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29話 悪食ピグの討伐6

 あのでかい悪食ピグを倒したことにより、この森のすべての悪食ピグが消える……って展開だったら楽だったけど、そんなことはないみたいだ。

 時々洞窟の外から悪食ピグが入ってくる。みんな疲れているようだが、数匹の悪食ピグを倒すぐらいなら何の問題もない。

 まあ、俺は戦いませんけどね。

 今の俺は、あの巨大悪食ピグの残骸を一生懸命吸い込んでいるところである。

 こいつも例にもれず、死んだあとはグズグズに崩れてしまった。吸い込みやすいという点ではありがたいのだが、仕組みが気になる。

 この世界の細菌が非常に優秀なのか、それとも魔物独特の性質なのか……そういやコウモリの死骸を見たことあったけど、あれはそのままの形を保ってたよな。やっぱり魔物の性質と考えるのが自然か。


 そんなわけで周りを見渡してみると、豚肉祭りといっても問題ないぐらいの散らかりっぷりだ。洞窟の中にいた3桁の悪食ピグが全て肉になればこうもなるか。

 吸引力を20に上げたおかげで、それなりのスピードでゴミを吸い取ることができる。

 10のままだったら、この大型トラック並みにでかい肉山を吸い込むのに何時間かかったことだろう。

 20にしたところでそれなりに時間はかかっているけど。そろそろこの山を吸い取り始めてから1時間ぐらい経過している。

 でも残すところは左後足の先っぽだけだ。それも後少し……よし、でかい悪食ピグの死体を全部回収できた。結構な大仕事だったな。

 これで2000kgはゴミの量が増えただろう、いったんごみの総量を確認してみることにしようか……


[極悪食ピグを吸収することに成功 ポルカの型番がⅡに上がりました]


 えっ?いきなり何?


[マッピングのレベルが2に上がりました]


[マルチリンガルのレベルが2に上がりました]


[ホームベースのレベルが2に上がりました]


[吸引力に+10のボーナスが付きました]


[『魔法吸引』をコピーしました]


[新たな新機能が解放されました]


 うおおおぉぉぉっ!?いきなり脳内に大量の文字が現れたぞ。

 これはあれか。ボスキャラを倒したことによるレベルアップか!?まるでゲームみたいな発想だけど、それ以外の可能性はないよな!?

 何はともあれ、ステータスだ!今、どうなってるんだ!?



ステータス


廣瀬聡介(ひろせそうすけ) [ポルカⅡ]


エネルギー 97/100

攻撃力 10

防御力 10

機動力 10

吸引力 20+10


ゴミ 4277kg


スキル

マッピングLv2 マルチリンガルLv2 ホームベースLv2 ゴミ箱 床ワックス 水拭き 重曹 アセトン クレンザー たわし 酸性洗剤 芳香剤 静音 高圧水噴射 塩素系漂白剤 |(魔法吸引)



 ポルカⅡ!……って心の中で叫んでみたけど、なんだこれ。ネーミングが安直すぎるだろ。

 まあ、スーパーポルカとかハイポルカとかになるよりは分かりやすいしいいか。

 スキルもなんだかんだでかなり増えているよな。とったスキルを全部覚えてるわけじゃないし、何か消えてても気づかないかもしれない。多分そんなことはないと思うが。

 増えすぎてもわけわからないことになりそうだし、これからはステータスとスキルは分けて考えることにするか。


 予想通りゴミがものすごい増えてることや、ステータスが吸引力特化型になっていることはおいといて。

 問題はずっと上がらなかったスキルレベルが一気に3つとも上昇したことだ。

 特にマルチリンガルLv2!お前には期待しているぞ!フラグじゃないからな!

 あと、(魔法吸引)ってのがすごい気になる。さっきの文字を思い出してみると、これってあのでかい悪食ピグ……極悪食ピグ?の能力をコピーしたってことでいいのかな。

 思い当たるのはあれだ。魔法を食ったやつだ。

 俺は食道にいたから食うところを見たわけじゃないけど、食道の中を魔法らしきものが通っていった感じはした。

 うーん、魔法を吸いこむ掃除機か。今のところこのスキルの必要性が感じられないけど、タダでもらえるというのならありがたくもらっておこう。


 ……今になってしょうもないことに気付いたけど。

・俺の体はまるい。

・何でも吸い込む。

・ペポー音を出す。

・吸い込んだ敵の能力をコピーすることができた。

 ……まるであのピンク玉……気にしないことにしよう。


 新機能が解放されたみたいだけど、それも後で確認しておけばいいか。そんなわけで今から確認スキルレベル2!

 まずはマッピングから!どうなったのか……んー、マーキングができるようになったみたいだ。例えばこの洞窟にマーキングをしておけば、マップの中に印がつけられて、また来る時に探しやすい。地味だけど悪くない成長だな。

 次……ホームベースはちょっと検証しにくいからここではやらない。


 問題の多言語話者(マルチリンガル)だ。このスキルを持っていながら、『私はポルカ、床の掃除はお任せください』しか喋れなかった今までの日々を思い出す。

 スー、ハー。よし!覚悟を決めた!喋るぞ!まずは挨拶から!


『こんにちは!』


 その瞬間、自分の周囲にいた討伐隊の何人かが、こちらを向いてきた。

 おっしゃあ!マルチリンガルさん期待裏切らなかった!

