その84.なん……だと……?
「姉さん、あの女何者だと思う?」
「弟よ、私はおそらくあの女……」
そこで咲は一度言葉を止め、神妙な面持ちで――
「武の達人と思われるわ」
斜め上の回答を出した。
「流石姉さん、そこまで解るなんて!」
それでも凪には姉というものは美しく賢く見えてしまっている。
凪の思考は今、あの眼鏡少女は部の達人だと認識された。
「次はもっと警戒しなくちゃね……」
「そうだね、屋上まで登るのも疲れたし!」
「帰り道だと人ごみが邪魔ね、どうにか人のいない場所に誘導しなくちゃ」
「作戦を考えよう! 姉さんなら素晴らしい作戦が思いつくはずだよ! 今回だって屋上突撃作戦はあの眼鏡女の邪魔があったとはいえ、最高の作戦だったし!」
「ああ、凪、貴方はなんて素晴らしい弟なのっ。姉さん褒められて嬉しいっ」
抱きつく双子。
これほどに仲の良い双子は珍しいかもしれない。
二人は空きビルに身を隠し、今日も作戦を練る。
生活は極めて厳しく、金を持っていないために身体能力を活かした窃盗で食いつないでいた。
「それより、そろそろまた倉庫を狙わなくちゃ」
「そうだねっ、この前盗んだカップラーメンがもうなくなりそう!」
空きビルの室内に広がるは炭や着火材に木材、それにライターなど、室内でキャンプを繰り広げる勢いだった。
住処に火が回らないよう巧みに火を管理しているおかげで空きビルが焼失する事は無いが、窓は開放されているとはいえ室内で炭を起こすなど誰かが見たら驚いて火を消すであろう。
「秘血持ちを狙うのも、中々上手くいかないわね」
「姉さんが作戦を考えればきっと次は上手くいくさ!」
「そうね弟よ! 私の作戦は完璧だもの!」
「嗚呼姉さん!」
「嗚呼弟よ!」
抱きつく双子。
「次はどうするか決まってる?」
沸騰したお湯をカップラーメンに注いで凪は問う。
「そうね……人質でも取って秘血持ちを誘い出しましょう」
「流石姉さん! その作戦は上手くいきそうだ!」
「でしょう?」
胸を張って自信満々で咲は鼻を伸ばした。
調子に乗るも、そのながっ鼻は前回も折られているのを既に忘れている二人であった。
「でも人質を取るとして、誰を?」
「むむっ……そこが悩みものなのよね」
「秘血持ちの友達を狙うのは?」
「弟よ、嗚呼、なんて素晴らしい弟なの? それは名案よ!」
「姉さんの作戦が僕にビビッとこさせたのかも! 素晴らしいのは姉さんのほうだよ!」
最後にまた、抱きつく双子。
静かに作戦は着々と練られていき、同時刻――
「ダトリーやめて」
「へっ。かかってこいよ蔵曾」
様子を見にきた蔵曾。
浩太郎は最新の格闘ゲームをやっており、どういうわけか二人で対戦。
「ベギャ難しい」
「マシンガンブロゥ!」
「避ける」
「アッパッ!」
「痛い」
「いえーい!」
浩太郎は弱者をいじめて恍惚の様子。
「なん……だと……?」
「いつから俺が格ゲー弱いと錯覚していた?」
「馬鹿な……」
――蔵曾のおかげで現状について話し合う事も忘れてゲームで夜更かしする浩太郎であった。




