第一章 オープニング 2
「ほんっと、あの不良マジで糞だよなー」
「天馬と白柳さんの足引っ張ってばっかでさ、なんの役にも立ちゃしねー。さっさと死ねばいいのに」
「喧嘩強くても、やっぱ実戦じゃ話になんねーわな。狂犬だの鬼神だの呼ばれてっけどさー、とんだ三下だわ。只野雑魚人に改名すればいいのに」
「ははははははははは! やべぇ、そのネーミング超ウケ――」
瞬間、生徒達の顔が凍り付いた。
さもありなん。思い切り侮辱している相手が、すぐ目の前に居るのだから。
義人は一応、恐ろしい不良として名が通っている。顔は知らないという者は結構いたりするが、眼前の連中はバッチリご存じであったらしい。
「え、えっと、その……」
「あ、あの……」
怯えきった顔で、脂汗を流す生徒達。そんな反応に心苦しさを感じたので、とりあえず、彼は場を和ませようと、
「……どうも、只野雑魚人です」
おどけた調子で言って見せ、さらに笑みまで浮かべてやる。
だが、それは完全に逆効果だった。
どうやら、相手方は皆共通の解釈をしたらしい。即ち、“ブチ殺すぞ、てめぇら”と脅していると感じたのだ。
だからか、全員尻餅をつき、土下座を始めた。
そんな様子にますます心を痛める義人。
――僕は別に怒ってなんかいないんだけどな。第三者からしてみれば、役立たずの雑魚って感想が当たり前なわけだし。
濁った瞳に悲哀を宿しながら、彼は生徒達の横を通過した。
で。
『は、は、は、は、は、は。素晴らしいネーミングセンスの持ち主でしたねぇ、あの丸眼鏡。いっそ本当に只野雑魚人に改名してみてはいかがでしょう? ねぇ、雑魚人さん?』
――ははっ、いいねぇ。じゃあ君も揃って改名しようか。鼻糞姫なんかどうだろう? 君にはぴったりな名前なんじゃないかなぁ? この鼻糞姫。
罵り合い (イヴ曰く性交)をしながら、屋上へと向かい、到着。
そして一人寂しく弁当を食おうとする直前。
「おい」
ドアが開き、天馬が入ってくる。
義人はそんな彼を、タイルに座り込みながら見やった。
「……なんの用かなぁ? 人気者がこんなとこ来ちゃダメだろ、クラスの和的に考えて」
半開きの瞳をさらに細くし、消え失せろと言わんばかりの悪態を作って見せる。
だが、栗髪の美少年はそれを無視して隣に立ち、
「お前、嫌じゃねぇのかよ」
「何が? あぁ、君と二人きりっていうこのシチュエーションはたまらなく嫌だねぇ」
「……お前、嘘ついてるだろ。本当はオレ達だけじゃなくて、皆と仲良くなりてぇんじゃねぇのか?」
「……白柳さんから聞いたのかなぁ? それなら、答えはノーだよ。僕は一人で居るのが好きなんだ。一人で相棒と罵り合ってる時間が、僕にとっては唯一幸せな――」
「本当にそうか?」
言葉を被せて来る天馬。その真剣な顔と口調に、白髪の少年は声を詰まらせた。
それが隙となり、ますます追及されることとなる。
「……冷静に考えてみるとな、やっぱおかしいんだよ。あの一件が終わって数日後あたりから、お前の態度が一気に変わった。……なぁ、お前、何がしたいんだよ? オレ達を避けることで、お前は何を得てるんだ?」
その問いに対して、義人は苦悩した。
喋りたい。
そうすることにより、二人とのぎくしゃくした関係を解消したい。
だが、そうすることは幸福に繋がる。
それゆえ。
“いけません。可哀想ですが、彼のことは拒絶しなさい”
自己暗示の声が聞こえてくる。
なれど、今回はおかしな事態が発生した。
“お前が言いたいこと、全部ぶちまけな。それがお前のしたいことだろ? だったら迷わずそうしろ”
別の声が、脳内に響く。
それは不思議と心地のいい音色だった。だからか。
「……君の言う通り、僕は――」
幸せな結末となるであろう選択肢を、選び取る。
白髪の少年は全てを話した。
ゆかりのこと。自分は幸福を掴む権利を失ったこと。
それらを話し終えたと同時に、天馬は大きく息を吐き、
「ばっかじゃねぇの」
心底呆れたといった調子で、言葉を紡ぐ。
それから義人の隣に座り込んで、




