第四十八話 黒ノ守ト義ヲ捨テタ氷
少年は怪異とともに〈暗黒〉にその存在を置き、視力がわずかに戻った友人の隣で静かに横になっていた。その姿を見た少女は、彼に直接の手助けができないことを、少しばかり悔しんでいた。
(ザイには巻き込んでもいいって言ったけど、私は何ができるんだろう……)
少女にできることは、自然魔という特殊な能力。しかし、彼らの存在を支えられるものではないかもしれないことを、少女は感じていた。無理に横にいようとしても、それが逆に彼らの迷惑になるのなら、と。考え出すときりがなかった。
「嬢ちゃん。ラオガには前に言ったけどよ、そう思い詰めんじゃねぇぞ? 嬢ちゃんにだってできることはある。そう思えるってことは自ずと強くなれるもんだ。支え方はいろいろあるぜ」
医療室の教育師は、無理に横に立っていようとしなくてもいい。無理に支えようとしなくてもいい。そう、少女にフォローを入れる。
「はい」
だから今は、彼らを信じて、自分ができることを見つけようと、少しだけ気持ちを楽にすることができた少女だった。
......
『吟、連れてきたぞ』
〈暗黒〉に降り立って直ぐに、穏慈は俺を乗せて、吟と深火がいるという場所に向かった。吟から俺を呼ぶということは、余程のことがあるのだろう。
「また何か起きてるのか?」
『ウム……、マズハコレヲ……ミテクレ』
吟が深火に合図をし、深火はそれに応えて、尾の火を辺りに散りばめた。そこに落ちている、幾つかの塊が目に入る。遠目からではよく分からず、近くで見るためにその塊に手を伸ばした瞬間。吟の制止の言葉と同時に、穏慈の尾が俺に巻き付いて、その物から距離を取らされた。
「わっ、ちょ、浮いてる浮いてる!」
『間違っても触るな。これは肉の塊だ。何のものかは分からんが、吟は触れるなと言っておる』
「吟が……そうか」
念を押され、それ以上その肉塊を触ろうとは思わない。それよりも穏慈が吟の言うことに従うことが多いことは以前から気になっていた。確かに、吟は空間の声を聞くことができるし、俺も何度か頼ることもあって信頼性も大きいが、穏慈がここまで素直に聞くのには、何か理由があるはずだ。
『吟、どうすればいい』
「コノ肉塊ノ……ショウタイハ、調ベテイル……トコロダ」
この状況で、その点を追求している場合ではない。その詳しいことは、後回しだ。
「じゃあ、何で俺は呼ばれたの?」
『ナニモノカ……ニヨッテ、歪ガウマレテイル……。防イデホシイ……コレハ、私デハテニオエヌ……デッドニシカ、デキン』
〈暗黒〉にできている歪、と聞いて、そういうことならと頷いた。
アーバンアングランドと繋がっている〈暗黒〉が崩れてしまえば、アーバンアングランドも崩壊する。それは、ホゼが裏切り者だと判った時だろうか、その頃に聞いた。
「……分かった。その歪みはどこ?」
『我が辿る。その間に、吟と深火が肉塊を調べ上げるそうだ』
穏慈に乗れ、と促され、俺はその背に跨った。吟が肉塊の方を調べてくれるのであれば問題なさそうである上、深火も吟に協力的だ。聞けば、方舟の件で迷惑をかけた分を返そうとしているのだという。
『フセギカタハ、鎌ガシッテイルハズ……。頼ンダゾ』
「うん。そっちもよろしく」
そうして俺は、二つの世界の生存に関わる、その歪の解決に向かった。
......
