第四章 大地の声 3
問題文に対し、義人は眉根を寄せる。
「前回と同じで、複雑性がほとんどないな。というか、微妙にこれまでの問題と性質が違うというか……」
「なんにしても、正解を考えよう」
「単純に考えたら、二杯食った、が正解になるんだろうがよー。まぁ、そんなわけがねぇよなー」
「……肯定」
各々、思考を開始する。
――この問題、ひっかけ問題の類だな。二杯食べたっていうのは、多分間違いない。けど、単純に二杯食べたってわけじゃなく、何かこう、捻くれた感じ、というか……。
問題文を何度も何度も反芻する。
そして。
「……そうか、そういうことか」
正解を、閃いた。
「答えは、二人で一〇〇〇円のラーメンを食べたから。太郎と“いう子”の二人がラーメンを食べた。だから、お釣りはもらえなかった」
結果は――
『正解。コングラッチュレーション。おめでとうございます』
安堵の息を吐く少年。直後、代理人の言葉が続けられる。
『正解を確認しましたので、ヒントを提示いたします。“私には重要な任務がある”。以上でございます』
第三のヒントを伝えると、代理人は沈黙した。
与えられたそれについて、皆は何も言わず、
「さ、次行こうぜ次。あの丘の上にある民家な。次はあそこに行ってみようぜ」
ナンシーに全員頷き、動き出す。
そうしながた、義人は思う。
第三のヒントは、黒幕を確定させるような内容ではないか、と。
――私には重要な任務がある……似たようなことを、少し前に言ってたな……。
義人はチラと彼女を見やる。
セシリー・クーパー。彼女はあの南極に似たエリアにて負傷した際、任務が云々と言っていた。とはいえ。
――だからと言って、セシリー=黒幕と決めつけるのは、あまりに早計、か。けれど……容疑者扱いは、させてもらう。
セシリーへの警戒心が芽生えるのを感じる。そんな彼に、イヴが無機質な声を送ってきた。
『あーもう、めんどくさいですねぇ。いっそこいつら全員黒幕ってことにしましょうよ。で、全員ブッ殺してこの怪獣も抹消して帰りましょう。もう飽きました、この環境』
ガン無視を決めこむ義人。しかし――
相棒の言葉に妙な引っ掛かりを感じたので、思考を止めることはしなかった。
――全員……全員……か……。
何かが閃きそうで閃かない。非常にもどかしい気分となりながら、少年は同行者達と共に進み、丘の上にある家屋へと到着。
されど、内部に入る前に、やるべきことがある。
民家近くに、モノリスがあった。
だから、義人はそれに触れる。その矢先。
◆第七問
Q、八の台所に四匹のサンマを置いていたところ、窓からノラ猫が入ってきて、一匹くわえ ていきました。
さて、台所のサンマは今何匹?
提示された問題に対して、一行は何も言うことなく思考する。
――普通に考えれば、三匹ってことになるけど……これはひっかけ問題なわけだし、答えは絶対に違う。
そう考え、頭を捻る。
しかし、何も浮かんでは来ない。答えはずっと三匹のまま。
そうこうしているうちに時間が過ぎ去り――
『タイムアップ。第七問目は不正解となります。よって、リーパー・アドヴェント。本当にご愁傷様です』
結果が、残酷にも宣言された。
それからすぐ、イヴが正解を教えてくる。
『五匹。この問題、答えは五匹です。問題文をよく御覧なさい。くわえていった、とありますが、これ、漢字で書かれてませんよね? 咥える、と書いてあったなら三匹で間違いありませんが、別の漢字ですと、意味合いが真逆となります。加える、というものに置き換えれば、あら不思議、減るどころか増えちゃいました。くわえていったのが猫、というのもこの問題のいやらしいところですねぇ。無意識的に魚が減るものと思い込ませてしまう。こんな問題を作るような人間は、よっぽど性格がねじくれているのでしょうねぇ。いやらしいことこのうえがない』
――君に比べれば全然マシだと思うよ、僕は。




