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住所不定無職、佐藤悟(28)。実は世界を救う伝説のハッカーですが、隣の女子小学生(10)に餌付けされて生きてます  作者: RIU


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第39話:氷点下の死地と、西園寺ブランドの極暖装備

ザザァァァーッ……!  漆黒のビジネスジェットが、凍結した海の上に作られた仮設滑走路にタッチダウンした。  逆噴射の轟音が、静寂な白銀の世界を切り裂く。


「到着よ! 外気温マイナス40度、体感温度はそれ以下。……地獄へようこそ!」


 機内アナウンスと共に、タラップが降りる。  パイロットのリオが、コックピットからサムズアップした。


「アタシはここで待機できないわ。エンジンを止めると凍りつくし、何より敵の的になる。……迎えに来るまで、死ぬんじゃないわよ!」 「ああ。必ず戻ってくる! ……いいパイロットだったぜ!」


 俺、佐藤悟は強がって言い残し、機外へと飛び出した。  その瞬間。


「痛っ……!?」


 冷たい、ではない。痛い。  空気を吸い込んだ瞬間、肺が内側から凍りつくような激痛が走った。  目を開けているだけで眼球が凍りそうだ。


「ううぅ、寒いよぉぉ……!」  結衣がガタガタと震えながら降りてくる。  未羽とアリスも顔色が悪い。  セツナだけは「……涼しい」と平然としている。こいつの代謝どうなってるんだ。


 ゴォォォォ……!  俺たちを降ろすと、ジェット機はすぐに再加速し、灰色の空へと消えていった。  取り残されたのは、見渡す限りの氷と雪の世界。


「……さて、ここからが本番よ」


 アリスが震える手で、足元に置いた銀色のケースを開けた。


「西園寺グループが開発した、対極地用ナノファイバー・スーツよ。……さっさと着替えなさい。死ぬわよ」


 俺たちはその場で防寒具を装着した。  見た目は薄手のスキースーツだが、着用した瞬間にポカポカとした暖かさが全身を包んだ。


「すげぇ……。コタツを着てるみたいだ」 「一着五千万円よ。汚したらローンで払ってもらうから」 「一生ニートには払えんわ!」


 装備を整えた俺たちは、未羽のタブレットが示す座標へ向かって歩き出した。  猛吹雪で視界は最悪だ。  だが、セツナが先頭に立ち、氷の裂け目や薄い場所を避けて先導してくれる。


「……マスター。あそこ」


 三十分ほど歩いた先。  巨大な氷山の麓に、不自然に隆起した氷のドームがあった。  雪に覆われているが、一部が金属的な光沢を放っている。


「あれが……ゼロの要塞メインサーバーか」


 俺は息を呑んだ。  かつての仲間が、世界を支配するために作り上げた城。  その入り口である巨大なゲートの前には、何体もの「番犬」が待ち構えていた。


 白い装甲に覆われた、四足歩行の機械獣。  背中にはガトリング砲を搭載し、赤いセンサーアイが俺たちを捉えて光る。


「迎撃システム……! やっぱり無人化されてる!」  未羽が叫ぶ。


 ガガガガガッ!  警告もなく、機械獣たちが発砲を開始した。  氷の大地が弾丸で弾け飛ぶ。


「うわぁぁぁ! 隠れろ!」


 俺たちは氷塊の陰に滑り込んだ。  敵は五体。連携して回り込んでくる。


「……私がやる」  セツナがスーツのフードを脱ぎ捨て、飛び出そうとする。 「待てセツナ! 相手は金属の塊だ! 生身で殴り合ったらお前の骨が砕ける!」


 俺はPCを取り出し、極寒の中でキーボードを展開した。  手がかじかんで動かない? 関係ない。俺の指は熱くなっている。


「未羽、敵の通信プロトコルを解析しろ! 奴らの連携リンクを断つ!」 「OK! ……リンクコード特定! サトル、ポートを開いたわ!」


 ナイスだ相棒。  俺は開かれたバックドアから、敵の制御系に侵入した。  単純なAIだ。ゼロ本体が操っているわけじゃない。これなら――!


「同士討ち(フレンドリーファイア)モード、起動!」


 ッターン!  俺がコマンドを打ち込んだ瞬間。  右端の機械獣が突然旋回し、隣の仲間に向かってガトリングを乱射した。


 ズダダダダッ! 「PiGyaaaa!?」


 不意打ちを食らった二体が火花を散らして沈黙する。  残りの三体が混乱して動きを止めた。


「今だセツナ! 関節部を狙え!」 「……了解!」


 セツナが弾丸のように飛び出した。  彼女は凍った地面を滑るように接近し、機械獣の脚部関節に強烈なローキックを叩き込んだ。


 バキィッ!  強化プラスチックと合金が砕ける音。  バランスを崩した機械獣の頭部に、かかと落としが炸裂する。


 ドゴォォォン!!  わずか十秒で、全ての番犬がスクラップと化した。


「……掃除完了」  セツナが息も切らさずに戻ってくる。  俺はPCを閉じ、立ち上がった。


「よし。入り口は確保した」


 俺たちは巨大なゲートの前に立った。  俺が手をかざすと、重々しい駆動音と共に扉が開いた。


 プシューッ……。  中から漏れ出してきたのは、暖かい空気と、機械油の匂い。  そして、どこか懐かしい、消毒液の香り。


「……行くぞ」


 俺たちは暗闇の中へと足を踏み入れた。  背後でゲートが閉まり、ロックされる音が響く。  もう後戻りはできない。


 長い廊下の先。  スピーカーから、あの声が響いた。


『ようこそ、アイン。そして可愛いお客様たち。……パーティーの準備はできているよ』


 ゼロ。  俺たちの兄弟。そして世界の敵。  最後の戦いが、今始まる。

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