日が暮れ始め、屋敷にいる屋敷生、教育師は、殆どが自室に戻っていたり、通いの者は家に戻ったりしている時間帯。因みに、医療室にいる面々は、常時全員屋敷で生活している。
「ラオ、これ見える?」
「あ、分かった三本だ」
俺の視力が戻って来ていることを知ったウィンは、初めは自分の指を使ってその経過を見ようと言ったのだが、いつの間にか遊び感覚になっていた。
「ザイヴは何言ったんだろうなぁ」
「凄いな、少年は」
「何はともあれ、何とかなりそうですね。基本クラスの広間の修繕が終わるまでは、基本剣術のクラスの講技もほぼないそうですし、ウィンさんも今の内に」
「ガネ! 私に任せてね!」
「やる気満々じゃないですか」
「ううん、そんなことない。ウィンちゃん可愛いから甘やかしちゃう」
同室にいるため教育師が盛り上がる声もこちらに聞こえてくる。ソムさんのその発言に、ウィンは狼狽えていた。しかしソムさんはやる気があるのかないのか、口にこそ出さないが思った。
「……あ、ねぇラオ、今度また遊びに行こうよ」
「俺は良いけど……」
「ザイも行きたがってたよ」
ザイがウィンに何を言ったかは分からないが、ゲランさんのフォローも加わって前向きになってくれたウィンの姿を、俺は嬉しく思っていた。
(気分転換にでもなるような時間が作れた時には、三人で過ごしても良いよな……)
きっとザイも、同じことを思ってくれるだろう。
......
不気味な、風のような音が聞こえている。おそらく、穏慈に乗って宙を進んでいるから。こうした時間になら聞くことができるかもしれないと、先程思った吟のことを聞いてみることにした。
『……そうか、お前は吟が物知りだとしか認識しておらんのか』
唖然として、暫くの沈黙を作っていた穏慈だが、ついに口を開いて言った。その内容は、俺の吟への認識を、遥かに上回るものだった。
『吟は、守り神と呼ばれている。だから〈暗黒〉の声を聞くことができ、守ることができる』
「守り……えっ神!?」
『いや、そういうわけではない。神秘的な役目をするやつだから、そう呼ぶだけだ』
「へぇぇえ……怪異もいろいろいるんだな」
〈暗黒〉の一角にある渦を選択して能力を得るのだから、多くの種類の怪異がいるのは当然だが、きっと吟は特別なのだろう。しかしなるほど、今の話で穏慈の吟に対する対応の理由に納得ができた。
〈暗黒〉において、吟の言うことにはなるべく従った方が良さそうだ。
『……気配が強くなってきた。歪の、嫌な感じだ』
「そういえば、鎌が知ってるって言ってたけど、どうすればいいんだよ」
吟が言うには鎌が導くらしいが、俺に応えてくれるとは言い切れない。不安に思い、穏慈の背にいることをあまり考えずに鎌を解化してしまった。当然のように鎌に引っ張られ、落ちそうになっていた。
「ちょっ、ちょっとスピード落として」
『あ? お前が勝手にやったことだしっかり捕まっていろ』
「無慈悲か!」
『今解化するとは思わんだろうが、急ぐぞ』
一瞬だったが、穏慈の眼がギラリと光って俺を捕らえていることに気がつき、言い訳をしようとした俺は、瞬時に謝罪した。
飛びながら解化すれば持っていかれそうになることは分かるのに、俺はそのことをほとんど考えずに解化してしまったのだから、何も言えずにいた。
『全く、歪が広がってしまえば、影響が出るのは向こうだぞ』
「分かってるよ、散々聞いた」
『と、言うことだ。もう一度言う。急ぐぞ』
穏慈は、俺にお構いなしに進んでいく。俺は必死で穏慈から落ちないように、しがみついていたのだった。
それからいくらか駆け回った後。
『この辺りだな』
