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75話 進む道先

 トスネ孤児院にて。

 トイレ掃除をしたり、ネコの餌を求めたりした建物の庭で、もくもくと働くロボット掃除機……もとい、俺。


「ポルカにはそんな能力もあったんですね、とりあえず、残りはこちらで乾かしますから大丈夫ですよ、助かりました」


『ピンポン♪』


 孤児院の長であるココ姉さんにもう十分だと伝えられて、稼働していた[吸水・吸湿]を停止する。

 目の前に積み上がった木の枝は、あらかた乾ききったようで、そのうちの何本かはココ姉さんの細い腕で建物の中へと運ばれていった。


「はぁ。まとまったお金ができたら、雨漏りを直してもらいましょうか」


 恨めしそうに天井を見つめるココ姉さんを横目に、これまでのいきさつをぼんやりと思い出すのだった。



 集会所を掃除し終わった俺達は、あのあと図書館の掃除を手伝っている。そこで俺は掃除がてらに除湿をかけてカビの発生を前もって防いでいた。

 そこそこの広さを持つ図書館であり、いくつかの小部屋もあった中で丁寧に一部屋ずつおじゃましながら除湿をかけていたのだ。

 まあ、そんなことをしていれば、俺が出入りした部屋の空気が明らかに乾燥していることに気づかれるのも無理はない。事実、あっさりと感づかれたので、特に隠すこともなく新機能[吸水・吸湿]をお披露目したのだ。

 せっかくあの難敵である城塞ビーバーを倒して手に入れた能力なのだし、極悪食ピグの[魔法吸引]に比べれば使いどころは多岐にわたる。腐らしておくにはもったいない……とか考えていたあの頃の自分をぶっ飛ばしたい。

 というのも、そのせいで


「あー、ポルカだー!」


「ポルカと おにごっこしたいひと こーのゆーびとーまれ!」


「「「「とーまった!」」」」


「じゃあポルカがオニ! にーげろー!」


 そして唐突に鬼ごっこが始まったんだけど、俺はどうすればいいんだろうか。

 とりあえず勝手にオニを決めやがったあのガキンチョを再優先で狙ってやろうか。


「こらこら、ポルカはいろんな場所を乾かすために頑張ってるんですよ。残念ですけど、今日はポルカと遊ぶ日ではありません」


「「「「えぇ〜……」」」」


 庭を走り回る子どもたちに向かって、優しく、でもきっぱりとダメだと伝えるココ姉さん。

 彼女の言うとおり、今日は一日街のあちこちを乾燥させるために走り回っていた。図書館で除湿機能をひけらかしたところ、そのことがあっという間にトスネの街中に広まってしまい、ここを乾かして欲しいだの、あれを干してほしいだの、そういった依頼が一斉に舞い込んできたのだ。

 すべて受け切るのも不可能だと考え、氾濫した川に近い建物と多くの人が利用する施設にしぼって依頼を受けていたのだけれど、それでも十分に多い。

 今日の日中もほぼ除湿しかできなかった。ごみ拾いの時間より除湿している時間のほうが長いって、掃除機としてどうなんだ。

 カラッとした空気とは裏腹に、俺の心中はひたすら湿っぽい。これはあれだよ。湿気を吸い込みすぎたせいだよ。決して自分の存在意義が変な方向に行ってることを気に病んでいるわけじゃないよ。

 せめてごみ拾イストのアイデンティティを失わないようにしないと。街の中にゴミが落ちている限り、俺はゴミを拾うんだ。


「そうそう、ポルカのお陰で、炉にくべる薪が乾きました。力持ちな子は運ぶのを手伝ってくださいね」


 それでトスネ孤児院の話に戻る。

 トスネ孤児院は浸水ではなく、雨漏りの被害を受けてしまったらしい。あれだけの大雨だったし、古い建物で雨漏りするのはしょうがないともいえるか。

 そして雨漏りの影響を最も受けてしまったのが、屋根の下で保管していた薪である。薪に水がかかってしまったせいで、燃やそうとしても火がつかない・火力が弱い・すぐ消えてしまうという問題がおき、ほとほと困っていたようだ。

 単に暖が取れなかったりシチューが作れなかったりするだけの問題ではない。というのも、財政難のトスネ孤児院では、街から補助金をもらう代償として、捨てられたゴミを分けたり燃やしたりする処分場としての役割も担っている。

