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一級珈琲師神谷の最高傑作  作者: みたらし男子
3/16

バー・ミニッツ襲撃事件2

どーも、みたらしです。


いきなりですが謝罪させていただきます。

ごめんなさい。


えーと、あの……ですね。

いくらか設定をいじらせていただきました。


〈いじった設定〉

・アマンダ目線のシーン:国家飲料師→特殊衛生兵

・アマンダ目線のシーン:赤毛の女→長く伸ばした黒髪を蛇の様な三つ編みにして左肩に流している女性


根本的な設定変更はこんな感じです。

ご迷惑おかけします。


まあ、固有名詞やらキャラクターの見てくれが変わったに過ぎないので、シナリオに大きな影響はないです。


事務連絡はこのくらいにします。

それでは、どうぞ。

○●○●○●○●○●闇夜のスナイパー○●○●○●○●○●○


●●●アマンダ・ロマノフ●●●●●●●●●●●●●●●●●


「……………。はぁ……」


「?神谷、どうかしたの?」


「ん……?ああ、いや……」


昔から何度も夢見ていたと思う。


こんな風に恋人の隣に立って一緒に歩く事を。


静かな冬の粉雪を思わせる幻想的なイルミネーションが瞬く。


私は思わず短く溜め息をした。


溜め息は白い煙となって淀んだ都会の空気に溶けていった。


「……少し、冷えるね」


「そ、そうね……///もう、冬も近いものね…」


甘い甘い幸福感が私の心を満たす。


ああ、まるで夢の中にいる気分だ。


彼と…神谷と…ずっと一緒にいたい。


もし、神谷と私が普通の男女であったなら、あるいはそれも有り得たのかもしれない。


………………………………………。



―――――だが、現実はそれを赦さない。



一級珈琲師。


一級茶師。


一級麦酒師。


一級葡萄酒師。


一級清涼飲料師。


これらを総称して“特殊衛生兵”と呼ぶ。


世間一般では、これらの国際資格を持ったプロ集団はどこの国でも様々な形で対立していると言われている。


しかし、実際はそうではない。



“悪を摘み取り、幸せを広げる―――――”



これが珈琲師を一とする我々特殊衛生兵が集められた本来の理由だ。


対立しているのは国家や善人面をした偽善者共であって、最初から我々ではないのだ。


プロのヒットマンやマフィアを雇い、襲撃させたりした者もいたらしい。


中にはテロリストを焚き付けた者まで。


金や人質でもって我々を操り、仲間同士で殺し合いをさせたりもした。


そこで、仲間同士で傷付け合う事を止めようとした私の父ダニエルは世界中を飛び回り、様々な法律や条約を取り決めさせていった。


そんな忙しい中、私と神谷を育てつつずっとそうして頑張っていたと思う。


だが、どんなに法律や条約で取り決められても、悪はそれらの裏をかき、我々を都合の良い武器として利用し続けた。


それだけではない。


神谷はまだ知らないだろうが、先日奴等は父に有りもしない罪を着せて一級麦酒師の資格を永久剥奪し、強引な裁判で刑務所に閉じ込めたのだ。


私がそれを許せる筈はなかった。


そして今回、奴等がターゲットとして選んだのが日本切っての一級珈琲師”神谷 薫”だった。



―――――私の、初恋の人―――――。



この作戦、コードネームCにはターゲットを油断させる為にも少なからず面識が有る者が必要だった。


そこで白羽の矢が立ったのが旧知の仲でもある私、アマンダ・ロマノフだった。


詳しい作戦の内容は教えられなかったが、彼に会えると言われた私は心底喜んだ。



この作戦を引き受けた事が……まさかこんなことになるなんて………。



ドイツを発つ二日前、私は偶然この作戦の本当の目的を盗み聞きしてしまった。


それはドイツでも有数の大きなバーでの出来事だった。


茶色を基調とした明るい店内を歩いていると、直ぐ後ろからドスのきいた男の声が聞こえてきた。


「…………さん。Cはうまくいきますかねぇ?」


「……………!」


今回の作戦のコードネームが耳に入った私は、然り気無くに柱の後ろに身を隠した。


手鏡を使って柱の影から見てみるとアジア人とおぼしき中年の男が、長く伸ばした黒髪を蛇の様な三つ編みにして左肩に流している女性とカウンター席に座って話している姿が映った。