俺には分からないが、その周囲から強い気が、溢れているらしい。
鎌を片手に持っているが何の反応もなく、どうしたものかと考えていると、穏慈も悩んでいた。吟が言う「鎌が知っている」というのは、“鎌が反応してくれる”ということだと思っていたが、穏慈が身を置いたこのあたりでは、全くと言っていいほど鎮まっていた。
「どうしたらいいんだろ」
『! ザイヴ伏せろ! 何か来る!』
「えっぶふっ」
俺よりも察しがつきやすい穏慈は、いつも俺に危険を知らせてくれる。それはとてもありがたいし助かっているのだが、俺が自分で伏せる前に、穏慈の尾が俺を地に叩き付けていた。さすが反射神経が良いだけあって、その衝撃で俺は顔面を強打していた。勢いが良すぎたのを穏慈自身も自覚したのか、すぐに尾を上げた。
『……すまん、生きているか?』
「……その辺に浮いてる俺を取り戻して」
『浮いておったら喋ってない。無事だな』
「痛いのは変わんねーけど……何?」
のそりと身を起こし、顔面をこすりながら座り込む穏慈に尋ねた。思いの外の衝撃で、鼻の頭がじんじんと痛んでいる。
穏慈が察した何かは、俺の目には触れなかった。
『直前で消えた。何だったのだ……』
「俺は潰され損か」
『そう言うな。お前のためを思って潰したのだぞ』
「潰したって言うなよ」
俺が認識できないのはその気配自体が消えたためだと言う。それならば仕方がないが、俺の鼻の痛みをどうにかしてほしい。
そういえば、吟は何者かによって歪ができたと言っていた。自然にできたのではなく、手が加えられたということだ。もしかしたら、今穏慈が察したものがその正体なのではないだろうか。穏慈に言ってみると、同意の返答をくれた。
「鎌、反応しないな」
俺は再度穏慈に返答を求めるが、彼は何故か挙動不審に辺りを見回していた。俺の言葉は聞いていないらしい。こういう時は、必ず何かある。そう確信して、穏慈の気にすることを優先させることにした。
「どうした?」
『いや……我が嫌いな臭いが少ししたからな。どうしたものかと』
「穏慈が、嫌いな臭い……って、おっさんのこと!?」
『……おっさん?』
「……ああ、分かりにくいと思って気を付けてたんだけど……ホゼのこと。俺のクラス担当だった頃、あいつのこと名前で呼んでなかったからつい」
以前、ホゼが裏切り者だとわかり、俺を狙って来たときに言った、穏慈の言葉。あの時、穏慈は確かに嫌いな臭いだと言っていた。
『……あぁ、そういうことか。確かにそいつと似ているが、あいつは人間だろう。間違ってもここには来れんはずだ』
「そうだけど……あいつ何するか分かんないから、ちょっと怖くて」
『安心しろ、前のような失態はせん』
穏慈がそう思ってくれていることは、素直に心強く思う。しかし、あの時のことを思い返すと本当に嫌な思いなる。また狙ってきた時にどうなるかを考えると、不安で仕方がない。
『……ザイヴ、鎌が』
「え? あ」
そんな時、鎌が光った。色のない、透明に近い白い光を纏っていた。穏慈に聞くまでもなく、鎌の方が先に反応を見せてくれたため、その手間が省けたことになる。光った鎌は俺をぐいぐいと引っ張るように前方に向かって行く。
「うわっ、ちょ、強」
一気に持っていかれないために、俺は足を踏ん張らせたが、それはとてつもなく強い力で、少しよろけながら導かれるままに足で追った。鎌が何かにぶつかるような音がすると、その力を止めた。
力が抜けて鎌先は地について、俺の腕に入る力も解かれた。
「びっくりした……何だったんだ?」
『歪に反応しているのは間違いない。鎌をもう一度向けてみろ』
