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暗黒騎士の伝説 ――成り上がった僕が、世界を支配するまで――(旧題:僕は主人公になりたい ――最強の歯車・只野義人――)  作者: 下等妙人
【第二部前編:最強VS最狂 ――THE MONSTER PANICK――】
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第三章 影が行く 7

「こんな……ところで……わたしには……任……が……」


 虚ろな様子で何やらぶつぶつと呟くセシリー。まず、彼女を最初に治癒した。その後、他の者達も全快させ、報告を行う。

 石版を発見し、問題を解いたこと。手に入れたヒントの内容。最後に、レイチェルの死。

 それらを聞き終えると、同行者達は皆一様に顔を俯けた。


「……暑苦しい奴だったがよ、居なくなったら居なくなったで、寂しいもんだな」


 感傷に塗れた、ナンシーの声。他の同行者達はそれに同意するかの如く頷いた。が、義人はやはり、何も思うことができない。


 二人目の死亡者。その事実は、少なからずチームメンバーにショックを与えている。けれども、ずっと落ち込んでいるわけにはいかない。自分達には果たすべき使命があるのだから。


 少しばかりの休憩を取ってから、一行は探索を再開した。

 積もり積もった雪を踏みしめ、別の基地を回る。そうしたことを繰り返したものの、新たな発見は何もなかった。


 ヒント一つと、深まった謎。それを本日の収穫として、一行は二日目を終える。


 時刻は現在、午後一一時三〇分。


 本日寝ずの番を担当するのは、義人、ナンシー、イリアの三名。

 他のメンバーは、義人の異能により雪が排除された地面にて、寝袋に包まれている。


 熱操作によって彼等の周辺は二六度前後に保たれており、光源操作によって淡い光が半径五〇メートル圏内を照らす。


 そうした環境下において、三人は椅子に座り、小声で歓談していた。


 内容はとりとめのないものばかり。日本の文化、義人の活躍など。

 特に、ナンシーの舌は饒舌だった。きっと、喋ることでレイチェルの死による悲しみを抑え込んでいるのだろう。

 そんな彼女には心苦しいが――聞いておかねばならないことがある。


「ねぇ、君達。君達もさ、黒幕は僕なんじゃないかって、そう思ってるのかな?」


 途端、笑い合っていた二人が表情を固まらせた。


「どうやら、図星だったみたいだね。……昨夜、レイチェルとセシリーにも言ったけれど、僕は黒幕なんかじゃない」

「……証拠は、あるのかよ」

「そうだな……君達にも、殺される理由ってやつがあるんだろう? それと僕がなんら関係性がないと証明できたなら、信じる証拠になるんじゃないかな?」


 暗に、過去を話せと命じる義人。それに対し、二人は素直に頷いた。

 そして、まずはナンシーが口を開く。


「アイアンブラッドの任務は、マジで特殊なんだ。お前、あたし達の力や姿を見て、こんなのが特殊部隊かよ、みてぇに思ったろ?」

「まぁ、正直に言わせてもらえば」


 遠慮知らずといった少年の返答に、ナンシーは苦笑する。だが、同時にしてやったりといった様子もあった。


「天下のブラックナイト様も、あたしらを特殊部隊とは見抜けねぇ。だからこそ、仕事が成功しやすいのさ。あたしらは見た目こんなんだし、力だってさほど強くはない。けど……暗殺任務には、最適なんだ。二〇にも満たねぇ、ちょっと可愛らしい女の子って容姿。対人に特化した異能。それだけで、十分優秀な暗殺者になれる」

「……つまり、アイアンブラッドは暗殺集団だと?」

「一概にそうってわけじゃねぇよ。他にも色々やってっからな。ま、これ以上は言えねぇけど。……とにかく、あたしらが請け負う任務の一つは、暗殺なわけだよ。国の内外問わず、当時の政府にとって邪魔になる連中を殺す。そのことについて、あたしはさほど気にしちゃいなかった。思い出すのも嫌なぐれぇに、ひっでぇ生い立ちだったからな。人殺しは悪、だなんて当たり前の倫理観が、今もなお存在しねぇ」


