プロローグ二 オレがヒーローを目指す理由(わけ)
“あんな経験”をすれば、誰だって理解する。
この世界にヒーローなんか存在しないんだ、って。
何が正しいのかわからない世の中だけど、オレ達が出した結論は間違いなく真実だ。そうでなければ――
オレ達だけが生き残るなんて結末は、ありえない。
あれからもう一〇年以上過ぎた。でも、オレは昨日のことのように思い出せる。
あの日は幸せな一日だった。
オレの母、あいつの父が再婚して、オレ達が名実共に家族になった日。
さらに、オレ達が“選ばれし者”になった日。
全てがオレ達を祝福していた。
この幸福は永遠に続くものだと、そう思っていた。
それを、“あいつ”が破壊したんだ。
あいつは街を壊し、人を殺し、オレ達から全てを奪っていった。
オレ達も殺される。その直前で“あの人”がオレ達を救ってくれた。
そしてあの人が新しい親になってから、オレ達はこれからの生き方を決めたんだ。
オレが出した答えは、“ヒーローになる”、というもの。
この世界にヒーローはいない。都合のいい時に助けてくれる奴なんかいない。
だったら、オレがそうなってやる。
オレがこの世界のヒーローになって、オレ達みたいな人間がもう二度と生まれないようにしてやる。
そのために、オレは自分の力を使う。自分の命を使う。
親の墓前で誓ったその決意を、オレは今まで精いっぱい守ってきた。
けど――
いつしか、オレは気づいちまった。自分が“ただの人間”でしかないってことに。




