表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/76

37話 コトラとモモ 後編

  前回のあらすじ


 コトラに対して好意を持っているモモ。

 せっかく勇気を出して想いを伝えようとしていたくせに、コトラはこれをスルー!ポルカは激怒した!必ず、あのアホ鈍感の猫を小突かねばならないと決意した!

 それでちょっとしたイタズラをしたところ、コトラがプチ切れて、今はその罰を受けているところだ。


「2匹分は重いだろ?」


 罰の内容はと言うと、コトラとモモに同時に踏まれるというものだ。

 俺にとってはこれっぽっちも罰ゲームになっていないのだけど、そのことは言わぬが花だろう。

 むしろこの状況で一番きつそうにしているのは、間違いなくこの子だ。


「ハミョ、Mya、みゅ~……」


 速攻で逃げ出すかと思ったけど、なんとか耐えている。がんばれモモちゃん!

 あとコトラ。そうやって余裕をかましていられるのも10分ぐらいだ。クックック、せいぜい今の状況を楽しむがいい。10分後にどうなっているか、想像するだけでにやけそうになるわ。

 そんなことを思いながら、余裕そうに走っている俺に対して、コトラが首をかしげた。


「……む~、2匹じゃ足りないと見えるな、もう一匹連れてくるか」


 だからそういうところが鈍感なんだろうが!あとスペース的には2匹で結構ギリギリだからな!

 そんな俺の心の声は届かず、立ち上がって他のネコを探しに向かおうとするコトラ……を、引き止める声があった。


「ポ、ポルカが可哀想です。2匹で十分というか、なんというか……」


 そーだそーだ!2匹でも幸福指数がカンストしてるのに、3匹の猫ちゃんに乗っかられる俺の気持ちになってみろ!幸せすぎて死ぬぞ!

 俺の主張はともかく、モモちゃんの必死の説得が実を結んだのか、コトラは特に応援を呼ぶこともなくそのまま座りなおす。

 その様子を見て、モモちゃんがホッと安堵しているのには……気づかないコトラ。ひょっとしてこいつ、前世ではラブコメの主人公だったんじゃない?

 まあいい。そろそろ目的地につくからな。


「あれ、ここってオレの縄張りじゃん」


「ミェミェッ!?」


 復讐されたことを利用する!『いつの間にかお持ち帰り作戦』成功!

 さあ、あとは若いもの2匹に任せて、俺はさっさと退散しよっと。

 方向転換を利用したテクニック、その場で高速回転スタート!ギュルルルルン!


 「「ニャアッ!?」」


 突然の高速スピンに全く抵抗できないまま、遠心力に従って落ちてしまった二匹を尻目に見て、ホームベース発動!緊急脱出!


 □□□□□□□□□


 さてと、キアレおばさんの家の一階にまで戻ってきたけど、うん、やりすぎたかな。

 今度コトラに出会ったときに怒られそうだけど、それは甘んじて受け入れよう。

 あとはモモちゃんがしっかり思いを伝えられるか、あの鈍感がちゃんとモモちゃんからの好意に気づいてくれるかどうか。

 せっかくだし、もう一度見に行ってこよう。いや、ただの悪ノリじゃないよ?



 ネズミか鳥の1匹でもおみやげに持っていこうかと考えたけど、道端にそんなものが都合よく落ちているわけがないかな。

 そう考えていたのだが、たまたまトカゲを見つけたので、爆音を出しながら追いかけ回してたら尻尾を切り落としてくれた。ラッキー。

 コトラに初めて会ったときはヘビを食ってたし、トカゲの尻尾ぐらいなら余裕で食うだろう。コトラの機嫌が治らないときはこのトカゲの尻尾をプレゼントしよう。トカゲには悪いことしたな。

 そんなことを思いながら、再びコトラの寝床まで戻ってくる。


「ポルカ!よくノコノコ戻ってきたな!ちょっとこっちに来い!」


 うぉっと、コトラさんまじご立腹である。

 ここは素直に従っておこう。タイミングを見計らってトカゲのしっぽを与えて怒りをなだめるのだ。

 コトラの怒り具合を見極めるべく見つめていたオレの視界に、コトラの前足がいっぱいに広がった。


「フニャアアッッゴ!!」


[エネルギーが5減少しました]


 って痛い痛い!いや痛覚はないけど、まさかコトラのひっかきがヘビの噛みつきより威力が高いとは想定外!

 こんな凶暴になるまで怒ってるなんて思わなかった。流石におちょくりすぎたか。反省します。

 そういえばモモちゃんはどうしたんだろうか……道の端の方でポケーッてしているあの猫がそうだな。

 うーん、流石にこの短い時間じゃ二人の間に進展なんてないか。

 ぼんやりと別のことを考えていた俺にしびれを切らしたかのように、コトラが文句をまくし立てる。


「足を怪我しているモモを振り落とすやつがあるか!何考えてんだ!」


 あ、あー。それね。そこ突かれると何も言い返せないや。

 コトラのことだしどうせ自分が振り落とされたことを根に持っているのだろうとしか考えてなかったけど、そんなことはなかったな。

 でもこの展開も悪くないぞ。少なくともコトラはモモちゃんのことを悪くは思ってないな。悪ふざけをした俺に対して本気で怒っている。ぶっちゃけ今の時点ですでに、モモちゃんのコトラに対する好感度はかなり高いだろうから、あとはほっといても普通にこの2匹はくっつきそうな感じがするな。

 さっさとコトラの機嫌を治して2匹きりにさせることにするか。

 そう考えて、コトラの目の前にトカゲのしっぽを吐き出す。十数分前に取れたばかりの新鮮なトカゲのしっぽいかがですかー?


「ん、これってお詫びのつもりか?」


『ピンポン♪』


「まあ一応受け取っとくわ。もうあんなことすんなよ」


 割とあっさり許してもらえたようで俺としても一安心。これ以上ちょっかい出すことはないようにしておこうかな。

 トカゲのしっぽを口にくわえたコトラは、それをモモちゃんのところまで持っていって、地面に落とした。


「食べる?」


「あ、ありがとうございます」


 なんだかんだ言いながら、コトラはモモちゃんを大切にしてくれそうな感じがする。

 あの2匹をくっつけようといろいろしてみたけど、そんなことしなくても別に大丈夫だったみたいだ。

 とりあえずお騒がせしました。俺はこれにて失礼します。




 それから数日がたったある日のこと。

 いつも通りゴミ拾いをしている最中、見覚えのある2匹の猫が仲良く日向ぼっこをしている様子が目に入った。


「あっ、ポルカじゃん」


 あっ、コトラじゃん。それとモモちゃんじゃん。

 その後の二人の間は接近したのかな?どうかな?かな?


「なぜかわからないけど、ポルカが妙にウザく感じる……」


 気のせいだね。それで、どうなんだろう。


「いこう、モモ。コイツがいるところでのんびりなんてできないだろうから」


「そ、そうですね。行きましょうコトラさん」


 そう言うと、2匹は立ち上がって、俺から離れるようにゆっくりと歩いていった。

 うんうん、計画通りだよ。俺、泣いてなんかないよ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