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1話 ロボット掃除機の目覚め

2016.10.04

ルンバの使用をやめた関係で、内容を一部変更

 まずった。

 目の前には、本日拾ったごみが散乱している。

 拾ったごみをぶちまけるとか、ゴミ拾イストとしてのプライドに反する行為だが……それでころではないのだ。

 今の俺は車道に倒れ伏しており、意識はだんだんと遠ざかっていく。


 軽率な行動が悔やまれる。

 ゴミ拾イストとして、ゴミに貴賤はなく……まあ、全部賤なのだが……とにかく、あらゆるゴミを区別せずに拾うようにこころがけている。

 それでも、珍しいゴミが落ちていたら、テンションが上がってしまうものだ。

 先ほど拾い損ねたゴミ……『バナナの皮』

 今時バナナの皮て。

 脳内で突っ込みながらも、ゴミ拾イストとしてこのゴミを拾わないわけにはいかない!と、車道に飛び出し……クルマに轢かれた。

 俺はアホか。

 まあ、アホなんだろう。

 アホな死に方選手権があるなら、入賞できるかもしれない。

 まあ、いくら後悔したところで、これからしばらくはゴミ拾いができないという事実は変わらないだろう。

 ていうか、体の感覚ないけど、これ大丈夫なのかな?

 すごい体から血が出てるけど、死なないかな?

 そんなことを思いながら……俺はいったん、意識を手放すことにした。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 唐突に意識が戻る。

 死ななかったかという安堵感と、ゴミはどうなったのだろうという疑問を持って目を開いた。

 病院ではない。

 もちろん、先ほどの道路でもない。

 薄暗くてよくわからないが……洞窟?

 地面が少しでこぼこしてて、壁は岩肌がむき出しだ。

 なぜ俺が洞窟の中にいるのか。さっぱりわからない。

 なんか永い眠りから覚めたように頭はぼんやりとしているし、自分の体が自分のものではないみたいだ。いったん周りの状況を確認したほうがいいな。

 そう思って、動き始めようとした。


「ピポーピポー♪」


 なんだ、今の音。例えるなら、学校のチャイムのような電子音だったが。

 ていうか、どこかで聞いたことがあるような気もするな。

 警戒して周りを見渡すも、これといって音の主と思われるものはない。

 俺がいるのは、岩に囲まれた広い部屋。壁の一か所からはちょろちょろと水が噴き出し、隅の方に泉ができている。

 部屋の出入り口は一つだけ。その向こうは暗くて見えない。

 

 音の正体は気になるが、わからないものはしょうがない。

 とりあえず、いったんあの湧き水で顔でも洗おう。さっぱりすれば何か思い出すかもしれないしな。

 何でここにいるのかとか、あの音をどこかで聞いたことがあるかとか。

 そう思って、水たまりのほうへと進み始めた。


「ガーーーー」


 今度はモーター音か。

 自分が水たまりに進み始めると同時に、部屋の中にモーター音が響く。

 音の正体を見極めようと、いったん止まって周りを見渡した。

 俺が止まるのと一緒に、モーター音も止まってしまう。周囲を見ても、やはり何もない。

 音の主がわからないまま、再び泉のほうへと向かう……再びモーター音がし始めた。


 ……これって、あれだよな。

 俺が、この音の元凶だと考えるべきだよな?

 いやいや、人間が電子音を出したり、モーター音を発したりするわけないだろ。いくら俺だって、そのくらいのことは分かる。

 ほら、泉をのぞき込めばこうやって俺の顔も見れ……


「ピピピピッピピー」


 全力で叫んだはずのに、俺の耳に届いたのはただの電子音だった。

 いや、ちょっと待て、見間違いだって可能性もある。もう一度落ち着いて見るんだ。

 はい、深呼吸、ハー、スー、スー、スー、スー、スー。

 よし、たっぷり吸って落ち着いた……ちょっと吸いすぎた気もするが。というか、いくら吸っても限界を感じなかったんだけど……?

