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暗黒騎士の伝説 ――成り上がった僕が、世界を支配するまで――(旧題:僕は主人公になりたい ――最強の歯車・只野義人――)  作者: 下等妙人
【第二部前編:最強VS最狂 ――THE MONSTER PANICK――】
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第六章 エンドロール 3

 化物の群れが一斉に襲い掛かってくる。

 大小問わず、様々な異形共が口を開けて殺到。

 まるで餌に飛びつく動物の如き行動に、義人はなんのリアクションも行わなかった。


 ただ避けるだけ。

 四方八方から食らいつく牙の数々を、ひょいひょいと回避する。


 その一方で、ソフィアは必死の形相で応戦していた。

 身体能力を強化し、素手で怪物達を叩きのめしていく。

 そうした様子を冷めた目で見ながら、義人は思う。


 ――この期に及んでも、武装を出さないんだねぇ。いや、出さないんじゃなくて……出せない、のかなぁ? やっぱり。


 なんにしても、彼女の活躍などどうでもいい。

 もう一方の少女に、義人は目を向けた。


 悲鳴を上げ続ける桃髪の少女、イリア。彼女の異能は未だ不明なままだが、逃げ惑う様子を見るに、戦闘型ではないらしい。

 この状況下で自衛が出来ぬ者にやって来る結末は、たった一つしかなかろう。


「あ………………」


 小さな声。それが、イリアの断末魔だった。

 巨大な四足獣。そのガバリと開かれた口が彼女に迫り――桃髪の少女は、一飲みにされてしまった。


 これで、残った同行者は一人。

 ソフィア・ローズ。


 しかし――


 義人の濁った瞳は、彼女のことなど一ミリも視界に入れていなかった。

 この状況下において、普通ならばこう考えるだろう。

 生き残ったソフィアこそが黒幕である、と。


 だが、義人の意見は違う。


 現状は、彼の望む展開だった。こういう状態になれば、己の論が正しいものであると証明される。という妄想そのものといった状況である。

 だから、彼の目はただ一点に注がれていた。

 イリアを飲み込んだ化物。そいつだけを、義人は見据え、


「さて、くだらない茶番に幕を下ろそうか」


 変身。

 そして、巨大な怪物に掌を向け――血色の奔流を放つ。

 凄まじい熱量たるそれは、瞬く間に巨体を飲み込んだ。

 通常、奔流が過ぎ去った後には何も残らない。何もかもがきれいさっぱり消し飛ぶはずだ。


 されど、実際は別。


 怪物が今しがたまで存在していた場所に、まっ黒な球体が浮いていた。

 三メートル程度のサイズを持つそれには、見覚えがある。

 自分を守護する防護壁。色合い、形状、共に瓜二つ。

 それにより、義人はこの事件の真相を掴む。

 と同時に、漆黒の球体がヒビ割れ、破裂するかのごとく飛散。


 次いで、内部に居た者が、地上へと降り立つ。


「あひゃひゃひゃひゃ。いやはや、これはちょっと想定外だなぁ。まっさか躊躇いなくぶっ放してくるとは思わなかったよ。君はもっと甘ちゃんだと思ってたんだけど。ま、その他については全部予想通りだけどね!」


 天使のような美声。それはイリアが持つ最大の特徴だが――

 その容姿、喋り方、纏う雰囲気、全てが別物であった。


 顔立ちは可愛らしさと無邪気さの塊といったところ。

 年齢はおよそ一六かそこらだろう。大きな黄金色の瞳と真っ白な肌。そして肌と同様に白い髪が特徴的だ。


 長い頭髪はツインテール状となっており、それがことさら幼さを強調している。

 一六〇にすら満たぬであろう小柄な体を包むのは、よれよれの黒シャツと黒ズボンという、外見に反しまくったもの。浮浪者でももう少しマシな格好をしているぞとツッコみたくなるような衣装であった。


 こうして特徴を羅列してみれば、幼さが目立つ美少女を連想することだろう。さりとて、奴に魅力など微塵もない。

 奴は人を惹きつける何か以上に、他者の心を不安にさせる雰囲気を持っている。


 それを増幅させているのが、常に歪んでいる唇だ。

 薄ら笑い。ほんの僅かに口の端を上方へと歪ませるあの笑い。それが、義人には気に食わなかった。


 今まで様々な人間の多種多様な表情を見て来たが、ここまで気味の悪さと不快感を覚えたことはない。


 直感的に理解する。

 奴は、生かしておくことのできぬ者だ、と。


 相手方を睨む義人。そんな態度に、奴は体を左右に揺らしながら、


「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃ。熱烈な視線だねぇ。なになに? 君もしかしてボクに惚れちゃった? うっわーどうしよっかなー。困っちゃうなぁ。君のことは大好きだけどさぁ、ギリギリでトイレットペーパーの方が好きなんだよねぇ。だからさ、全世界のトイレットペーパーを消去してからまたその視線を向けてよ。ま、その時は全世界のゴキブリを消去してもらうことになるんだけどねー。あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!」

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