第三章 影が行く 3
「このいっくよめの上に在る文章を、五文字、七文字、五文字に区切ってみよう。そうすると……」
とろじょょ、かいもしきせよ、あきのをう
となる。
「……それで、この後どうするんだい?」
「こめん。さっぱりわかんない」
『ド低能。得意顔だけは。いっちょまえ。恥ずかしい。あぁ恥ずかしい。恥ずかしい』
――季語入れろよ、ばーか。全然俳句になってねーんだよ、ばーか。
『は、は、は、は、は、は、は、は』
思い切り嘲笑ってくる相棒。こんな問題も解けないなんて、といった心情が透けて見える。
相棒に苛立ちを感じながらも、義人は思考する。しかし、何も見えてこない。
――いっくよめって、俳句のことじゃなかったのか? それとも、区切った文字を並び替えるとか…………ん? 並び替え?
ここで、義人に電流が走る。
――そう言えば、俳句って特有の並べ方があったな。
脳内にて、言葉の羅列を俳句の並びにする。
その結果、
とかあ
ろいき
じもの
ょしを
ょきう
せ
よ
こうなった。
そして。
――この文章を横読みしてみると……。
結論を、彼は口に出す。
「赤と黄色の文字を消去せよ」
少年の呟きに、同行者達が視線を向けて来る。まるで、光明を見出したかの如く。
しかし。
『タイムオーバー確実、ですねぇ。残念でした』
相棒の言う通りの結末となった。
無情にも時間切れとなる。
義人が正解を導き出したのは、残酷にもそれと全く同じタイミングだった。
ちなみに、正解は秋葉原である。
指示通りに赤と黄が隣に表記された文字を消していき、最後に残った文字を並べていくと、FALLISROSEとなる。
これを意味の通じるように区切ると、FALL IS ROSE。直訳すると秋は薔薇となる。
よって、正解は秋葉原。
しかしながら、今更答えを言ってもしょうがない。そんなことよりも、今は足元への警戒が重要である。
『第三問目、不正解。リーパー・アドヴェント。ご愁傷様です』
宣言と同時に、義人は変身した。
漆黒の鎧となり、迫りくるであろう怪物に備える。
しかし。
「…………来ねぇ、な」
しばしの間が置かれた後、ナンシーがぼそりと呟いた。
そう、彼女の言う通り、いつまで経っても眼下に居る化物は襲ってこない。
「……どうやら、こいつは違うみたいだ。別の場所に、別の何かが配置されたと見た方がよさそうだね」
言いながら、義人はヒトの姿に戻った。それから。
「長居は無用だ。探索を続行しよう」
進行再開。
凍った湖を抜けて、再び銀世界へと足を踏み入れる。
そして、一行は第二の基地を発見した。
外見は前回のそれと全く同じ。されど、義人の第六感は警鐘を鳴らしていた。
――基地内に、何かが居るな……。
『どんな奴か、簡単に予想がつきますねぇ。多分アレですよアレ。まぁ、前回と同様能力や特徴は微妙に違うんでしょうけど』
イヴに首肯しながら、白髪の少年は同行者を引き連れて基地内部、管理棟へと入る。
途端、異臭が嗅覚を刺激した。




