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13話 ポルカ、この街のゴミ問題について考える

まさかのレビューが書かれました……

1日で1000PVということにも、驚きを抑えられません。

キヨシさん、ありがとうございました。

 灰だー!灰を吸うぞー!

 歩きまわっているだけで、ゴミがどんどんたまっていくわ!ふはははは!


 はい、現在何をしているかというと、自由時間という名の火山灰清掃タイムである。宿屋の仕事といっても床の掃除ぐらいしかすることはないので、どれほど丁寧にやったとしても数時間で終わってしまうのだ。

 そんなわけで、午後からは降り積もった火山灰を片付けるためにその辺を歩き回る。

 この街に来てから五日ほど経った。今ではすっかり俺のうわさも広がり、この街の住民で俺を知らない人はほとんどいないといっても過言ではない気がする。

 この前なんかどこかのおばあちゃんが「あんたいつも火山灰なんか食べて大丈夫かいな。ほれ、リンゴでも食べんさい」といってリンゴの切れ端をくれたので、ありがたく頂戴しておいた。ゴミとしてだが。



 しかし、火山灰の掃除をしながらここトスネの街を眺めているが、パッと見の見た目がきれいな割には、あまりゴミの処理がうまくいっていないようだ。

 例えば、ちょっと路地裏に行けば、本来のゴミ捨て場ではないところにゴミが散乱している。

 街の中を川が流れているが、その下流の方でゴミが沈んでいる。

 空き家と思わしき家の庭に、ゴミの山ができている。

 ゴミ屋敷の件では、おばちゃんがこの街のゴミ処理のシステムに文句を言っていたが、その実態が何となくわかってきた。


 その原因の一端を担っているのは、やはりあのシステムだろうか。


「じゃあ、大桶1杯と中桶2杯で、銅貨35枚ね」


 今日も今日とて繰り広げられる光景。

 この街にはゴミ収集所という名の建物がいくつかあるのだが、そこでお金を払ってゴミを引き取ってもらうことが、ここでの正しいゴミの捨て方のようだ。

 確かにゴミの処理というのはタダでできるものではない。日本だって、有料の指定ゴミ袋でごみ処理にかかる費用を回収していた。

 だが……この世界のそれは、ちょっと高すぎる。

 この前、おかみさんがちょうどごみを捨てに来たところを偶然見たのだが、1日分のゴミで銅貨30枚ほど取られていた。

 この世界における貨幣価値は、銅貨100枚=銀貨1枚、銀貨100枚=金貨1枚といったところだ。うちの宿屋が夕食付一泊で銀貨5枚だから、おおよそ銀貨1枚=1000円ってところか?

 宿屋であるため、普通の家よりはゴミは多いのだろう。だが、それにしたって1日で300円だ。一か月に直せば9000円、一年では10万円以上にもなる。馬鹿にならない。

 正直にゴミ収集所にもっていくより、こっそりと川にでも流したほうがいいと考える人が出ても仕方ないのかもしれない。

 この街にポイ捨てされたゴミは、そんなこの街の制度に怨嗟の声を上げているようにも思えた。


 ……まあ、今の俺にとっては、道端にゴミが捨てられているというのはむしろ好都合なんだが、なんか複雑な気分だなあ。

 この街の住人には、もっと自分たちの街をきれいに保とうという気概を持ってほしい。

 あと、宿で働く給料代わりとしてゴミが欲しいのだが、おかみさんとの交渉が進められない。互いにwin-winな条件なのだから早く締結したい。

 そんなことを思いながら、今日は街の西地区を重点的に清掃していった。この街に降り積もっている火山灰の量は着実に減少しているっぽい。

 屋根に積もっている灰をどうするかが今後の課題だが……まあ、落ちてこないなら無理に手出ししなくてもいいか。


 そういえば、ゴミの方は現在180kgぐらいたまっている。エネルギーの補充にコンスタントにつぎ込む以外には、これといって使い道がなかった。

 防御力を上げようかと思ったが、あのヘビとの闘い以降、ダメージを受けるようなことはなかったからな……

 このまま攻撃力も防御力も死にステータスになるんじゃないかな。ロボット掃除機としてはそっちの方が正しい姿だとは思うが。


[エネルギーが1減少しました]


 いてっ……いや、痛くないか。まあ、なんかが後ろからぶつかってきたぞ。久しぶりのダメージ表示だ。

 振り向くと、自分の後ろに石が転がっていた。さらにその向こうには、男の子と女の子の二人組がいる。


「ほら!あたったよ!」


「わかったから……もうやめなよ、きけんだよ」


 なるほど、あの男の子が石を投げてきやがったのか。

 平べったいポルカの側面に当てるとか、あの男の子はいいピッチャーになりそうだな。この世界に野球があるかは知らないが。

 あからさまに腹を立てるほどではないが、ちょっとイラッとする。

 それに対して女の子の方は常識人だな。全然似てないから姉弟ではなさそうだが。 


「なんだよ。ノリのわるいヤツだな」


「ゼムがお子さまなだけでしょ、そんなしょうもないあそびして」


「へーん、どーせこどもですよーだ」


 おお、この男の子はこちらのイラつきゲージを上昇させる天才か。

 腕があったらぶん殴りたい気分だ。いや、比喩だよ?ほんとにぶん殴ったりはしないよ?