後ろ姿ではあったが若いアジア系の女性である事が窺える。


「…はぁ……。上手くいくに決まっている」


手にしたグラスを傾け、女はつまらなそうに返事をする。


事務的な男のようなしゃべり方の女性だった。


透き通った茶色い液体に浮いた氷がカランコロンと怪しげに音をたてた。


この話しの内容は聞いてはいけない気がする。



―――――何故かそう思った。



そんな言い知れぬ恐怖もあるが、この作戦への好奇心が勝ったために私を彼女らから離れられない。


すると、酒で口を湿らせた長髪の女が再び口を開いた。


「……安心しろ、黒竜(ヘイロン)。お前は自分の任務は果たせ。……必ず神谷 薫と言う珈琲師、彼を消し去るんだ」



―――――!?



私は耳を疑った。


聞こえてきた言葉の意味が理解出来ずに宙を舞う。


冷たく凍った時間が流れる。


………嘘だ嘘だ嘘だ…!!こんなの嘘に決まってる…!!


やっと動き出した思考もまともに働こうとはしない。


意識もしっかりしないままに私は店をあとにした。


そこから先は記憶が曖昧で、ほぼ覚えていないと言っても過言ではない。


………………………………………。


自分のとったホテルに殆ど無意識でチェックインしていたらしくそのままの服装で眠ってしまっていて、目が覚めた頃には夜が明けていた。


洗面所で自分の顔を見た時、目元が少し腫れていた。


「………あれ…?私………」


泣いていたらしい。


起きて直ぐだった私は寝惚けて混乱していたので、何の躊躇もなく昨日の記憶を掘り起こす。


………………………………………。


思い出して、また泣いた。


………………………………………。


聞いてはいけない事を聞いてしまった私は、胸が張り裂けそうだった。


裏切る事が当たり前の様な世界で生きてきたつもりだった。



―――――だが、違ったのだ。



裏切りと言うのは、する方とされる方とではまるで違う。


もっと正確に言うならば、直接裏切られるほど苦しいものはない。


だから私は神に誓ったのだ。


たとえ世界中の人に裏切り者と罵られ、歴史の闇に葬られたとしても…。



―――――神谷を絶対に守ると。



ふと隣に目をやると、神谷がこちらに真面目そうな視線を送っていた。


どうやらC作戦の追跡者達に気が付いた様子だ。


私は嬉しかった。


こんな事では彼は、殺されない。


それが分かっただけで。


「神谷〜。昔みたいに迷子にならないでね〜?」


その真面目顔を見詰めながら悪戯っぽく笑ってからかう。


「……おいおい…。流石に自分の国だから迷わないって…」


彼は苦笑を返してそっぽを向いた。


これが神谷との最後の会話になるかも知れない。


そう思うと……少し寂しい。


でも………、それでも…彼が、神谷が、幸せに生きてくれさえすれば良いのだ。


決意を新たに、私は大地を踏み締めた。



―――――彼を、守る為に。



●●●ビクトリア・Q・モカ●●●●●●●●●●●●●●●●


日本人というのはどうやら気が速い生き物のようだ。


まだ秋が始まって間もないと言うのに早くも冬の催の準備に勤しんでいるらしい。


街に植えられた木という木に巻き付けられた白と青を基調としたのイルミネーション群が、まだ来ぬ冬の雪を連想させた。


店の策略とは露知らず、数々のカップルは喜んで外出するようになり、それによって様々な店の景気は自然と良くなってくる。


とはいえ、今の時間は十時過ぎだ。


もしカップルがいたとしてもそれの多くは居酒屋か二十四時間営業のファミレスがいいところで、儲かるのはその店のオーナーやコンビニくらいだろう。


派手で露出度の高い衣装を着た女が、やけにじゃらじゃらと趣味の悪い金色や銀色の鎖を身に着けた茶髪の男とべたつきながら歩いて行く。


私の祖国であるロシアでは、様々な危険を考慮して女性は夜外出をしない。