そして、すぐに穏慈にそう言われて、鎌を持ち直すと、今度は歪は光り、裂けた部分がはっきりと見えた。それはいやに禍々しく、変な汗が頬を伝った。
「これか……」
『その様だな。幸いまだ小さい。今の内に……!』
言葉を紡ぐ最中、突然顔を上げて険しい顔を見せた。
『下がれ!』
「うぉっ!?」
ガツッ、と、俺が立っていた場所に、何かがぶつかる音がした。俺に下がれと声をかけるものの、それに対する反射的行動はやはり穏慈が上回っていて、俺は穏慈に銜えられて後方に下がった。
『先のも貴様か』
『旺。否、穏慈。前はよくも邪魔をしてくれた。ホゼ様の命により、再び〈暗黒者-デッド-〉を頂く』
この声は、聞いたことがある。崚泉で聞いたことがある、冷淡な喋り方。俺の傷についていた、見えない毒を浄化しながら、ホゼの戦力になり続ける者。
『泰……!』
あの、毒専門の怪異と呼ばれた怪異、泰。またの名をシュウという少女だった。
以前は怪異を捨てて、ホゼについたと言っていた。だとすれば、〈暗黒〉には降り立てないはずなのに、どういうわけかその人の姿を成したまま、その歪を守るように立っていた。
『どういうことだ、泰』
『ホゼ様の為。怪異を取り戻して来た。これが終われば再び捨てる』
その命が下ったから怪異に戻り、任務を終えたらまた捨てる。どれほどホゼを慕っているのか。
そんなことよりも、怪異を捨てたり取り戻したりすることができるものなのか。もしかしたら、泰も特殊な奴なのだろうか。穏慈を見ると、視線に気付いたようで俺に視線を返してきた。
『……あいつはあの時も能力を使えていた。つまり怪異を名乗ることをやめただけだったのだろうな。今こうしてここにいられるのがその証拠だ。それより忘れてはいまいな、あいつが纏う氷に触れると、身動きはとれなくなる』
泰に視線をやると、きつい目をして、俺を見ていた。その目がここの場に馴染んでいて、穏慈の答えに納得せざるを得なかった。本気度が窺える。
「俺だってもうただじゃすまねーよ。お前がどういう奴だろうと、そっちの傘下におさまる気はさらさらないね!」
『笑わせるな。ここに来るまでにどれくらいの時間を費やしたと思う』
『! つまり歪はお前の仕業か!』
そう、俺でもその泰の言葉の意味は理解できる。だとすれば、なおのこと思い通りにさせるわけにはいかない。ここはおろか、向こうも壊れてしまうことに繋がるのだから。
『そこの〈暗黒者-デッド-〉、頂く』
泰は身に纏う氷を周囲に撒いていく。それを見た穏慈が俺の前に立ち、泰の動きを封じようと動き出した。
『お前は動きを封じられぬようにしろ!』
捨て台詞のようにそう言う穏慈の言う通り、下手に手を出せない状況に気付いた俺は、素直にそれに従う。泰は、隙があれば氷を飛ばそうとしているらしく、腕を大きく動かしている。
俺は鎌を力強く持ち、いざという時に備えた。穏慈は、泰に自分の動きをさせないように動き回り、時には爪を振り、時にはその大きな口を開いて牙をむき出して威嚇していた。
それを見ている俺は、何か不思議な感じがしているのを察知していた。自分でも、よく分からない。そもそも、泰が俺を訪ねたのは、ホゼの命令だ。それを考えても、何故そうまでして俺を捕らえようとするのか。それも謎の一つだった。
そうして頭の中で色々巡らせながら構えているところに、深火が来た。
『……デッド、あれは……泰だ、ナ?』
「深火! 肉塊は!?」
深火は、吟と共に肉塊を調べていたはずだ。その深火が来たということは、何か分かったのだろうか。それとも、単に泰のことを察してここに来たのか。
『未だ正体ハナゾだ……。だが、歪ニモ関係性があるヨウだ』
「深火、歪みは泰が作った可能性が高い。吟にそれを伝え……」
