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4話 掃除機ライダー・キャット

初めて見るな(ミャー)


 び、びっくりしたけど、どうやら俺のスキル「マルチリンガルLv1」は動物の鳴き声にも対応しているらしい。

 耳に入るのはただの鳴き声なのに、意味が翻訳されて伝わるのは同じだ……なんだこのスキルすげえ!

 ああ、これで人間だったらネコちゃんを思いっきり愛でるのに!好物を与えまくって懐柔させるのに!

 何でロボット掃除機なんかに転生してしまったんだ!神様、俺をどうか人間に戻してください!


ん?ポカポカだ(ニャミュ)


 おおっ、ネコが俺の体の上にのってきた。そうだよな。掃除機って使用中は温かくなる機械、そしてネコは温かいところが好きな生き物だ。

 ネコ好きの俺としては夢にまで見たこの状況!

『ポルカに乗ったネコ』完成!ポルカの体も悪くないぞ!


「ふああぁぁ、食った食った。少し寝る(ミャウー ニャン)ことにするか」


 そういって、俺の体の上でごろりとくつろぐネコ。俺にとっても至福のひと時だ。

 そういえば、猫語でポルカの機能説明ってできるのか?

 マルチリンガルを発動させると、言語選択に「猫語」が追加されていた。


「ポルカだにゃ。掃除するにゃ」


誰だっ(ニャッ)!?」


 あ、ネコちゃんを起こしてしまった……

 ネコはというと、しばらく周りをきょろきょろと見渡している。残念、声は足元からなのだよ。

 何も見つからないとなると、少し不機嫌そうにまた横になった。

 うーん、これからどうしよう。掃除を再開するにしても、ネコが邪魔……まあ、ネコがのってても掃除はできると思うが、起こしてしまいそうだよな……

 でも、先ほどのヘビとの戦いで少なからずエネルギーを奪われてしまったし……早め早めにごみを集めるに越したことはないよな。

 ネコちゃんの事は名残惜しいが、エネルギー問題はこちらの命にかかわるんで。

 すみませんが、掃除を再開させていただきます。


なんだ!?動いてる(ニャア)!?」


 やっぱり起こしてしまったか。これでこのネコともお別れだろうか。


えっと、お前は何者だ(ミャウミャウ)?」


 おお?すぐに逃げるかと思ったが、まさかの話しかけだ。

 よし、猫語で返すことにしてみるか。


「ポルカだにゃ。掃除するにゃ」


「猫語……?まあいいか。お前はポルカっていうのか(ニャアニャウ)。よろしくな。俺の名前はコトラだ」


 返答したいが、自己紹介しかできないんだよな。

 適当に電子音をピポー♪と鳴らしといた。コトラはそれで満足したのか、再び俺の上で横になる。

 お、掃除しているのにネコが俺から離れないぞ、それだけポルカの上を気に入ってくれたということか。

 俺の力ではないが、かなり幸せな気分だ。あー、ポルカに生まれてよかった。


 その後も、掃除を続ける。小石や砂利、ネズミの死骸、剥がれ落ちた苔などを吸い込んでいくうちに、とうとうゴミの量が1kgを超えた。

 エネルギー残量が86か……ヘビのせいで10ぐらい持っていかれたのをさっぴくと、3~4のエネルギーで1kgのゴミを集められるわけだな。これでエネルギーを10回復できる。

 まあ、今すぐ回復するわけではないが。新機能の欄もあったように、ゴミはいろいろと使い道があるみたいだ。慌てて使う必要もないだろう。

 ゴミを溜め込んだからといって、体が重くなるような感覚もないしな。

 そうそう、あの後、新機能についていろいろと調べてみた。どれもこれも掃除に関係した能力である。ポルカに生まれ変わったのだから本命が掃除というのは分かるのだが……

 とにかく、そのなかでヘビに効果がありそうなものをいくつかピックアップしてみよう。


[高圧水噴射 ブロワー 完全焼却 クレンザー 塩素系漂白剤]


 ブロワーってのは落ち葉を吹き飛ばすやつね。掃除機とは逆に空気を噴き出す機械だ。

 ヘビに暴風が効くかはわからないが、一応ピックアップしておこう。

 水の噴射や焼却はいわずもがなだろう。クレンザーや漂白剤も、ヘビにぶっかければある程度の効果は見込めるはずだ。

 洗剤はこれ以外にも割とたくさんあるのだが、いちいち紹介していく暇もないので、これぐらいにとどめておく。

 ただ……完全焼却の100000kgほどではないが、どれもこれも割と多くのゴミを要求してきやがる。

 一番安い機能である[水拭き]は、1kgで取得できるみたいだが、[高圧水噴射]や[ブロワー]は100kgだ。洗剤系は基本的に10kg。まあ、どれもこれも本来ポルカにはできないことなのだし、文句を言うのは筋違いだろうが。

 試しに[水拭き]を取得したい気分だけど、ゴミは貴重だ。豊富ではない。

 ぐっとこらえて、洞窟の掃除を続けるのだった。


 しばらく掃除を続けていると、俺の上に乗っていたコトラが目覚めた。

 ふああと大きなあくびをして、俺の上でしゃがむ。お座りのポーズだ。


「あー、そこ、右に曲がって(ニャアン)


 ふてぶてしいな……俺のような正体不明な存在をあっさり信用してくれるのはありがたいけどな。

 まあかわいいし、命の恩人でもあるし、断る理由もないしな。

 コトラに言われたとおりに右に曲がり、薄暗い洞窟を進んでいく。

 途中で、少し小ぶりのヘビとか、デカめの蜘蛛とかが現れたけど、どいつもこいつも俺の上に乗ったコトラを見るたびに逃げていく。どうやらコトラはこの洞窟の中では結構恐れられた存在なのかもな。

 こんなにかわいいのに!

 ヘビとか食べるけどね!

 その後も、コトラの指令に従って右に曲がり、左に曲がり、命知らずにも向ってきたカエルをコトラが葬り去り……そして、とある場所についたところで、コトラが俺の上からぴょんと飛び降りた。

 そのまま、挨拶もなしに、目の前にあった上り階段をすたすたと昇って行ってしまう。

 へえ、洞窟の中に階段があるのか。この階段の先が洞窟の出口なのか、上の階層があるのかはわからないけど。

 とりあえず、自分もコトラの後を追ってみるか。


 …………

 俺、階段上れなくね?

 何せ一段が自分の身長より高いのだ。ポルカが昇るなんて不可能である。

 あー、くそ、コトラとはこれでお別れかよ。まあ、この洞窟にいればまたやってくるかもしれないしな。

 とりあえず、掃除再開するか。マッピングも結構できている。今日は掃除のついでに、このフロアのマッピングを終わらせることにしよう。

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