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その23.お粗末!

「おお……!」

「台所事情は完璧」

 フライパンや包丁がいくつもあり、調理器具は一通り揃っていた。

「中々の揃え具合じゃないか」

 問題はこいつの腕なんだが、こういうのはな……大抵が料理下手っていうパターンなんだぜ蔵曾。

 お前もそのパターンなんじゃないか?

「腕のほうはどうかねぇ?」

「見くびらないで」

「ちなみに何を作ってくれるんだ」

「炒飯で」

 ふむ、無難なとこだな。

「じゃあお言葉に甘えていただいてもいいかな?」


「いいともー」

「テレフォンショッ○ングやめろ」


 まな板と包丁、冷蔵庫から華麗に野菜を取り出して調理に掛かる蔵曾の手つきは慣れたものだった。


「食戟!」

「それもやめろ」


 長ネギを切るその速さはトントンではなくトトトトトン、カタカナで解りやすく表現するならこんな感じ。

 ほんと、トトトトトン。

 フライパンの上で舞い上がらせる米は綺麗な弧を描いて徐々に狐色へと変わり、香ばしい醤油の香りが鼻腔をくすぐらせる。

 気になるのは、

「調理中くらいフード取ったら?」

 エプロンすらせずに猫耳付フードを深々とかぶったままの調理。

 狭まる視界の中、事故を起こされたらたまったもんじゃない。

「いい」

「取ろうよ」

 不安なのでフードを引っ張って後ろにおろした。

「あっ」

 蔵曾は驚いて手を止めた。


 そういえば。


 そういえば、こいつの素顔は今まで一度も見ていなかった。

 顕になったのは金を基調とした赤の混じったショートヘア。

 襟足だけやけに長くて尻尾みたいだ。

 驚愕に満ちた顔を向いてきて、俺と目が合った。

 目の色は赤、肌は白く、外国人のような色合い。

 思わず、

「おおっ?」

 と声を漏らすくらいの美少女で流石神様だぜと心の中で呟いた。

「恥ずかしい」

 すぐにフードを戻して顔を隠してしまった、残念。

「いいじゃん別に隠さなくても」

「嫌」

「神様は堂々としろよ」

「料理してるから、離れて」

「はいはい」


「食戟!」

「だからそれやめろ!」


 とりあえず、蔵曾は素顔を見られるのは嫌らしいな。

 邪魔するのも悪いし、俺は元の座布団に腰を下ろしてぬるくなったお茶をすすった。

 テレビでも見て時間を潰したかったが残念ながらこの部屋にはテレビは無く、あるのは本だけ。

「何か読んでいい?」

「いい」

 漫画でも読むか。

 こいつの集めている単行本はこれまたジャンルが絞られていない。

 今読みたいものはそうだなあ……ファンタジー系。

 いくつかある中、何気なくそれっぽい本を取って読みながら蔵曾の後姿を数分ごとに見ての繰り返し。

 あいつ、味噌汁も作ってやがる。

 料理は得意そうだ。

 まったくそうは見えないがね。

 日本人離れしたあの容姿から巧みに日本料理を作る姿、激しいギャップには萌えを感じるぜ。

「できた」

 十分後、テーブルには炒飯二つに味噌汁二つ。

「いい香りだ」

「隠し味は愛」

「ああそう」

「反応が薄くてショック」

 なんて反応すればいいんだよ。

 食欲をそそる香りに俺は早速スプーンを取って炒飯に。

「待って」

「何だ」

 蔵曾は両手を合わせた。

 その動作……なるほど、そうか。

「「頂きます」」

 こういう事ね。

 意外としっかりしてるなこいつ。

 さあて頂くとしよう、見た目はばっちぐーだが、どうだろうね。

 問題は味だから。

「さて……」

「絶対に美味しい」

 食べてみる。

「……むっ」

「どう?」

 口の中に広がるうまみ、卵がご飯一粒一粒をコーティングしたその食感は最高の一言。

 ネギの後押しも抜群! ゴマの香りが思わずため息を誘う。

 もし演出があるとしたら今頃舞い上がるご飯の中で満面の笑みでも浮かべているだろうよ。

「美味いっ!」

 予想以上だっ。


「お粗末!」

「食戟のソ○マごり押しやめろ!」


 しかし炒飯を食べたくなったら今後はここに来ようかな? それくらいに美味しいぞこれ。

 ぱくぱくと口へ運び、あっという間に完食。

 蔵曾の表情はフードによって伺えないが口元を見る限りは笑顔。

 そのフード取っ払っちまえばいいのに。

「ご馳走様」

「お粗末様でした」

 ささっと皿を片付けてお茶を注いでくれる蔵曾。

 お前いい主婦になれるよ。


 家まで送るとまで言い出した蔵曾には気持ちだけ受け取って俺は一人での帰宅となった。

 何か物語が面白くなるようなアイデアがあったらバンバン教えて欲しいと言ってきたが俺はシナリオを考えるなんて出来ないのでアイデアを出せるとしたら俺を長身イケメンにしてハーレム物語をと答えるね。



 ――ノアと、付き合いたくないの?

 ――さあなっ。

 ――付き合ったら学園ラブコメハーレムものに。



 蔵曾の提案をふと思い出した。

 ……いやいやいやっ。

 悪くはない、悪くはないけど俺がノアと……?

 いやー……。

 駄目だ駄目! そんな展開きっと無いっ。

 今のところこれといった恋愛フラグも立ってない、立つ予定も無さそうだっ。

 俺は何を想像しようとしたのか、一瞬頭の中で浮かび上がったノアの顔を雲散してそそくさと帰路をなぞった。

食戟の蔵曾ーマ。

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