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住所不定無職、佐藤悟(28)。実は世界を救う伝説のハッカーですが、隣の女子小学生(10)に餌付けされて生きてます  作者: RIU


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第43話:完璧な楽園の崩壊と、バグだらけの七人(オリジナル・セブン)

そこは、光のない深海のような場所だった。  俺、佐藤悟の意識データは、ゼロの精神世界を漂っていた。


「……寒いな。暖房費くらいケチるなよ、ゼロ」


 俺は軽口を叩きながら、周囲を見渡した。  闇の中に、五つの光のまゆが浮いている。  あの中に、ヴィアたちが囚われているんだ。


 俺は一番手前の繭に手を伸ばした。  中には、あのJKハンター・ヴィアがいた。彼女は膝を抱え、無数の「いいね!」マークと称賛のコメントに埋もれて微睡んでいた。


『すごいねヴィア』『君は世界一だ』『もっと見ていたい』


 甘い言葉の羅列。承認欲求が満たされる、終わらない夢。


「……くだらねぇ」


 俺は仮想キーボードを出現させ、その繭に一撃を叩き込んだ。  使うのはウイルスじゃない。俺のPCに入っていた『クソリプ(批判コメント)自動生成ツール』だ。


 バリンッ!  繭にヒビが入り、甘いコメントの中に辛辣な言葉が混ざり始める。  『配信つまんね』『やらせ乙』『画質悪いぞ』。


「……え? な、なに!?」  ヴィアが飛び起きた。 「誰よアンチコメ書いた奴! ……って、アイン!?」


「よう、お目覚めか。そんな偽物の賞賛で満足か? お前の配信、リアルのほうがもっとスリリングで面白かったぞ」


 俺はニヤリと笑った。ヴィアは呆気にとられた後、フフッと笑い出した。  「……最悪。せっかくいい夢見てたのに。……アンタってホント、デリカシーないわね」


 彼女の体が光となり、束縛から解放される。


 次は、No.03・ドライだ。  彼は「絶対に解けない数式」に囲まれ、恍惚とした表情で計算を続けていた。完璧な論理の世界。


「おい、ロジック野郎。そんな計算して何になる」 「邪魔するな! あと少しで『真理』が見えるんだ!」 「真理? バカ言え。……ほらよ、未羽が作った『答えのないパズル』だ」


 俺がデータを投げ込むと、ドライの数式が矛盾を起こし、ガラガラと崩れ去った。  論理崩壊パラドックス


「ああっ!? 僕の完璧な世界が! ……くそっ、これじゃ計算が合わない! イライラする!」 「そうだ。そのイライラこそが『生きてる』ってことだ。戻ってこい、負け犬」 「……誰が負け犬だ!」


 ドライが怒りの形相で鎖を引きちぎる。感情が戻った証拠だ。


 こうして俺は、次々と仲間たちの夢を壊して回った。  恐怖のない世界。痛みのない世界。孤独のない世界。  そんな「完璧な世界」に、泥臭いノイズを混ぜ込んでいく。


『……やめろ、アイン。やめてくれ』


 虚空からゼロの悲鳴が響く。


『なぜ壊すんだ。彼らは幸せだったのに。苦しみのない世界こそが、僕たちの求めた理想郷ユートピアじゃないか!』


「いいや、違うな」


 俺は五人の光を背に、闇に向かって叫んだ。


「苦しみがない世界なんて、バグのないクソゲーと一緒だ。攻略しがいがねぇんだよ!」


 俺の言葉に呼応するように、解放された五人の意識データが俺の元へ集まってくる。  ヴィア、ドライ、そして他の三人。  かつて研究所で競い合った、最強の天才児たち。


「みんな、聞こえるか! 俺たちは生体部品じゃない! プレイヤーだ!」


 俺は右手を高々と上げた。


「Original Seven、再結成だ! ただし、リーダーはマザーじゃない。……この俺、佐藤悟だ!」


 『Access Granted(アクセス承認)』


 その瞬間、電脳空間が眩い光に包まれた。  五人の演算能力が、ゼロの支配を離れ、俺の制御下に同期リンクする。


 現実世界。  氷の要塞、最深部。


 ズズズズズ……!!  巨大なスーパーコンピューターが悲鳴のような音を立て、赤い警告灯が全て青色(正常)へと変わっていく。


「……なっ!?」  モニターの中のゼロが驚愕に目を見開く。


『バカな……マザーの制御権が奪われていく!? 演算速度が追いつかない!?』


 カプセルの中で眠っていた五人が、カッ! と同時に目を見開いた。  ガラスが内側から砕け散り、冷却液と共に彼らが床に降り立つ。


「ぷはっ! ……っあー、よく寝た! 目覚め最悪!」  ヴィアが濡れた髪をかき上げる。


「……僕の計算を邪魔した罪は重いよ、アイン。あとで請求書を送るからな」  ドライが不敵に笑いながらメガネ(ないけど仕草をする)を直す。


 そして、現実世界の俺も、ヘッドセットを外して立ち上がった。


「お兄ちゃん!」  結衣が駆け寄ってくる。俺は彼女の頭をポンと撫でた。


「ただいま、結衣。……約束通り、全員連れ戻したぞ」


 俺はゼロを見上げた。  形勢逆転だ。  ここには今、覚醒した「Original Seven」の六人と、現代の天才・未羽、そして最強の防衛戦力であるセツナたちが揃っている。


「さあ、ゼロ。……ゲームセットだ。その歪んだ理想ごと、シャットダウンしてやる」


 俺たち全員が、中央のメインコンピューターに向かって構えた。  人類最強の頭脳集団VS暴走した神。  最後の総力戦が始まる。

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