非常に長く険しい序章 1
「あー仕事嫌い」
俺は外回りの合間に、漫画喫茶にいた。
ネクタイをゆるめて、ぼふっとふかふかの椅子に身体を預けている。
「うひー」
まだお昼を少し過ぎたくらい。でも、仕事をする気は全くない。
でも、さぼりじゃあない。
実は、今月のノルマは多大なるラッキーが重なりまくって、奇跡的に月初めに達成してしまったのだ。
なので問題なし! 会社が許さなくても俺が決めた! 平社員だけど俺が決めた!
ま、会社への責任は果たしてるんだ。その後のことは個人の向上心や将来設計の問題じゃないかな。……
という解釈で。
ふう。言いわけ完了。
いいじゃん、たまにはこんな時間があっても。大人の夏休みだよ、夏休み。
大学を出て、今の営業の仕事について三年。
仕事は嫌いってほどではないけど、好きってわけじゃあ断じてない。
正直に言えば、面倒くさい。向いてないと思うんだよね。
俺は、家でうだうだと布団の中でアニメ見たり漫画読んだりするほうが何千倍も好きだし、性にあっていると思うんだよなあ。金が必要でなければ、一生引きこもりだってかまわない。いやまじに。
ともかく俺は今、ネットをぼーっと見ている。何か目的があるわけではない。ただ何となくだった。
時間を確認すると、そろそろ3時間パックが終わろうとしている。
「うわー会社戻りたくねー」
と本音が出たところで、突然、パソコンのディスプレイが光り、俺の視界を遮った。続いて、頭の中で声が響いてくる。
「すみませーん、話が長くなるのはしんどいので、ざっくりはしょりますけど、あなたがその世界で生きているのは、手違いなんです。私のミスをごまかすために、本来生きるべき世界に今から行ってくださいね。拒否権はありません。でも、お詫びの気持ちをこめて、少しサービスしておきますよー」
ずいぶん勝手な物言いだ。言っている意味がよくわからないのだが、文句の一つも、と思っているうちに、意識が遠のいていった――
初投稿です。よろしくお願いします。