第二章 密林の悪魔 13
瞬間、全員の視線が彼女の指さす先に集中した。
無論、義人もまた舌打ちする相棒を無視して、そこへ目を向ける。
目算して八メートル先。木々の間から見えるその場所に、黒い何かがあった。
「ちょっと見辛いな」
呟く義人に、ソフィアが応答する。
「近くに行ってみようか?」
「そうだね……代理人が最後に言い忘れたことがあるって言ってたの、覚えてる? 実は石版の近くにトラップがある、みたいな情報をあえて言ってないって可能性もある。そういった危険性がないか、まず僕が近寄って確認するよ。だから君達はここで待機しててくれないかな?」
全員が首肯を返す。それを見届けた後、白髪の少年は躊躇うことなく、石版らしきものへと近づく。
結果、トラップの類に引っかかることなく、義人はモノリスの真ん前に辿り着いた。
眼前にあるそれを、彼は睨むように見据える。
「なんとも……まさにモノリスそのもの、って感じだな……」
サイズはおよそ二メートル前後。色は黒一色。厚みはそれほどでもない。
そんなザ・石版、といった物体が、一〇センチ程度浮いた状態で静止している。
随分と奇妙な光景だが、疑問視していても仕方がない。とりあえず、同行者達を呼ぶことにした。
安全の確認を、少々離れた場所に居る彼女等に伝達。それから少しして、全員がやって来た。
「ほへぇー、こいつがモノリスか」
「そのまんまって感じねぇ」
「ぶ、不気味ですぅ……」
「うーむ、正拳突きでブッ壊したくなるようなデザインだなぁ」
「一応言っとくけど、やめてね?」
「……シンプル」
石版を取り囲み、観察する面々。だが、特に何も起きない。
このままでは埒があかぬ。そう判断した義人は、モノリスに近づき、
「皆、ちょっと離れてて。これに触ってみる。何が起こるかさっぱりわからないから、そうだな、最低五メートルは距離を取った方がいい」
その指示に、同行者達は即座に従った。
皆、離れた場所にある木に隠れ、義人とモノリスに注目する。
そして、白髪の少年は全員の顔を見回し、一度頷くと、
「さぁ、どうなるのかな」
ぼそりと声を吐き出しながら、石版に触れた。
途端、モノリスに蒼い幾何学模様が走る。それと同時に、背後にて控えた六名から警戒の気配が放たれた。
されど、義人の心は平静のまま。第六感は危険を伝えてこない。
実際、攻撃的な反応は何もなかった。その代わり。
『石版への接触を確認。問題を提示します』
代理人の声が響き渡り、直後、モノリスの真上に文章が浮かぶ。
その内容は、次の通り。
◆第一問
焼き魚に漬物、 材料 お皿
ご飯にみそ汁、
料理の世界に、 鶏胡生リ 洗いそう
料理おばさんが 肉椒姜コ な皿なん
ご招待します。 ッ と冷たい
今日のご飯は、 タ 水で水温
何でしょうか? 9度沢が
まずは料理を、 有る度に
作りましょう。
そしてそれを、
お皿に盛ります
お皿の余った所
に今日のご飯を
乗せましょう。
Q.今日のご飯は何でしょう?
唐突に現れたそれに、一同は全く同じタイミングで首を傾げた。
「……何これ?」
義人の口から吐き出されたそれに、代行者が応答を寄越してくる。