 とにかく、もう一度泉をのぞき込む。

 そこに見えたのは、黒い円盤。

 水をのぞき込んでいる関係で下側しか見えないが、なぜかオレが近づいたとたんに水面がさざ波立ち、後ろの方まで見ることができた

 ついているタイヤは3つ。三輪車のように配置されている。前の1つが方向転換に使われるものなのだろう。

 左前方には謎のブラシがついている。まるで、この体では届かないようなところを磨くかのために存在するブラシだ。

 そして、謎の四角い穴。裏面の1/3ぐらいが、この四角い穴でできていた。

 これ、見覚えがあるぞ。ええと、どこで見たんだっけ……

 ……うん、思い出した。

 俺の母親が抽選で当てた景品。

 商品名『ポルカ』

 自動で部屋の掃除をしてくれるロボット掃除機だ。

 とりあえず自分が人間でないことを確認した俺は、どこにいるとも知れない神様に向かって声を張り上げる。


(なんで俺が掃除機になっているんだよ!元に戻しやがれ!)


 そんな俺の魂の叫びも、実際のところは「ピピピー!」という電子音に変換されて、部屋に空しく響き渡るだけだった。



 ひとしきり現状を嘆いた後で、これからどうするかを考える。

 大体、俺が掃除を好き好んでいるのは確かなのだ。歩くだけで周りをきれいにする存在になれるなら、悪いことばかりでもないかもしれない……いやいや、無理矢理ポジティブになってみたけど、どう考えても掃除機になったことを喜べるわけがない。

 まあ、そんな事グチグチ言っても、なってしまったものはしょうがないのだ。

 まずは自分の体を理解することから始めよう。

 ええと……歩くのは普通にできた。実際のところはタイヤを使って走っているが、スピード的には「歩く」と表現してかまわないだろう。

 これ、スピード調節とかできるのかな……できた。ふむ、全力を出しても、早歩きぐらいのスピードか。ポルカも別に足の速さが求められる機械じゃないしな。

 さて、確かポルカには喋る機能があったはずだが……自分の性能を説明するときに喋ってた気がする。


「ポルカは、あなたがほかの家事を行ったり、外出している間に、お部屋をきれいにお掃除します」


 おお、喋れた。

 喋れたけど……これ、喋るというよりは、録音音声を流しているだけだよな?

(こんにちは)とか(マイクテスト)とか喋ろうとしても、この場合は電子音が再生されるようだ。

 あ、ついでに一つ面白い発見をした。

 自由に喋ることはできなかったけど、電子音を自由に発することはできるようだ。

 しかもこの電子音、割と音階が広くて、たいていの曲なら演奏できそうである。

 少し練習したら、あっという間にマスターできた。口笛を吹くような感覚だな。

 気分転換に好きなアーティストの曲を一曲演奏する。ピコピコ音が自由に出せるってのは、意外と楽しかった。

 って、そんなことやってる場合じゃないだろ。ポルカに転生したところで、この適当な性格は治ってくれないようだ。


 さて、ポルカの本命である、清掃機能について調べさせてもらおうか。

 とはいっても、ここは洞窟だ。小石を吸い込んで故障でもしたらこまるな……

 どうしようか、いったんこの部屋から出て、掃除ができそうなスペースでも探すか……そういえばここはどこなのかとか、どうして自分がポルカになったのかとか、根本的な疑問が何一つ解決してないよな。

 もうちょっと自分の体について調べさせてもらおう。ええと、俺はポルカ、動くのは可能。性能の説明はできるが、自由にしゃべるのは無理、その代わりに電子音を自由に操れる……ほかに何か調べることはないか?

 ほら、なんかさ……例えば、充電具合を自分で確認できるとか、吸い込んだゴミの量を計るとか、そういうことはできないのかな?



ステータス

廣瀬聡介(ひろせそうすけ) [ポルカ]


エネルギー 99/100

攻撃力 0

防御力 0

機動力 10

吸引力 10


ゴミ 0kg


スキル

マッピングLv1 マルチリンガルLv1 ??????Lv1



 うおっ、脳内になんかでてきた。

 ふむ、これが俺のステータスか。色々ツッコミどころ多いけどな。

 とりあえず、このステータスの存在はちょうどいい。色々と調べさせてもらおう。

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