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住所不定無職、佐藤悟(28)。実は世界を救う伝説のハッカーですが、隣の女子小学生(10)に餌付けされて生きてます  作者: RIU


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第33話:道の駅バトルロイヤル! 新鮮野菜と殺意をカゴに入れろ

逃亡生活二日目。  北関東の山間部を走るキャンピングカーの中に、切実な声が響いた。


「……お兄ちゃん。限界だよ」  結衣が冷蔵庫を開けっ放しにして、うなだれている。


「お米はあるけど……おかずがないよ。アリスちゃんが持ってきたキャビアとフォアグラの缶詰じゃ、ご飯が進まないよぉ……」 「贅沢な悩みだな! だが、確かにビタミン不足は否めない」


 俺、佐藤悟も同意した。  人間、高級食材だけでは生きられない。シャキシャキのレタスや、瑞々しいトマト、そして何より「豚コマ切れ肉」が必要なのだ。


「佐藤。あそこに『道の駅』があるわ」  助手席のアリスが前方を指差す。  看板には『道の駅・しもつけ ~採れたて野菜と足湯の里~』の文字。


「……リスクはある。だが、背に腹は代えられん」  俺は決断した。


「作戦名は『30分クッキング・ミッション』。手分けして食材を確保し、即座に撤収する!」


 ***


 道の駅は、平日にも関わらず観光客で賑わっていた。  俺たちは目立たないよう、変装して車を降りた。


 俺はマスクにサングラス、深めの帽子(逆に不審者)。  アリスと結衣は麦わら帽子にワンピース(観光客風)。  未羽はパーカーのフードを目深に。  セツナは……目立つ銀髪を隠すため、売店で買った『ご当地キャラのキャップ』を被せた。


「マスター。……ここ、いい匂い。食べ物がいっぱい」  セツナが鼻をヒクヒクさせている。  直売所には、泥付きのネギや大根が山積みにされていた。


「よし、班分けだ。結衣とセツナは野菜と肉。アリスと未羽は飲み物と日用品。俺は……周囲を警戒しつつ、カップ麺を確保する」 「お兄ちゃん、自分の好物を優先しないでね!」


 少女たちが人混みに散っていく。  俺もカートを押して乾麺コーナーへ向かった。  ここまでは順調だ。田舎ののんびりした空気が、俺の警戒心を少しだけ緩める。


 だが、レジに並ぼうとした時だった。


 ピロリン♪  ピロリン♪


 周囲にいた数人の客のスマホが、一斉に鳴った。  緊急地震速報ではない。もっと不穏な通知音だ。


「……あ? なんだこれ。『近くにSランク賞金首が出現』?」 「マジかよ、100億ドル!? この道の駅に?」 「特徴は……ジャージの男と、四人のガキ……」


 やんちゃそうな金髪の若者グループ(地元のヤンキー風)が、スマホと俺を交互に見比べる。  そして、ニヤリと笑った。


「……ビンゴじゃん」


 一瞬で、場の空気が凍りついた。  彼らだけじゃない。  野菜を選んでいた主婦風の女が、カバンからスタンガンを取り出す。  ベンチで休憩していたサラリーマン風の男が、特殊警棒を伸ばす。