いや、これは世界の基準か。


……………まぁ、私はそんな中…家を追い出された訳だが。


それが出来るのは、ここが治安の良い日本。東京の街だからかも知れない。


歴史上希に見る安全な国だ。


だが、この国の人達は安全な国と引き換えに、何か大切なものを見失っているようで、ここに住む人の目は黒々と煤けていて酷く消極的である。


しかし、最近の日本では銃の規制が緩められた。


その為一定の資格を持っていれさえすれば、帯銃している一般人でも法律に引っ掛かることはない。


………………………………………。


生きている人間に向かって引き金を絞るのは、思っている程楽なことではない。


……私はそれをよく知っている。



―――――嫌な程。



………………………………………。


すれ違い様迷惑そうにこちらを振り向く東京の人々の黒くくすんだ目に、キラリと金色の軌跡を残して走って行く異国の少女の姿が一瞬映った。


さながら夜空に蟠る暗闇を切り裂いて翔ぶ金色の流星である。


冬の訪れを予感させる冷たい木枯らしが、寂しげに私の髪に触れては音をたてて過ぎ去っていった。


冷ややかな風に冷却された私の頭はとてもクリアで、冬の冷たささえも心地好く感じる。


「兄貴……待っててね……!!」


私は彼に、届く筈もない言葉を一つ呟いた。


私の目的はただ一つ。


神谷をテロリスト達から守りきる事。


彼をつけ回っているテロリスト達が目視出来るまでに距離が縮まったので、ここからは見つからないようにゆっくりと慎重に追いかける事に徹する。


歩行者信号が点滅から赤になり、神谷達やテロリスト達も立ち止まったので私も慌てて電柱の影に飛び込み身を隠す。


少し待ってから落書きと剥がれかけのポスターで汚くなっている電柱の陰から様子を伺ってみる。


………何……?


進行方向の右側に位置する建設途中の灰色をしたビルで、何かがチカッと光ったのが見えた。


状況が状況なだけに不審に思い、ポーチから取り出した厳つい軍用の双眼鏡を覗いてみると。


「……………あれは……っ!?」


私は呼吸を忘れた様に苦しくなった。


いや、この光景には、誰もが絶句せざるを得ないだろう。



―――――街のライトを反射していたのは、狙撃銃のスコープだったのだ!!



う………嘘っ……!?


銃の種類までは分からなかったが銃身の傾き具合から察するに、狙いが神谷周辺なのはまず間違いない。


このまま進んだ場合、彼は確実に的にされるだろう。


背後の敵に集中しているのだ。誰が他の場所からも狙われている等と考えよう。


いくら一級珈琲師の神谷と言えど、姿の見えない…いや、存在も確認出来ていないスナイパーを相手に1キロ半と言う洒落に成らない致命的な距離。


経緯は分からないが素人を一人抱えて逃げている状況に加えて大人数による謎の尾行、もとい囮染みた行動………。


ここまで悪条件が重なってしまえば……………殺しのプロですら生き残る事は極めて困難だ。


……………何で…こんなに計画的にっ……!?


私は絶望のあまりその場に崩れ落ちた。


…………………………………。


だが、この状況はあまりにも不自然だ。


何者からか誘い込まれているとしか思えない。


虚ろな私の目に神谷の隣を歩くブラウンの髪の女性が映った時、私の中を青い電流が駆け抜け、今までの出来事がパズルの様に繋がっていった。


そして、それは恐ろしい結論を導き出した。いや、出してしまった。



―――――あの女か……あの女が、スパイだったのか!!



無論、彼女がスパイである証拠等どこにもない。


だが、彼女がスパイでないと言う証拠が無いのもまた事実だ。


私は考えるより先に、狙撃手が佇む場所、建設途中のビルに向けて駆け出していた。


そんな事させない…………。絶対に、させないっ……!!