 ただでさえ洪水の影響でゴミが濡れまくっているのに、薪まで湿っているせいでここ数日はゴミの焼却がまともにできていなかったらしい。


 まあ、そういう事情があるなら俺の[吸水・吸湿]を使うぐらい安いもんだ。ゴミを処分するもの同士、普段はライバルでもこういう時には助け合える関係でありたいと思う。

 そうこうしているうちに、元気いっぱいな子どもたちが何人か集まってきた。数人がかりで外に残されていた薪を持ち上げて、ココ姉さんの後に続くように建物の中へと運び入れる。


「まるたは いつものへやに はこべばいい?」


「丸太じゃなくて薪ですよ。うん、いつもの部屋に運んでくれると助かります」


 孤児院の仲間たちが団結して作業をしている様子を見ると、彼らは血がつながってなくとも家族なんだなと感じさせられる。

 そんな家族の中心に立つココ姉さんの頼もしさに、改めて頭が下がるような思いがした。



 じゃあ、薪の乾燥も終わったし、トスネ孤児院から帰ることにするか。

 [ホームベース]で帰っても良かったけれど、今日一日は乾燥に追われてまともにゴミ拾いしてないんだよな。どうせだし、帰り道はのんびりとゴミでも探しながら……あと、ちょっとした考え事をしながらいこう。

 ココ姉さんや子どもたちに見送られるようにして孤児院から出ていき、キアレおばさんの家に向かって歩き出した。コトラでもいないかなと周りを見渡したが、今日はいないようだ。残念。



 考え事というのは、エアロコンタムのことだ。まだ出会ってすらいないとはいえ、俺をこの世界に呼び出した張本人、いや厄神。どう考えても無視していいような存在ではない。

 今、エアロコンタムはセントラルにいると手紙には書いてあったが……エアロコンタムは俺がトスネにいるということは知っているのだろうか。

 まあ、多分知らないんだろう。英語で書かれたボトルメールが何個も転がっていたとことから考えると、エアロコンタムは俺がどこにいるのかも知らずに適当にメッセージをばらまいているような気がするのだ。

 俺の居場所を知っているなら、こんな回りくどい真似をせずに直接会いに来るだろうし。多分。

 あれ、でもあの手紙の中には俺が最初にいた洞窟のことも書いてあったよな。少なくとも俺がこの世界に召喚された時のことは知っているわけか?

 もしかしたらあの洞窟に何かヒントが……あるかなあ。セントラルに行くための目処が全く立たない以上、そっちを先に調べてみるという手もないことはないが。


 それと、エアロコンタムに出会えたとして、それから先はどうなるんだろうか。ソイルコンタムやアクアコンタムみたいに戦う羽目になるのは御免だけど、そうなる覚悟も持っていなきゃダメだよなぁ。

 一応ソイルコンタムの話では、エアロコンタムは厄神の中でもかなりの変わり者らしいからな。人間に味方する厄神ということは、よほどのことがない限り敵対することはないと思う……そう信じたい。

 うーん、会いたい気持ちのほうがもちろん強いけど、心のどこかに会いたくない気持ちもあるんだよな。俺が今までに出会った厄神2人が、どっちもアレな性格だし。今のところ厄神に対していいイメージがこれっぽっちもないし。


 とはいえ、やっぱりセントラルに行かないことには話が始まりそうにないな。どーしよっかな。どこかに地図でも転がっていたりしないかな。

 つーかエアロコンタムも、どうせ瓶に入れて手紙を流すんなら、周辺地図でも同梱してくれればよかったのに。せめて流す川の下流だけでも……


 そこまで考えた瞬間、頭の中に火花が走った。

 そうじゃん。ボトルメールが流れてきたってことは、エアロコンタムは川の上流にいるってことじゃん。なんで今まで気づかなかったんだよ。

 自分のマヌケさに驚きながらも、とにかく気づいてしまえばこっちのものだ。今日セントラルに向かうのはさすがに難しいだろうけれど、セントラルへの距離次第では自力でたどり着ける可能性が十分にあるかもしれない。

 

 その発想を実行に移すために、帰り道を大きく外れ、トスネの街中を流れる川へと向かう。 この川の上流へとひたすら向かった時にどこまでいけるか、どこにたどり着くか。試してみる価値は間違いなくあるはずだ。

 今日はとりあえず、川に沿って街から出られるかどうかを確かめてみることにしようか。門番さんとかに見つからずに抜け出せるルートがあれば、そのまま川を遡ってみよう。

 ポルカのfatherを名乗る厄神がその先にいる。その可能性を原動力にして、俺は川の上流へと向かい始めた。

プロットねぇ!

ストックねぇ!

書いてる時間もあんまりねぇ!


実力ねぇ!

根気もねぇ!

投稿ペースは月単位!


おらこんな筆者で申し訳ないです。次話はもうちょい短いスパンで投稿したい。

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