その85.助けて蔵曾えもん
「どうだった?」
昼休み、俺はいつもの昼食メンバーから外れて図書室にいた。
この時間帯は誰もいなくて助かる、二人きりで話すならば最適な場所だ。
「宮坂からも何も感じられない、彼女はシロ」
「まあ、そうだよな」
「問題はやはり、現実を変化させている人」
蔵曾は図書室の本を一冊取って、ぱらぱらとめくりながら話す。
学校の図書館は何気に彼女の興味を引くものが多いようで、さっきからその行為を繰り返し行っていた。
「心当たりあるって言ってたよな? 見つけられるのか?」
「難しい」
「やっぱり神様的な奴ら?」
「そう」
ですよねー。
非現実な事をやってのけるとなると、そういう奴らしかいない。
そんでもってどうして俺がこんなに困惑するような現実にしてしまったのか、理由があるとすればやはり立ち位置か……?
「何で宮坂さんの原稿、なんだろう……?」
「内容が面白い、とか?」
「そうなのかな?」
まだ内容も全然聞いていないから解らん。
しかも途中で展開をすっ飛ばしちゃったからもはや物語は正しい流れには進んでいない。
「それか、理由は必要なかったのかも」
「必要なかった?」
「貴方の立ち位置が目的、そのためなら利用できるものはなんでもよかったと」
なるほどな。
「気まぐれで、こだわりもなく偶然目に留まり、原稿を持ち去ったとする。あとは現実を変化させてしまえばペースはあっち」
俺は腕を組んでため息をついた。
ああ、そうさ。
確かにペースは相手側だ。
ただただ振り回されているだけ、困ったもんだぜ。
どうしていいのかわかりゃあしない。
進展があるのは物語の展開のみ。
しかも大きく物語の展開は変わってしまった、宮坂さんに次の展開を聞いても無駄だ。
これも敵は想定済みだったのだろうか、だとしたら相当賢い奴だぜ。
こっちが何とかしようとすると、必ず何か一つ手が無くなってしまう。
何とかした結果、そうなるであろう展開が消えて宮坂さん頼りができなくなってしまったのは手痛い。
彼女の予想を聞く限り、人質を取っておびき寄せる――そういう展開になってしまうのも出来れば避けたいものだ。
そうするにはやはり蔵曾が関わるのが一番か?
「何か、考え?」
「あ、いや……相手も中々やるなと思ってさ」
「そう。厄介」
「そいつの名前、聞いていい?」
「相手がそいつとは決まっていない」
「まあ聞くだけだ」
本を戻して、頭を掻くその仕草は言おうか迷っているようだった。
周りに誰もいないのを確認して、
「構造神」
蔵曾は呟く。
「……構造神?」
それ、いつだか聞いたな。
異世界、ああ、異世界で聞いた名前だっ。
「立ち位置について詳しく知ってて、お前と数千年間喧嘩してた奴……?」
「そう」
「もしかして俺はお前らの喧嘩に巻き込まれてたりする?」
「かもしれない、しかし私に手出ししてこないところを見ると、目的は立ち位置の可能性が高い」
一理あるな。
それにしても予想外な名前が出てきたぜ。
明らかに偉そうじゃん? 明らかに強そうじゃん?
俺、どうしたらいい?
「もし襲ってきたら助けて蔵曾えもん」
「それまでに四次元ポ○ット用意する」
それは頼りがいがあるな!
「俺的にさ、も○もボックスが最強だと思うんだ」
「独裁ス○ッチも中々」
「うーん、それも捨てがたいが……とりあえずも○もボックスを頼むよ」
「無理」
ですよねー。
「しかしこれはこれで、インスピレーションが刺激される」
「面白い物語書こうとする前に現状を解決をだな」
「解ってる」
ちゃんと解ってくれてるか心配だ……。
蔵曾はいくつか気に入った本を見つけたようで、机に重ねた。
「しばらくここにいる」
「先生達に見つかるなよ?」
「大丈夫、その時は長波に助けを求める」
長波先生は蔵曾のためならなんでもやりそうだな。
リア充をくれた人は恩人に等しいであろう、あの人にとって。
学校にすんなり入り込めたのも長波先生が手を貸したのかな。
「あ、こちらにいらしたのですか神様っ」
噂をすればなんとやら。
長波先生は満面の笑みでやってきた。
「しばらくすれば生徒がわんさかやってくると思います、隣は管理室となっておりまして、そちらではゆっくり読書できますよ。どうです?」
「行こう」
「本お持ちしますねっ」
貴方は召使か何かか?
「……長波先生」
「どうしたの忍野君」
自分の行動には何の迷いも無く、輝いたその純粋なる瞳。
「いえ、なんでもないです……」
そっとしておくとしよう。
長波先生がやりたいのならば仕方ない。
生徒の前で先生の威厳もクソも無い姿を見せているけど、言わないでおくのが互いの幸せってものよな。