『気をヌクナ、デッド』
俺が言い終わる前に、深火は俺の前に迫って来ていた氷を炎で溶かした。一瞬で水滴になったそれは、蒸発するようになくなっていった。
「あ……」
『……深火。久しいな』
『泰、話は聞イテいル。なぜ戻っテ来た。怪異ヲ一度棄てタお前に……用はナイ』
深火が泰を好ましく思っていない様子が、口調で読み取れる。とにかく、吟が泰の仕業だと気付けば、全てが導かれるはず。それこそ、解決されることは間違いない。
「深火ありがとう。でも、深火は吟の所に戻って、何かあったら知らせてくれ!」
『……ワカッタ。お前ノ言葉に従おウ』
それを聞いた深火は、顔を地につけるようにして、首を下げると、グルッその身を渦巻くように一瞬で消えた。
「穏慈、大丈夫!?」
『……いや、厄介だ。触れられん』
今まで何とかしてきた穏慈が、そう言った。やはり、その氷は色々と邪魔なようだ。それほどの力を持ちながら、ホゼのために使おうというのはどう考えても割に合わないと思うが、泰は怪異に飽きたと言っていたことを思い出す。それに伴い、ホゼのために動くのだと。そのためにこちらに戻って来るくらいだ。ホゼに尽くして命を亡くすことを、惜しいとは思わないのだろう。
「穏慈、俺もやる。大丈夫だから」
『調子は悪くないようだな』
「泰。ここで、終わらせる」
『ほう。楽しみだ』
先ずは、挨拶代わりの【鎌裂き】。これは、泰はまだ喰らったことはない。だが、これはシンプルな攻撃だから、効かない確率が高い。逆に言えば、だからこそこれを見舞った。
予想通り、泰は簡単に避けた。
『……思ったより弱いな』
「余所見してるなんて、余裕だね」
俺の言葉で泰が背後を見た、まさにその時に、穏慈の爪が泰を襲った。
『ぐぅ』
地に打ち付けると、泰の体からは氷がごろごろと溢れてきた。よろよろと立ち上がろうとしながら、壊れた体を戻していく。
「こいつ……」
『半分は氷でできている。そういう怪異だ……いや、そんな話は必要ない。伏せろ!』
穏慈は泰が動き出したその一瞬を見ていたらしく、俺にそう叫んだ。それを聞いて、穏慈に助けられるような間を作らないうちに、本能的に身を屈めた。
『おのれ……穏慈』
俺は膝をついた状態で、泰に鎌を突き刺し、青郡で身につけた能力を発した。
─【潰傷鎌】。簡単に泰の体内に侵入していき、内から泰を苦しめていた。
『ぐっ、ああああ……っ!』
体内から弾け、至るところから血が噴いていた。泰の血の色はまるで氷のようで、粘つきのある血液だった。
『油断するなよ、言ったとおり、半分は氷だ。そこまで効くかは判断しかねる』
「うん、分かってる」
俺はその場に立ち、後ろに下がった。泰は呻き、破壊されつつあり、その場で蠢いた。しかし、ピタリとそれが止むと、泰の身はガチガチと音を立てて凍っていった。
「!?」
『氷で身を庇うつもりか……。ちっ、歪も気掛かりだというのに』
穏慈のその言葉で、歪を見ると、確かに先程よりも広がっていた。細長かった歪が、小さな柱のような太さになっていたのだ。一度裂けたらそこから広がっていくらしく、時間が迫っていることを顕示していた。
「穏慈、死んでも防ぐよ!」
『莫迦を言うな。死なせん!』
歪の状態と、泰の状態を見る。これ以上歪を広げてしまう前に退けなければならない。穏慈は泰の能力をどうにかしようと地から離れ、捉えられないほどの速さで駆け始めた。
『……穏慈、そうして主のもとを離れた隙が、私の好機だ』
そう言って巨大な氷の手のようなものを作って俺を囲う。その大きさに圧倒されながら鎌を向けるも、泰は冷徹に、じわじわと俺に迫って来ていた。