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螺旋上の赤  作者: 黒船
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第4章 月の砂漠に遺言を



ガサガサ……。


ガサガサ……。



橋の下に誰が居るのか。

真偽を確かめるべく、河原に降りてきた。



(う~こわぁ……暗いし、なんか凄い音がする……。)


葦がうっそうと生い茂っていて、一寸先も見えない。



ガサガサ……。


ジャブジャブ……。



(うわぁ…くるぶしまで位しかないけど、冷たぁ!

せっかく靴洗ったのになぁ。)


音がする方へ少しずつ、少しずつ近づいていく。



ガサガサ……。


ガサガサ……。



これで危険極まりない浮浪者さんとか、密猟者とか、ヤクザとかだったら命はない。

さらわれて、あれこれされて、川に捨てられ流されて、海とかで無惨な姿で発見されてしまうんだろう。

海ででも見つかればまだ良い方か。

宇宙人とかだったら、月とかに捨てられてNASAの人に発見されるかもしれない。

そんな事になったら『――花奈、レポート本当にありがとう。』と月の砂漠に書き遺そう。


ガサガサッ!!!!


(ひっ!!)


目の前にうすら高い影が立ちはだかった。


「うきゃああああああああああ!!」


人生一番のとんでも声が出た。

この世の終わりかと思った。

とって食われて、宇宙に捨てられ

月の砂漠に遺言を。



(花奈、レポート本当にありがとう……。)


驚いた拍子に足に葦の葉が引っかかり、川に倒れこんでいく。


さぁ、辞世の句を読み上げよう。



長月の

風にそよいだ

葦の葉に

足が絡まり

さよなら現世



ガシッ!


うすら高い怪しい影が右手を掴んで、川に倒れこむ私を引き寄せてくれた。

思わず閉じていた目を開いた。


(――ん?)


「おわぁ!」


今度ははっきりと見える。

超至近距離。


バチン!


「――あ。」


反射的にヤツの顔を叩いてしまった。


バシャバシャ……。


叩いた勢いで距離が離れる。



「あ、あんた……こんなとこで何やってるのよ!」


頬を叩かれたヤツが月明かりに照らされてうつむいているのが分かる。


「――ってぇ。効いたぜ……。

 何やってるってもな……まぁ、探し物だよ。」


こんな時に冗談言うな。

普通ならこんなトコで探すものなんかある訳ない。

――私は探し物、あるけど。


「はぁ……あんたがこんなトコで何探してるのか知らないけど、私も探し物。

 それは大事な大事な探し物があるの。邪魔だけはしないでよね。」


距離を取りながら、橋の真下まで移動していく。

こいつと話してる時間的余裕なんかないし。


ガサガサ……。


想像以上に水が冷たい。

まだ川に入ってから数分と経っていないのに、もう心が挫けそう。


ガサガサ……。


ため息をつきながら葦の葉を掻き分け、カバンから失われたアレックスを探す。


「そっちは探したよ。」


あんたの探し物のことなんて誰も聞いてない。


(馬鹿じゃないの?)


ガサガサ……。


ガサガサ……。


しかし流石に秋、川の水はとても冷たい。

寒い。

足元からの冷たさとそよぐ涼風のせいで、根性なしの私では長く入ってはいられない。


ガサガサ……。


ガサガサ……。


(うぅ、寒い。日が出てるうちに探せればなぁ。)


「だから、そこは探したって。」


「あのね、あんたが何をどこで探したかなんて誰も聞いてないでしょ。」


「俺の探し物も『ALEX』とかかれたキーホルダーだ。」


「はいはいそうですか。

 なんで男がそんなキーホルダーなんか……。」


(――あれ?なんだって?『ALEX』……アレックス?)


「俺の探し物もアレックスだって言ってるんだよ。」


腰をかがめ、葦をよけながらヤツは言った。


「昼間会った時に落としたろ?」


(え……?)


疑問が次々と湧いて頭が混乱してきた。


何で私がキーホルダーを落とした事に気づいたんだろうか?

しかも、私より先にここにいて、ずっと探してた?この冷たい川で。

あいつがそこまでしなきゃいけない理由なんてないはず。


分からない。

考えてもラチが明かない。故に出た言葉は一つ。


「なんで?」


「……本当に、気づいてないのか。

 まさか、覚えていないのか?」


凄く残念そうな表情をした、ヤツの顔が印象的だった。


「まぁ、仕方ないか。あれから大分経つしなぁ……。」


何だというのか。

そんな顔をされると、流石の私も罪悪感ってものが沸いてきてしまう。


「ふぅ、少し休憩しないか?」


ヤツはそんなことを言いながら河原にあがり、少し大きい石の上に座った。

寒さの限界もあって、私も休憩に同意し少し離れた石の上に腰を下ろした。



「ホントに分からない?」


「分かる訳ないでしょ、何もないんだから。

 もったいぶらないでよ。どうせ適当言ってるだけのクセに。」


「小学校、どこだった?」


(は?急に何、小学校?)


「俺は城北小学校。」


私と同じだ。


(ん?待て待て……。

小学校時代の、『神山 有』……『かみやま ゆう』?

何か思い出しそう。)


「思い出したか?」


(今思い出してるところだから待てって。)


「そう、俺たちは昔会ったことがある。」


(だから待ってってば!『そう』って何がよ!?)


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