなことまでしないといけないのかな…)
待合室に行くとお母さんが先に座って待っていた。
「どうだった?」
「どうだったって…よく分かんないけど」
「そっか…」
先生の前で股を開いたなんて恥ずかしくて言えるわけない。お母さんには誤魔化して伝えた。
すぐに看護師さんが来た。
「次は血液検査をしますのでこちらに来て下さい。」
「はい」
(血液検査までするのか、ホルモンバランスとかそういうことかな…)
「では、今から性別検査のため血液で検査しますね。」
(えっ…なに。どういうこと?私女じゃないの?)
びっくりするあまり声が出なかった。なんのための検査なのかが分からなくなってしまった。これからどうしていいかも分からなくなってしまった。
血液検査はすぐに終わり、しばらく待合室で待たされようやく呼ばれた。診察室に入ると、さっきの先生が検査結果の報告をしてくる。
「血液検査の結果女性です。CTの結果ですが…子宮が欠けているようです。多分、生まれつきでしょう。1000人に1人の確率で、ロキタンスキー症候群というものです。生活等に支障はないのですが、生理はありません。後は、男性と関係を持つ際、膣がありません。なので、膣口から切り開いて広げて行く技法かもしくは腸を少し切り取り膣口と繋ぎ合わせるかどちらかになります。どうされますか?」
理解不能だった。なにを言ってるの分からなく先生が言ってることを流して聞いてしまった。
「人口的に子宮を付けることはできないんですか?」
「お母さん。人口的に子宮は作ることは可能です。ただ機能性はないです。なぜなら今の現代男性が女性に性転換される人でも赤ちゃんが産めるようになってしまうからです。」
「そうですか…分かりました。また娘と話し合います。」
そうして診察室を出た。私はなにも言えなかった。
「ごめんね。お母さんがちゃんとした体で産んであげられなくて…」
(やめてよ。今ここでそういうことは言わないで欲しい)
「いいから。後は病院出てから話そう?」
「そうだよね」
お母さんはすでに涙目になっていた。逆に涙が出なかったのが幸いだった。精算を済ませ、本題に入った。
「どうする?手術のこと」
「どっちもしたくないな…」
「分かった!今すぐしないといけないわけじゃないしね!」
その後は2人ともなにも話さず無言のまま家に帰った。
家に着き自分の部屋に入りどれくらいぼーっとしたことだろう。やっと泣いた。病院ではお母さんがすでに泣いていたのでタイミングが分からず泣かなかった。
でも、声はなるべく出さないように声を殺して泣いた。この頃からだった、あまり泣かなくなったのは。
どれだけの人と触れ合っても人の感情とは難しい。
きっかけさえあれば、取り戻せるのだと彼女は考えている。
この作品は一部フィクションです。