 全員、ハンターかよ!  100億ドルの力は、一般市民すら修羅に変えるのか。


「見つけたぞォォォ! 1兆円ンンン!」


 ヤンキーが叫び、俺に掴みかかってくる。


「うわっ、やめろ! 俺はただのカップ麺愛好家だ!」  俺はカートを押し付けて逃げ出した。


「お兄ちゃん!」  結衣の悲鳴。  見ると、野菜コーナーでもセツナたちが囲まれている。


「……マスターの敵。排除する」  セツナが殺気を放ち、大根(極太)を構えた。


「待てセツナ! 一般人を殺すな! 峰打ち(?)だ!」 「……了解」


 ドゴッ!  セツナが大根をフルスイングし、襲いかかってきた男を吹き飛ばした。  大根が折れた。  ……あの大根、今夜のおかずだったのに。


「こっちよ! 走って!」  アリスが未羽の手を引き、出口へ向かう。  だが、自動ドアの前に立ちふさがる影があった。


 全身黒ずくめの男。手にはクロスボウ(洋弓銃)。  こいつは素人じゃない。プロだ。


「逃がさんよ。……死ね」


 ヒュンッ!  矢が放たれた。  狙いは俺の足。


「うおっ!?」  俺は無様に転んで回避した。矢が床のタイルを砕く。


「くそっ、囲まれた!」  店内は大パニックだ。観光客の悲鳴と、ハンターたちの怒号が飛び交う。  このままじゃ袋叩きだ。


 その時。  俺のポケットの中で、スマホが震えた。未羽からの通信だ。


『サトル! 道の駅のシステム、ハックしたわ! 3、2、1……今!』


 バチッ!  店内の照明が一斉に消えた。


『本日の特売タイムサービス! 全品99%オフ! 早い者勝ちでーす!』


 館内放送が大音量で嘘のアナウンスを流し始めた。  さらに、スプリンクラーが誤作動を起こし、水が降り注ぐ。


「な、なんだ!?」 「99%オフ!? いや、水だ!」 「前が見えねぇ!」


 ハンターたちが混乱する。  その隙に、暗視モードの目を持つセツナが俺の手を引いた。


「マスター、こっち」 「でかした未羽! 全員、車へ急げ!」


 俺たちはカート(カップ麺満載)を押しながら、水浸しの店内を駆け抜けた。  駐車場には、エンジンをかけたキャンピングカーが待機している。


「乗って! 早く!」  氷室刑事が叫ぶ。  俺たちが飛び乗るのと同時に、ヤンキーたちが追いかけてきた。  軽トラや改造バイクに乗り込み、エンジンをふかす。


「逃がすかオラァァ!」


 カーチェイスの開始だ。  だが、相手が悪かった。


「……公道で暴走行為とは。交通課(元公安)として見過ごせませんね」


 氷室刑事がハンドルを切りながら、不敵に笑う。  彼女はダッシュボードのスイッチを押した。


 ガシャッ。  キャンピングカーの後部バンパーが開き、そこから大量の『マキビシ(パンク誘発剤)』がばら撒かれた。  公安の特殊車両装備だ。


 パン! パン! キキキーッ!  追っ手のバイクや車が次々とパンクし、スピンしていく。


「ざまあみろ! 交通ルールを守らないからだ!」  俺は窓から身を乗り出して叫んだ。


 ***


 一時間後。  俺たちは安全な山道で車を止め、遅い昼食をとっていた。


 戦利品は、折れた大根、少し潰れたトマト、そして大量のカップ麺。


「……はぁ。買い物ひとつで命がけね」  アリスが濡れた髪をタオルで拭きながらため息をつく。


「でも、お野菜ゲットできてよかったぁ。今夜は豚汁だよ!」  結衣は嬉しそうに折れた大根を洗っている。逞しい。


 俺はPCを開き、今の戦闘データを分析していた。


「……一般人の情報網、侮れないな。あの『賞金首アプリ』、誰が作ったんだ?」 「ボクが解析する。……でも、これじゃあ街中には入れないよ。顔認証システムと連動してるみたいだし」


 未羽が深刻な顔をする。  コンビニも、スーパーも、ガソリンスタンドも。  カメラがある場所はすべて「敵地」だ。


「……サバイバル生活、か」  俺はカップ麺をすすった。  味がしない。1兆円の重みが、胃にずっしりときた。


 だが、セツナだけは平気な顔で、生の大根を齧っていた。 「……マスター。敵が来たら、また殴ればいい。問題ない」


 その野生のポジティブさに、俺は少しだけ救われた気がした。


「そうだな。……次は、もっと上手く逃げてやるさ」


 俺たちの逃避行は、まだ始まったばかりだ。  次の目的地は、かつて俺が所属していた研究所の跡地があるという、東北の山奥。  そこに、全ての元凶『Original Seven』のヒントがあるはずだ。

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