19話 質問タイム
「ここ最近ポルカについていろいろ考えてました。いろいろな仮説をあげたんですけれど、当人に聞きたいものもありましてね」
ルーカス、少なくとも悪い奴じゃないんだけどなあ……
どちらかというと、他人に迷惑をかけていることに鈍感な感じがする。
「まず、自分の魔道プログラムを把握しているんですか?」
「ペポー?」
最初の質問から意味が分からない。魔道プログラムって何?
「あの、魔道プログラムって何でしょうか?」
ありがとうノエル。それが聞きたかった。
ノエルの質問を受けたルーカスは、話の腰を折られたことに嫌な顔もせず、むしろ得意そうに説明を始めた。
「マジックアイテムに必ず存在する内部情報みたいなものです。例えば先ほどの探知機だったら、あの棒の中に魔法陣を探すための魔道プログラムが組み込まれていて、それを使うことで魔法陣を見つけることができるんです」
元の世界のプログラムと似たようなものかなあ。
普通のロボット掃除機には掃除のためのプログラムが埋め込まれているけど、今の自分はどうなんだろうか?そもそもプログラムなんてあるのだろうか?
「その反応を見ると、魔道プログラムの存在そのものを知らなかったという感じですかね?」
「ピンポン♪」
ここで見栄を張ってもしょうがないな。正直にいこう。
ルーカスは、なるほどなといった感じでメモになにやら書き込んでいる。
「実は、自分もマジックアイテムに人間の意思を持たせられないかの研究をしているんです。できるかできないかもわからなかったのに、ポルカという貴重なサンプルがいきなり登場したんです」
「そうだったんですか。あ、でも無理に調べようとして壊したりはしないでくださいよ」
「……そんなことするわけないじゃないですか。アハハ」
おい、今の間は何だ。
俺の中でのルーカスに対する距離感がどんどん離れていく。
だが、そんな距離感は全く関係ないとでもいうかのように、とんでもない質問を畳みかけてくるルーカス。
「それで、ポルカに質問なんですけど、ポルカの中身って人間なんでしょうか?」
驚いた。まさか、この質問をされようとは。
マジックアイテムとして生きていく生活も悪いわけじゃないが、中身が人間だということを知ってもらうのもありだと思っていた。
一度ゴミ屋敷の片づけに訪れただけで、ここまで考察してくれるとは、正直なめていたかもしれない。
ルーカスに関しては、ただの片づけできない人という認識を改めなければならないようだ。
「ピンポン♪」
ここで嘘をつく必要はないだろう。自分の正体を知ってもらいたいという気持ちは強い。
「おお、まさか本当に僕の予想が当たるなんて!」
「ゴメン、どういうことなんでしょう?ポルカくん、中身は人間ってこと?」
「中身が人間というよりは、人間の魂を持っているって言ったほうがいいですかね」
「人間の魂が?ポルカくんの中に?」
「ピンポン♪」
ノエルはきょとんとしたように俺を見つめている。そうだよな、こんな円盤の中に人の魂が閉じ込められているとか、普通に考えたら呪いの類だよな。
ルーカスは、予想が当たったことに気をよくしたのか、さらに説明を付け加えた。
「厳密にいうと、魂を再現したもの とでもいうべきでしょうかね。僕の仮説だと、魔道プログラムなら人工的に魂を作れるはずなんです」
ノエルの頭上に?マークがいくつか浮かんでいるのが見える。まあ、俺の脳も似たようなものだが。
しかし、魂の再現?人工的?異世界の事はよくわからない。
「自分が誰の手によって作られたかわかりますか?」
「ペポー」
「わかりませんか、ポルカを作った技師の手掛かりは0と……まあかまいません。ありがとうございました」
ルーカスは残念そうにいうと、俺への質問を切り上げた。思っていたよりも時間がかからなかったことに一安心する。
そうだな、ルーカスに対する評価が自分の中で少し上昇した。ちょっとしたごみぐらいは片づけてあげよう。
部屋の隅に集まってたゴミへと向かい、全部吸い取っておく。ルーカスは少し微笑んで「どうも」とお礼を言った。
「あれ?ポルカくんって床に落ちてるものならなんだって吸い込むのかな?」
「ピンポン♪」
今のところ、大抵のものは吸い取れると自負している。
吸入口より大きいコウモリや、ビンまで吸い込めるのだ。地面に張り付いてでもいない限りはいけるだろう。
「もしかして、うちのゴミも床にばら撒いておけば吸い込んでくれたりするのかな?」
そりゃそれぐらいだったら余裕ですよ。って、来た!
自分は吸い込むことでゴミを取得し、おかみさんはゴミの廃棄に必要な金を浮かせられる、お互いに得する宿屋のゴミ協定を結ぶチャンスだ!
「ピンポン♪」
「あ、でも大変だったら無理しなくていいよ。床の掃除をしてくれるだけで十分に助かってるから」
ちょっと待って、そんなことないから!むしろゴミをください!
「ペポー!」
「ど、どうしたの、宿屋のゴミを吸いたいっていってるのかな?」
「ピンポン♪」
「そ、そう、まあ、お母さんに相談しておくね」
あれ、なんか引かれている感じがする。何でだ……行動を思い返してみよう。ノエルから見ると、俺は中身が人間なのにひたすらゴミをねだるマジックアイテム……
うん、俺も引くわ。あまり考えないようにしよう。
「ああ、もう一つ。先ほどのオオカミ魔法陣騒ぎについてですけど、真相はくだらないものでした」
「あ、何かわかったんですか?」
「はい、描かれていた魔法陣を解析して、何とか描いた人を捕まえました。なんでそんなことをしたのか問いただすと、オオカミが出てきた騒ぎに乗じて、近くの宝石店から火事場泥棒をしようという魂胆だったみたいです」
確かにくだらない結末だな。まあ、大事件にならなくてよかったと安心しておこう。
事件の真相なんてこんなものである。
「一つ間違っていたら死人が出てましたからね。許されることではありません」
「ピンポン♪」
「しかし、今回はポルカのおかげで悲劇を未然に防ぐことができたみたいですね。住人を代表して、僕がお礼を言います。ありがとうございました」
本当にただの偶然なんだけれどな。
それでも、街を掃除したことで、住人の暮らしを守ることができたなら、掃除機としてこれほどうれしいことはない。
おまけに、自分の中には人間の魂が入っていると理解してもらい、宿屋のゴミをいただく算段も進んでいる。こちらこそルーカスに感謝しなければいけないかもな。
今日は魔法陣騒ぎのせいでほとんど掃除ができなかったけど、また明日から頑張ることにするか。