 男の子は、もう一個石を投げてくる。さっきの一投が当たったのはただの偶然だったらしく、今度は俺の右隣を転がっていった。


「あー、ハズれたー。石さがしてこなきゃ」


「だからもうやめなよって……だいたいね、あれはわたしたちのために道をおそうじしてくれてるんだから」


「え?あれがポルカなの?」


「うん、もしかしたら怒っちゃったかもよ?ゼムの家の周りだけ掃除してもらえないかもよ?」


 なんか変なイメージを植え付けられようとしているが、実際ぶん殴ろうかとか考えていた身としては何も言えない。

 まあ、そうでなくても自己紹介以外は何も言えないのだけれど。

 女の子に諭されて、渋々といった感じで俺に謝る男の子。


「……石を投げてゴメンねポルカ」


「ピンポン♪」


 テキトーな謝り方だなとは思うが、許そうじゃないか。俺は心が広いからな。

 あ、そうだ。いいことを思いついた。

 ええと、まだ火山灰がたくさん残っている場所はないか?お、あの範囲はまだ掃除をしていないからぴったりだな。よし、あの辺にしよう。

 運動会で流れるようなクラシック音楽を口ずさみながら、火山灰を吸い込まずに(・・・・・・)移動する。マッピング機能を発動して、自分の周辺を空から確認した。

 これだけ火山灰があれば大丈夫、吸引開始!

 男の子と女の子の二人組は、さっさと帰ってしまうかと思ったが、急に俺の雰囲気が変わったことを感じたのか、その場にとどまって俺を見ていてくれる。

 マッピングをフル活用しながら、内側から渦を書くように掃除を始めた。

 最初はほんの小さな円を、そして、だんだんと大きくなるように。

 ナルトのような四重の渦ができたところで、いったん掃除をやめる。

 今度は、その周りを囲むたくさんの半円を描くように、掃除を再開した。

 渦の周りを一周して、合計9個の半円が渦を囲んだところで、吸引と音楽を止め、その場から離れる。


「あっ、あれ、お花じゃない?」


「ホントだ!スゴイ!」


 そう、火山灰を吸いながら、「ハナマル」を描かせてもらったのだ。

 砂の上に描くアートとしては難易度が低すぎるが、その分マッピング機能を使ってきれいに仕上げておいた。

 ぶっつけ本番でやったにしては上々の出来だろう。ここからの視点ではちょっと見えにくいが、二人が喜んでくれたならばこちらとしてもうれしい。

 俺はただ掃除がしたいのではなく、みんなを笑顔にさせる掃除がしたいのだから。

 そんなことを思いながら、二人の対応もそこそこにして、本来の目的である火山灰の掃除を再開するのだった。



 日が沈んだ頃に、おかみさんの宿屋に戻ってくる。今日も一日中働いていたな。疲れたとは感じないが、それでも宿屋に戻ってくるとなんだかホッと一息つきたい気分になる。

 従業員ルームに入ると、俺が帰ってきたことに気付いたノエルが声をかけてきた。


「ポルカくん、お帰り!」


「ピンポン♪」


 最近ではノエルが結構いろんなことを俺に教えてくれるようになった。

 妹がいるのだけれど、今はちょっと町から町へと飛び回っているのだとか。妹がいなくなって寂しかったところにポルカである俺がやってきたので、妹の代わりにかわいがってくれているのかもしれない。

 俺、中身は男なんだけどな。そしてノエルより年上なんだけどな。


「ちょっと聞いてよ、今日のお客さんさー、酔っぱらってたのかなんか知らないけど、私の頭を見て『あれ?何でこんなところに鳥の巣があるんだ?』って言ってたんだよ」


「ピンポン♪」


「そんなに私の天パは酷くないっての!ポルカくんもそう思うよね、私の天パは酷くないよね?」


「……ペポー……」


「……ポルカくん?覚悟はいいかな?」


 やっば、逃げるぞ!……って、ここじゃホームベース使えないんだよ!学習しろ、俺!

 ノエルは部屋の端から真っ黒になったモップを持ってくると、その顔をニコリとほころばせ……これ以上は思い出したくないので、省略させていただきます。

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