 そこまで言うと、彼女は一拍の間を空け、顔の前で手を組みながら、続きを語る。


「けどな、ターゲットを殺すことにはなんの躊躇いもねぇが……そうでない連中、無関係の人間まで殺したなら、気分も悪くなる。そんな程度には、人間性ってやつが残ってんだよ、あたしには。で、そんなだから……報復を恐れてるのさ。遺族に殺されてやるのが一番の罪滅ぼしだと、そう思っちゃいるんだがな……まだ、命が惜しいんだよ、あたしは」

「……話から察するに、暗殺任務の際、なんらかの事故でターゲット以外の人間を死なせてしまった、と、そういうことかな?」

「あぁ、そうだ。国内での仕事中にな、ちょっとした手違いで、破壊の規模がデカくなっちまって……一人殺すはずが、八人も死んじまった」

「その死んだ人間の身内が僕じゃないか。そんな風に疑ってるんだね、君は」


 首肯する彼女に、義人は嘆息し、


「確かに、僕は親を喪ってる。死に方は両方とも他殺だ。けど、誰が殺したのかはハッキリしてるよ。で、それは君じゃない。ついでに言うと、君達の誰でもないんだ。そもそも、両親が死んだのはもう一四年も前の話。そんな頃、君等はまだ三歳かそこらだろ」


 よって、自分は黒幕などではない。そんな調子で両手を広げて見せる。

 しかし、ナンシーの瞳に宿った猜疑心は消えていない。


「……お前が本当に日本人で、一七歳そこらだったなら、信用できる。けど、そんな情報は、いくらでも偽装できるだろ。こっち来てから、お前のでたらめ振りはこの目で見て来た。前情報にあった通り、まさしくなんでもアリだ。その力を使えば、人種、国籍、年齢、全部操れる。今の姿だって、本当のものかどうかなんざわかんねぇ」


 一応、本物の顔なのだが。

 どうやら、彼女の信用を得るのは無理そうだ。

 そう思ってため息を吐くと、義人はイリアに目を向け、


「で、君の方は? もちろん、話したくなければ別にいいけど」

「えぇっと……話すこと自体は、構わないんですがぁ……そのぉ……引かないでくださいよぉ?」

「内容次第かな。その見た目で実は猟奇殺人鬼ですって言い始めたらさすがに引く」

「そ、そんなめちゃくちゃな話じゃありませぇん! で、でもぉ……あんまり、気分のいい話ではありませんよぉ?」

「……例えば、君が良家に生まれた娘だとしようか。けど、君は妾の子供だったから家に置くことを許されず、スラムに捨てられてしまった。そして金を稼ぐため、君は幼いころから体を売り続けたけれど、それでも下衆な客には慣れず、ある日、これまでで一番の最低な客にとんでもない要求をされ、結果これまでのストレスが爆発。で、客のイチモツを噛み千切ってしまった。みたいな過去があっても、その程度なら僕は引いたりなんか――」

「あ、あのう……ど、どうして、わ、わたしの過去を知ってるんですかぁ……?」

「えっ」

「えっ」


 お互いに呆然としてしまう。

 それからたっぷり一〇秒後。


「……今の、マジなの?」

「は、はい。一言一句、全部バッチリですぅ……」


 イリアの視線に、これ以上なく強い疑いの色が乗っていた。

 そんな態度に対し、イヴが言葉を紡ぐ。


『無理もありませんねぇ。傍から見たらもう自白ですもの。報復しに来たぜヒャッハー、って叫んじゃったようなものですもの。それにしても、あなたの妄想力には驚かされますねぇ。たった数秒程度であんな話を作ってしまうんですから。それともあれですか。実は無意識的に意識していたんですか? この桃髪馬鹿女の爆乳を。だからさっきみたいな話がスッと出てきたってわけですか。そうですよねぇ、こんなにデカい乳を持っている人間が相手なら、妄想もはかどりますよねぇ。あぁ、腹立たしい腹立たしい。なぜ人間のオスは乳なんぞに目が眩むのでしょうか。乳肉なんぞより内面を見るべきでしょう、内面を。女の価値は乳なんかじゃ決まら――』

 ――黙ってろ性悪。


 言ってから、イリアの誤解をなんとか解こうとする。しかし、結局なんの解決もできぬまま、一夜が明けたのだった。




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