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暗黒騎士の伝説 ――成り上がった僕が、世界を支配するまで――(旧題:僕は主人公になりたい ――最強の歯車・只野義人――)  作者: 下等妙人
【第二部前編:最強VS最狂 ――THE MONSTER PANICK――】
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第三章 影が行く 4

「こ、これってぇ……ち、血の臭い、ですよねぇ……?」

「うむ。嗅ぎ慣れた鉄臭さ。これは血液のそれで間違いない」

「……肯定」


 イリアの発言に、各々警戒を露わにしながら頷く。

 そんな彼女等に、義人が提言する。


「言わなくてもわかってると思うけど、全方位に注意して歩こう。それと、できるだけ一カ所に固まって進んだ方がいい。レベッカの時は散らばった状態で進んでたから不意を突かれた。でも、固まっていればそういうことにはならないはずだ」


 反対者は一人も居なかった。よって、少年が先導し、その後ろを五人が密集した状態で進んでいく。


 一階の通路を進み、食堂へ。すると。


「……こいつぁひでぇや。まさにドンパチやった後って感じだな」


 ナンシーの言う通り、室内は惨憺たる有様だった。

 壊れた椅子、机が散乱し、各所に弾痕がある。

 そうした有様に、義人は疑問符を吐いた。


「ちょっと前、君達は人なんか居ないって言ってたよねぇ? この状況からして、僕等よりも先にここへ来てる連中が居るってことになるんだけど、どういうことかなぁ?」

「……不明」


 セシリーが首を横に振る。その他の面々も、当惑した様子で俯くのみ。


 ――芝居か? ……なんにしても、謎が増えたな。怪獣の体表に僕等以外の人間が居た、もしくは今も居るとしたなら……そいつらは何者だ? いつから来てる? 怪獣の出現は二日前の深夜。それ以降、どこぞの国の連中が降りた、なんて情報はなかった。瞬間移動系統の能力は僕しか持ってないから……姿を消す異能でも使って降りたのか?


 考えれば考えるほど、謎が深まっていく。


 ――結論は出そうにないな。まだまだ情報が足りなさすぎる。


 やれやれといった調子で首を振ると、義人は探索を続行した。


 二階へと上がり、回る。その道中、人を発見。ただし――生きては、居なかった。


 死体の状態は、あまりにも酷い。かろうじてヒトとわかる程度の原型しかとどめておらず、人種どころか性別すら不明。

 臓物が散乱し、皮膚が剥がれ、肉が露出したそのおぞましい物体。だが、それを見て精神的ダメージを受けたのはイリアだけだった。


 義人は紛争地帯を日常的に歩き回っているし、マフィア連中が見せしめとして加工した死体だって何度も見た。それに比べれば、こんな程度はまだまだ生温い。


 同行者達にしても、少なからず修羅場をくぐっているらしく、前述の通りイリア以外は落ち着いた様子だった。


「これで確定したね。怪獣の体表には、僕等以外に人間が居る。もしくは居た。とはいえ……」


 死体を見るに、こうなってから結構な時間が経過していることがわかる。おおよそ一週間前後だろうか。


 ――怪獣が出現する前から人が居たとしたなら、この怪獣は……異世界からやって来た生物ってことになるのか?


 死体から得られた情報から察するに、それ以外考えられなかった。


 彼または彼女が生きていたのが一週間前後前としたなら、怪獣がこの世界に現れる前からここに居たということになる。その場合、当然ながらこの世界の人間ではどう足掻いたってここに降り立つことはできない。


 ならばもう、異世界からの来訪者、としか思えない。


 この怪獣は別の世界に居た生物で、この死体をはじめとした、自分達以外の人間は異世界人。そう考えたなら、辻褄が合う。


 とはいえ、辻褄が合うというだけで、それが事実であったなら謎はさらに増加することとなる。


 ――ゴチャゴチャしてきたな……もう何が何やら……。

『いっそ思考を停止したらどうです? あなたのような低能ではキャパオーバーでしょう』


 認めるのは癪だが、それ以外に道はなさそうだ。


 真実などどうでもいい。とにもかくにも、怪獣を殺した際にデメリットが発生するか否かを突き止める。それだけを考えて進もう。


 そう決めて、義人は先導する。

 結果として、管理棟には何もなかった。

 そのため、一階へと戻り、次の棟を決めるべく話し合う。そんな折、ソフィアが意見を出した。


「二組にわかれて調査するっていうのはどうかな? 時間が短縮できると思うんだけど」

「……時間短縮はいいけどさ、安全性はどうなの?」

「問題はないと思うよ。もし危ない状況になったら、すぐに無線で連絡する。君なら一〇秒以内に駆けつけることができるだろ?」


 それに首肯しながら、義人は考えを巡らせた。

 二チームにわかれての探索。これは良い案かもしれない。義人が一人と組み、その他の面々が四人で組む。これならば誰かが犠牲になることはないだろう。


 たった一人なら、守れぬわけがない。もう一つのチームにしても、四人いればまず大丈夫だ。

 そう結論付けたがために、


「……僕は賛成する。皆は?」


 どうやら反対者は皆無であるらしい。

 結果として、義人とレイチェル、他四名の二チームが編成された。

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