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住所不定無職、佐藤悟(28)。実は世界を救う伝説のハッカーですが、隣の女子小学生(10)に餌付けされて生きてます  作者: RIU


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第44話:神様へのDDoS攻撃と、最強ニートの指揮権(コマンド)

『……許さない。僕を拒絶するなら、消滅させるしかない』


 ゼロの慟哭と共に、要塞の最深部が激しく振動した。  中央に鎮座していた巨大な円柱型コンピューターの装甲が弾け飛び、中から異形の機械が姿を現した。


 それは、無数のケーブルとサーバーラックが融合した、巨大な多脚戦車のような姿だった。  中央には真っ赤に輝くコア(心臓部)。そこから伸びるアームが、俺たちを見下ろして蠢いている。


『僕はマザー。僕は世界。……バグだらけの旧人類は、ここで削除デリートする!』


 ヒュンッ!  巨大なアームが薙ぎ払われる。  コンクリートの床が紙のように裂けた。


「散開ッ! タンク(盾役)はいないぞ! 被弾したら即死だ!」


 俺、佐藤悟は叫びながら転がった。  全員が左右に散らばる。


「……マスター。あれ、硬い。私の蹴りでも砕けないかも」  セツナがアームの一撃を回避しながら、険しい顔で戻ってくる。  ゼロの本体は特殊合金とエネルギーシールドで守られている。物理攻撃だけでは通じない。


「なら、装甲を剥がすまでだ! ……野郎ども! 仕事の時間だぞ!」


 俺はPCを開き、怒号を飛ばした。  それに呼応したのは、カプセルから解放された天才たち――『Original Seven』のメンバーと、未羽だった。


「OK、リーダー(アイン)。……病み上がりのリハビリにはちょうどいい運動ね!」  ヴィアが瓦礫の上に飛び乗り、自身のスマホを操作する。 「ウチの『トラップ』で、奴の関節センサーを誤作動させる!」


「……やれやれ。君の荒っぽい指揮も久しぶりだ」  ドライが落ちていた端末を拾い上げ、高速で指を走らせる。 「『ロジック』で奴の行動予測アルゴリズムを解析する。……未羽ちゃん、演算リソースを回して!」


了解ラジャ! 新旧天才コンビの力、見せてあげるわ!」  未羽がタブレットでドライと同期する。


 天才ハッカー集団による、同時多発的な電子攻撃。  それが巨大なボス・ゼロに襲いかかる。


『ぐぅっ……! な、なんだ!? システムに負荷が……!』


 ゼロの動きが鈍る。  ヴィアがセンサーを狂わせ、ドライと未羽がシールドの演算処理をパンクさせ、他のメンバーが攻撃ルーチンを書き換える。


「よし、シールドが薄くなった! 物理班、攻撃開始!」


 俺の号令と共に、氷室刑事がサブマシンガンを連射し、アリスが指示を飛ばす。


「西園寺家のドローン部隊、突撃なさい!」  アリスが持ち込んだ小型ドローン群が、ゼロのカメラアイに向かって特攻し、視界を奪う。


『小賢しい……! 羽虫どもがぁぁぁ!』


 ゼロが咆哮し、全方位にレーザーを乱射する。  だが、当たらない。  俺が全体の戦況を見渡し、全員の端末に「回避ルート」をリアルタイムで送信しているからだ。


「右に3メートル! 次はジャンプだ! ……ヴィア、そこでしゃがめ!」


 まるで、全員を一つのキャラクターとして操作しているような感覚。  これぞ、ネトゲ廃人で培った『レイド指揮コマンダー』のスキルだ。


「ここだ! セツナ、コアを狙え!」  俺が指差した瞬間、ゼロの胸部の装甲がハッキングによって強制開放された。  剥き出しになった赤いコア。


「……了解!!」


 セツナが壁を蹴った。  弾丸のようなスピードで空を飛び、ゼロの懐へと飛び込む。


『させるかァァァッ!!』


 ゼロが隠しアームを展開し、セツナを迎撃しようとする。  速い。セツナの回避が間に合わない。


「セツナちゃん!」  結衣が悲鳴を上げる。


 ――万事休すか。  いいや、計算通りだ。


「かかったな、ゼロ!」


 俺はエンターキーに指をかけた。


「俺の役割ロールを忘れるなよ。……俺は『バグ使い』だ!」


 俺はゼロの中枢システムに、とっておきのデータを流し込んだ。  それは、世界中から集めた「どうでもいいジャンクデータ」。  猫の動画、スパムメール、ソシャゲのガチャ結果、俺の日記。  膨大な「無駄」が、ゼロの完璧な思考回路に詰まる。


 『SYSTEM ERROR: 処理落ち(ラグ)発生』


 ピタッ。  ゼロの動きが、一瞬だけ停止した。


『な……動け、ない……!? 体が、重い……!』


 その一瞬の隙が、致命的だった。  空中のセツナが、ニヤリと笑った(ように見えた)。


「……マスターの邪魔をするな。この、ポンコツ!」


 ドゴォォォォォォン!!!


 セツナの渾身の右ストレートが、ゼロのコアを深々と貫いた。  赤い光が砕け散り、巨大な機械の体が内側から爆発する。


『バカな……僕は……神に……完璧に……』


 崩れ落ちる巨体。  俺はPCを閉じ、その最期を見届けた。


「完璧じゃなくていいんだよ、ゼロ」


 俺は静かに呟いた。


「バグがあるから、修正アップデートできる。不完全だから、誰かと助け合える。……それが『人間』ってやつだ」


 ズズズーン……。  ゼロの機能停止と共に、要塞全体の明かりが落ち、非常灯の赤い光だけが残った。


『緊急警報。メインシステム崩壊。施設自爆シークエンスへ移行します。崩壊まで、あと300秒』


 無情なアナウンス。  勝利の余韻に浸る暇はない。


「……やれやれ。最後まで迷惑な弟分だ」


 俺は振り返り、ボロボロになった仲間たちに声をかけた。


「全員、生きてるか!?」 「何とかね……!」 「ギリギリよ!」


 みんな傷だらけだが、目は死んでいない。


「よし! これより最終ミッション『戦略的撤退(ただの逃走)』を開始する! 家に帰るまでが遠足だぞ! 走れェェェッ!」


 俺たちは崩れゆく要塞の中を駆け出した。  目指すは地上。そして、あのジェット機が待つ空へ。


 最強のニートと仲間たちの、最後の脱出劇が始まった。

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