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暗黒騎士の伝説 ――成り上がった僕が、世界を支配するまで――(旧題:僕は主人公になりたい ――最強の歯車・只野義人――)  作者: 下等妙人
【第二部前編:最強VS最狂 ――THE MONSTER PANICK――】
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第二章 密林の悪魔 2

 午前七時三〇分。カラーズネスト関東第三支部、代表執務室。

 モニターに映るそれを睨みながら、藤村椿はため息交じりに言葉を紡ぐ。


「ちょっと前に上位が来たかと思えば、今度は正体不明の巨大怪獣、か。この世界は一体いつから特撮ワールドになったのかしら? こいつをなんとかした後は何が来るんでしょうね? ゴジラ? モスラ? キングギドラ? 個人的にはガイガンあたりに来てほしいわねぇ。あのカマキリみたいな腕が気に食わないのよ、昔っから」

「お気持ちは理解できますが、落ち着いてください支部長。こんなもの、貴女のキャリアを思い返せば大したものではないでしょう」

「問題がこの馬鹿みたいなデカブツ“だけ”だったらね。……はぁ。こんなことになるなら、“山田の話”なんかつっぱねときゃ良かったわ」

「例の暴力団との密約、ですか?」

「あんたに話してる時点でもはや密約でもなんでもないけどね。そんなクソ面倒なもん抱えてんのにこれよ。もう嫌になっちゃうわ」


 大きくため息を吐く椿。その視線は変わらずモニターに釘づけとなっている。


 画面の向こう、太平洋、南鳥島付近を絶賛移動中のそいつ。

 サイズは約三五〇〇平方キロメートル。東京二三区をまるまる入れてもお釣りがくるような超ビッグサイズだ。


 外見上、生物というよりも島と表したほうが良い。時折頭部が露出するため生物だと判明したわけだが……それでも、椿はこう言いたかった。


 こんな阿保らしい巨大生物がいてたまるか。


 おそらく、その全貌はカメにそっくりであろう。甲羅の部分にはどうやら複数のエリアが存在するらしい。

 まるで“用意された舞台”といったところだが、もし奴が無機物でしかなく、そこに存在するだけの舞台であったならこれほど危機感は抱かずに済む。


 前述の通り、奴は移動しているのだ。


 行き先はどこか?

 そんなもの決まっている。怪獣がやってくるのはおよそ一〇〇パーセント日本。それも東京だ。


 このまま行くと、奴は二週間後日本列島にぶつかることとなる。

 当然だが、そんなもの許容できるわけもない。

 さりとて、セカンドをフルに運用して木っ端みじんに消してしまおう、というわけにもいかないのだ。

 

 何せ、奴には謎が多すぎる。下手に攻撃したならどんな反応が待っているやらわからない。


「……この怪獣は、ベヒモスではない、とおっしゃっていましたね?」

「えぇ。あたしの睡眠時間奪ってこいつの出現を教えてきた“馬鹿頭領”がそう言ってたわ。なんでも、発生前の電磁場が感知されなかったとか。さらに言うなら、ベヒモスの特徴とは違いすぎる」

「確かに、その通りですね。下位から上位に至るまで様々なベヒモスを見てきましたが、こんな個体はいなかった。ベヒモスはどいつもこいつも金属質の体を持ち、色はもっとも多くて三色。それなのに、奴はそうしたベヒモスの特徴が全て当てはまらない。……一体、奴はなんなのでしょうね?」

「さぁ? そんなもんわかんないし、わかる必要もないわ。何せあたし達みたいな一関東支部のトップがどうこうできる問題じゃないもの。……とはいえ、心配やら不安やらのストレスで胃を痛める羽目にはなるけどね。この一件、間違いなくあの子が駆り出されるだろうし」

「……ブラック、ですか。まぁ、当然でしょう。アレはこういう時のために居るような存在です。目には目を、バケモノにはバケモノを、といったところですか」


 吐き捨てるように言った後、副官、冴子は問いを投げた。


「それで、今後いかなる展開になると思われますか?」

「……そのことについては、お偉いさんに直接聞きましょう」


 返答に、冴子は目を丸くした。


「まさか、いらっしゃるのですか? 総責任者ご本人が?」


 その言葉と同時に、代表執務室のドアが派手に開かれた。

 大きな音を立てて入ってきた彼女は、まるで狙いすましたかのように言って見せる。


「そのまさか、だ。この逢魔京香が来てやったぞ。さぁ、茶でも出すがいい。平民共」


 居丈高にそう述べた女は、まさしくカラーズネストの長であった。


 鮮やかな蒼い柄が刺繍された闇色の着物。腰まで伸びた艶やかな黒髪。切れ長の紅い瞳に、自信を漲らせるかの如く吊り上がった唇。


 女すらも虜にしかねない絶世の美貌に、冴子は顔を赤らめた。が、椿はというと。


「はぁ。あんたマジで変わんないわね。その傲慢ぶりはいつになったらレベルダウンするのかしら」


 面倒くさい奴が来たと言わんばかりに嘆息し、相応の視線を向ける。

 立場上、不遜極まりない態度ではあるが、京香も椿も気にはしない。


 なぜなら、二人は昔なじみの関係なのだから。


「ふふん。貴様もまるで変わりないな。数年ぶりの再会がこんな形というのは少々残念だが……致し方あるまい。来て早々だが、本題に移ろう」


 そう言ってから、彼女は室内中央にあるソファーへと腰を下ろした。

 椿と冴子もまた、彼女の対面にあるソファーに並んで座る。


 そして。

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