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暗黒騎士の伝説 ――成り上がった僕が、世界を支配するまで――(旧題:僕は主人公になりたい ――最強の歯車・只野義人――)  作者: 下等妙人
【第二部前編:最強VS最狂 ――THE MONSTER PANICK――】
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第六章 エンドロール 8

 歯がゆさと悔しさを感じる義人。その脳内で、かつて師より送られた言葉が再生される。

お前ほど武の神に愛された者を、俺は見たことがない。だがそれでも、いずれお前のもとに難敵が現れることだろう。武の神に愛されているのは、お前だけではないのだ。その時において、もしお前が才覚に胡坐をかいていたなら、望まぬ結果を得ることになるだろう”


 空手の業を与えてくれた男の顔が、頭の中に浮かぶ。


 ――あなたの教えを、僕はずっと守ってきた。だからこそ、僕は勝ち続けることができた。けれど。


 ほんの僅かに、弱音が心を蝕む。その時、別の師が顔を出す。


“キミがなんのために強さを求めるのか。それはあえて聞かないでおくよ。それだけの修練をするんだ。きっと、それなりの理由があるのだろう。けれど義人くん。これだけは言っておくよ。キミがもし正義のために戦うのなら、決して負けてはいけない。なぜならば、正義とは常に勝者のことを指すからだ。だから、己の正義のために戦う時は、絶対に勝ちなさい。何をしてでもいい。戦うなら、必ず勝ちなさい。もし敗北したなら、キミは正義ではなくなる。例えいかに美しい思想のもと戦ったとしても、負けたなら悪だ”


 中国拳法の師に言われたことが、胸に響く。


 ――そうだ。負けちゃ、ダメなんだ。僕は、負けちゃダメだ。だから、今まで手段は選んでこなかった。人道にはずれていようが、卑怯であろうが、何をしてでも勝ってきたんだ。自分が正しいってことを、証明するために……! 


 もしここで敗北を喫したなら、己が悪で、敵方が正義となる。

 そんなもの、認めてなるものか。あのクリス・ミカエルという少女が邪悪であることは、見ただけでわかる。その思想・思考回路を知らずとも、直感で理解できる。

 奴を勝者にしてはならない。正義にしてはならない。


 だから。


 ――イヴ、もう一段階先に行く。力をよこせ。

『……馬鹿なことを言わないでください、と、小一時間説教を食らわせて差し上げたい』

 ――現実見なよ。もっとエネルギーを供給しないと、こいつには勝てない。

『それは事実です。しかし……あなたの体が、持ちません。いいですか義人、今の供給量ですら、常人ならば即座に発狂して暴走するレベルです。それに耐えているだけでも異常だというのに、そこからさらに上となると――』

 ――狂死もありうる、でしょ? その可能性は低いと思うよ。ここ最近、地獄を見続けたからかな。僕は精神的に強くなった。エネルギーの供給限界も、底上げされてるはずだ。実際、初めて第二段階になった頃より大分楽なんだよ。

『……それが真実であったとしても、リスクが高いことはしてほしくありません。とはいえ、このままですと奴に殺される、というのも事実。……逃げるという選択肢は?』

 ――あるわけないだろ、この中途半端サディスト。君は僕が苦しむのを見て楽しみたいんだろ? だったら早く力をよこせ。悶え苦しんで君を悦ばせてあげるから。

『……致し方なし、ですか。こういう時、あなたの人間性が嫌になりますよ、まったく』


 自分の気持ちも考えてほしい。そんな感情が乗った言葉を無視して、再度要求する。


「イヴ……僕に力をッ!」


 直後、さらなる膨大なエネルギーが、漆黒の鎧へと注入された。

 精神的激痛が強まる。その凄まじさに動きが止まり、一方的な攻めを受ける。

 だが、クリスの攻撃は全て無効化された。命中、損傷、瞬間再生。火力が再生を上回らない。それゆえに、もはや奴の攻めはなんの問題にもならない。


 そして――未知の第三段階へ。


 闇色の鎧、そのヘルムから伸びた三本の角がさらに長くなり、他にも細かな角が複数伸びる。

 全身から生えた棘も数を増し、まるで棘の怪物といった姿へとシルエットを変えた。

 続いてエネルギーが染み渡るかの如く、全身に血色のラインが葉脈状に広がる。その様はまるで血管が浮かび上がり、脈打っているかのよう。

 そして最後に、背後から鮮血が噴き出すかの如く、エネルギーが放出される。


 第二段階の時点で、人外じみた形状だった鎧。しかし、今はそれすらも超えていた。

 紅き一対の翼を広げた黒竜。今の義人は、そんな姿だ。


「ぐ、う……ぁあ……ああああああああああああああああああああッッ!」


 人の喉から出たものとは思えぬ咆哮。天空にて轟いたそれを受け、敵方は、


「……おいおい、それはちょっと反則なんじゃないかな?」 


 直後、義人は行動を開始する。

 右手に巨大な黒剣を生成し、握りしめ、推進。

 近寄り、右腕を両断して通過。振り向き、敵へと突き進んで、今度は左腕を斬った。

 次は右脚。その次は左脚。それから数センチ刻みで斬り続ける。


 推進、斬撃、通過、振り向き、また推進。

 それを繰り返した。


 何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も。


 彼が通過する度に、敵の体積が減少していく。削れて削れて削れ続けて、まるでダルマのようになった闇色の道化師。

 激しい精神的苦痛を味わいながらも、義人はハッキリと自己意思を保ち、思考する。


 このまま首だけの状態にして、再生できないよう、防護壁で覆う。それからじっくりと話し合いをしよう。


『面倒くさいですねぇ。ぶっ殺しちゃえばいいのに』


 イヴの言うことはもっともである。こんな者、殺すに限る。

 だが、義人の理想像たる主人公は不殺型。それゆえに殺人はタブーだ。


 とはいえ――殺してはならぬということはつまり、裏を返せば、相手が死ななければ何をしてもいいということだ。

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