そして金髪の少女は、狙撃手に見付からないよう回り道をしてビルを目指すのだった。


●●●○ ○○●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●


赤銅色の手すりの間から黒塗りの銃口を覗かせているのが辛うじて見える。


遠くにあるパチンコ店の白いライトが目に眩しい。


「…ふぅ〜。全く……アマンダさんも人使いが荒いぜ………」


上司の事をぼやきながら、寒さに凍えた手に息を吹き掛け温める。


……まあ、そこが良いんだけど…………。


手の熱を保って動かしやすくするのは、狙撃手にとって重要な事なのだ。


魔法瓶に入っているレモンっぽい香りのするハーブティーを一口飲み込み、再びL96A1のスコープを覗いてターゲット共を見張る。


「ちっ……あと1キロ弱……か…。さみーんだから速く来いよ……」


ターゲット共に悪態をつき手を擦る。


肌寒いを通り越してクソ寒いので、もう少し厚着をしてくれば良かったと今非常に後悔している。


…………若しくは、カイロの一つでも持ってれば良かったんだけどな…。


米軍の知り合いに聞いたところによると、カイロがあればアラスカでも雪合戦が出来る程らしい。


その事を日本の自衛隊から教えてもらったと言っていたが…………流石は日本軍人と言ったとこか。


そんな集中力の無さそうな事を考えていると、突如冷たい雨の匂いのする優しい風の中に嗅ぎ慣れないコーヒーの様な香りが微かに混ざった。


……………コー……ヒー………………?


ふと首だけで振り返ってみると、そこには人影が立っていてじっとこちらを視ていた。


ん……………?


こちらが存在に気付くと、コンクリートの床をゆったりとした足取りで歩き照明の光が当たる所まで進み出た。



―――――文字通り、正体が明らかになる。



光に照らされた人影は、真っ黒な外套に身を包んだ北欧系とおぼしき少女である事が分かる。


………ゲルマン……人………?


顔の作りは驚くほど端整で、絵本の世界から飛び出してきたか様に可憐な少女だ。



……こいつぁ………。



思わず溜め息がこぼれそうになった。


暗い闇夜の中で宝石の碧眼が煌めく。


一陣の夜風に吹かれて、少女の金色の髪がきらびやかな金糸の様に躍った。


その少女から聞こえてきたのは、鈴の音を思わせる声だった。


「………見つけた…………」


「…………あ゛…?」


「―――――っ!!」


「―――――なっ……!?」


そのまま進んだ彼女の姿が夜の闇に隠れた瞬間、それまでの動きからは考えられないスピードで金髪の少女が動いた。


何っ……!?


思った時にはもう遅い。


闇の中で踊る蒼き狩人の双眸は、真っ直ぐ獲物である俺を見据えて迫っていた。


ちっ……くそがっ…!!


振り返るが、反撃には間に合わない。


そして黒い外套を翻した少女は、隠れていたホルスターから漆黒の銃を抜き放つ。


半端な訓練ではスナイパーを襲撃するなんて、プロの殺し屋染みた真似は出来ない。


どうやって俺の居場所見つけやがったんだよこの女……!?


綺麗な半月型を描きながら構えられた拳銃は、眩いノズルフラッシュと共に多数の銃弾を吐き出した。


―――――おいおいおい、今どき強盗でもチャカぶっぱなす時は宣言くらいするぞ!?


心の中で毒づき、俺は命からがら横に転がる。


何度も天地がひっくり返る中で、碧眼の少女は恍惚とした表情で笑った……様に見えた。


ギリギリかわしたと思ったのだが少女の狙いは俺ではなく、後ろに位置するスナイパーライフルだった。


放たれた複数の銃弾達は狙撃銃の可動部や構造上の弱点、心臓部に驚くほど正確に吸い込まれて行く。


それらの弾丸はバリバリと破壊的な音をさせながら、使用不可能、修復不能な損傷を次々作った。


その正確無比な射撃に、俺は戦慄した。


―――――嘘だろっ!?化け物かこいつはっ!?