 このまま喋れるようになったことをアピールするぞ!


「ピポーピポー♪(今日の遠征はお疲れさまでした)」


「あれ?さっきポルカが『こんにちは』って言った気がするけど、気のせいか?」


 ええっ!?ちょっと待って!


『こんにちは』


「お、気のせいじゃなかったみたいだな。こんにちは」


「ピポーピポー♪(名前は何ですか?)」


「ははは、何だかご機嫌みたいだな」



 検証すること10分。

『こんにちは』『おはようございます』『こんばんは』『ありがとうございます』『どういたしまして』『ねむいです』『つかれました』『おなかがすきました』『おなかいっぱいです』『たすけてください』

 これら10個の言葉が追加されていた。ボキャブラリーが増えたよ!やったねポルちゃん!


 ムダに期待させやがって!後半の方なんか使いどころがわからねえよ!掃除機の体なのに『ねむい』とか『おなかいっぱい』とか感じるわけねえだろが!

 気は進まないけど真面目に考えてみよう。本来のポルカはそんなにべらべらしゃべったりしないけど、メーカーによってはいろいろ喋る機能を付けたロボット掃除機も開発していたはずだ。

 例えば『おなかいっぱい』は、ゴミを吸い込みすぎてそれ以上吸い込めない時に出てくる言葉。

『たすけてください』は、何かアクシデントがあって動けなくなった時に出てくる言葉。

 そう考えると、ロボット掃除機として表現できることが増えたと考えられるけど……あまりうれしくない成長だな。もっと自由にしゃべる機能が欲しいのに。

 はぁ……よし!悪態つくのは終了!

 今までさんざんお世話になったマルチリンガルさんなのだ。ちょっと成長の方向が予想外だったぐらいで文句を言うのは筋違いである。

 とりあえず、あいさつと感謝の言葉を伝えられるようになったことは大きな進歩だろう。

 マルチリンガルのスキルを上げ続ければ、自由にしゃべれるようになる日がくるかもしれない。その日を目指して日々精進あるのみだ。



 とまあ、いきなりの急成長に関していろいろ検証している間に、休憩は終わりになってしまった。

 洞窟を抜けて、森の中を進んでいく討伐隊一行。日が沈んでくる時間帯になっており、あたりはだんだんと薄暗くなっている。


「このあたりで野営だな。最初の見張りはメラク班に頼む」


 その言葉を聞いて、一斉に野宿の準備が始まる。確かにこのままだと森を出る前に真っ暗になるだろうからな。明かりをともす魔法はあるみたいだが、疲労の事を考えてもいったん休むのが得策だろう。

 俺自身は眠くも疲れてもいないんだけどな。さっき取得した言葉『ねむい』『つかれた』を何か別の言葉にチェンジできませんかね。

『あぶない』とか『だいじょうぶ』とか言えたらいいんだけどな。



 野営の準備も一段落ついたようで、討伐隊の面々は遅めの夕食をとっていた。


「もう悪食ピグの発生源はつぶしたんだし、ゴミはその辺に捨てても大丈夫だよな?」


「別にいいんじゃね?」


「あー、紙のゴミならたき火に投げ込んでくれませんか?」


 野営地から聞こえてくる声に、この世界の常識が自分の持っているそれとは違うのだということを感じる。

 今回ゴミ処理に気を使ったのは、あくまで悪食ピグに対処するため。悪食ピグがいなくなったのなら、ゴミを捨てても問題ない。

 この世界の人たち、みんながみんなそういう思考を持っているのだとしたら……あまり気分のいいものではないな。

 俺が人々の意識を変えることはできないけど、せめて野営地に元から落ちていたゴミは回収させてもらおう。たった今アルミホイルっぽいものがポイ捨てされたので、それも吸い込んでおこう。

 ポイ捨てする兵士でも、今回の遠征で俺たちを守ってくれたのは確かなのだ。彼らのために快適な野営所をつくるのは俺の仕事であり、お礼でもある。

 世の中持ちつ持たれつなのだ。それぞれの得意分野でお互いに支えあうのが理想的なグループだろう。

 そうだ。全く眠くならないことを利用して夜の見張りを手伝うことにしようか……



「入口の方から人の気配がやってきますわ!」


「え?こんな時間にですか?」


 突然声を張り上げたミーナに、怪訝な目を向けるルーカス。

 周りはもう真っ暗だ。こんな闇夜で森の中を歩き回るなど、自殺行為と言われても仕方ない。

 だが数分後には、本当に男が1人野営地までやってきた。

 騎士団の服を身に着けているということはボズの部下なのだろうけど、剣も鎧も身に着けていない。まるで大急ぎで伝えなければいけないことがあり、最速でここに来ることを最優先したかのように。


「ほ、報告申し上げます!ぜぇ、トスネに陣が!ぜぇ」


「おい、どうかしたのか?もっと詳しく話してくれ」


 ただ事ではない雰囲気に討伐隊のみんなが耳をそばだてる。

 信じられない一言が、その男の腹から絞り出された。


「トスネの街の中に、悪食ピグの魔物陣が現れました!」


ひっそりと10万文字達成しました。

ちょっと今忙しいので、次話の投稿が遅れると思います。来週の月曜までには復帰できるよう頑張ります。

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