完全にぶっ壊されたL96A1は銃撃の衝撃でたちまちバランスを崩し、そのまま下へ真っ逆さまに落ちていった。


もうあれは使い物にはなるまい。


落ちた狙撃銃が何かにぶつかったのか、甲高い金属音と破砕音を盛大に夜の東京に響き渡らせた。


それはつまり、この作戦が失敗した事を知らせる音でもあったのだ。


「っ……………てめえ……、一体なにもんだ…………?」


「グスッ……お前に質問の権利は無い……!」


「はぁ……おいおい………。人間には元々神様からもらった権利ってのがあってだな………」


「…………………………」


「…………あ゛ー……。なんか…もういいや……。説得が面倒くせぇ……」


奇襲をしてきた金髪の少女は、理由は分からないが涙声で言い放った。


そんな状況にも関わらず「どんなことを言われても答えない」といった態度だ。



―――――いっそ清々しい程に。



さっきの武器破壊の時の射撃を踏まえて考えるに、この少女の方が俺より数段バトルスキルが高い事が分かった。分かりやす過ぎる程よく分かった。


近接戦闘は向こうの専売特許と見た。恐らくまともにやりあってもまず俺に勝ち目は無いだろう。


身をもって体感した。


圧倒的なる強者。


その代名詞が言い様の無い恐怖となり、俺の身体をこの場に縛り付けてしまう。


「これは…一体誰の差し金なのか………言ってもらおうかしら……?」


「……はっ………。嫌だと言ったら?」


「―――――」


―――――破裂音。


言葉による返答の代わりに返ってきたのは、まさかの銃弾だった。


「あぶっ!?」


弦が切れる様な音をさせながら、銃弾は俺の直ぐ脇の空を横切っていった。


こ、こいつっ……!?何の躊躇も無く撃ちやがったっ!?


「あ…あぶねーじゃねーか!!おかしい!!今のは絶対おかしいって!!あのくらいの反応ならまだまだ全然交渉の余地あったよな!?」


彼女は右手に拳銃を持ったまま、嘲る様に、見下す様に言った。


「ああ……。安心して下さい。私も不本意ですので………指示に従ってくれるのなら殺したりはしませんから」


「可愛い顔して物騒な事言ってんじゃねー!!」


………………………………………………。


若年でありながらこの異常なまでの威圧感。



金色の襲撃者はまるで蒼い炎を纏う様だった。



俺は徐に近付いて来る少女にジリジリと後退りさせられる。


……ワイヤー使って飛び降りて下のバイクで逃げ切るか…?


この建物の手すりにはワイヤーを仕掛けてある。


一塁の望みに賭けて然り気無く腰のベルトに手を伸ばした俺は違和感を感じ、続いて驚きと恐怖に絶句した。


―――――ワイヤーが……切られてるだとっ……!?


獲物が驚愕したのに気が付いたのか、どこか愉快そうに蒼い瞳を細めて彼女は口を開いた。


「フフッ…。もう手遅れですよ?どう足掻いても逃げられませんから。たとえ骨折覚悟で飛び降りたとしても」


―――――っ………!!


少女が指す言葉に背筋が氷った。


…………………………。


まさかとは思いたいが、先ほどあの女が俺の直ぐ横に向けて撃った銃弾が威嚇射撃などではなく、ワイヤーを断ち切る為のものだったとするならば―――――。


俺は生唾を飲んだ。


正確無比。ここに極まれりだ。


しかも、あの言い方だ。


絶対に逃がさない自信がある様に見える。


もしもの時の為に用意した予備のワイヤーも、すぐ下に隠しておいたバイクもある。


そこにたどり着ければ………あるいは……。



―――――だがもしも、彼女が言う言葉がその“バイク”の事だとしたら―――――。



軽く青ざめながらビルの下を見下ろす。


「…く……そ……っ」


そこには先ほど落とされた狙撃銃の銃身が、バイクのガソリンタンクに突き刺さって横たわっていた。


……………………………………。


……負けた…。完全に…。


あまりにも圧倒的だった。


ぐっ……。チェックメイト……か……。


この場での抵抗は無意味だ。確実に仕留められる。


俺の理性も本能も、自分の身体の指先一つ動かそうとはしなかった。


カシャリ、カシャリ。


それは、いつの間にか目の前にまで近付いて来ていた金髪の少女に、俺が呆気なく黒鉄の手錠をかけられた時の音だった。


自らの手にはめられた酷く冷たい無機質な拘束具を見て、改めて敗北を悟った。



―――――いっそ清々しい程に。



いかがでしょうか。


今回もご迷惑かけました………が、またかけます(多大な迷惑)。

何故ならそれは、恐らく次回の方がいじる箇所が多そうだからです(最早大惨事)。

「え…?……また改編回なの……?しかも設定いじる?……みたらしやっぱりアホだったか……」だって?

そんなこと言われたって、私は懲りずに書きますよ。


し…、失敗も経験ですからね(涙)。


なので、出来れば「みたらし?あー。あの改編ばっかの人?」みたいなツッコミいれながら次のも読んでいって下さい。


では、また。


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