第壱話 顛落
1人の少女が昔馴染みな風景の中、走っている。
それはランニングとか、鬼ごっこだとか。
そういうトレーニングだったり遊びだったりという気の抜けたような雰囲気はまるで感じられない。
完全な『本気』だった。
「っ、、、はぁ、はぁはぁはぁ…!」
息が荒い。
肺がはち切れそうなくらいに辛い。
体の四肢が四方八方に飛んでいってしまいそう
でも、逃げなければ
そこで私の思考はピタリ止まった。
…死んだ方がいいのかな
そう思ってしまった
なぜなら、私が逃げてきた道中にあった民家…その全てが
破壊の限りを尽くされたかのように…今となってはそこに家があったのかさえ疑わしいほどに…、瓦礫へと変貌していたから。
どうしよう
そう思ったら私の足は急速に減速し始めた
まるで自分の死を受け入れたとでもいうように
いやだいやだいやだ…まだ死にたくない
死の音は既にほぼ後ろにいて。
きっと振り返ったらあの奇妙な形の南蛮銃らしきものが目に入るのだろう。
絶対嫌だ…!
そう思いながら私の足は減速をやめない
減速をやめずに…最後まで、、、止まった。
あ、と思った。
それは遅すぎた独白だったのかもしれない。
「いや、だ、、、」
不意に私を衝撃が襲った
どん、と後ろから突かれたような、そんな鈍い感覚。
でも不思議と何も感じなくて
自分が死んだことを自覚する前に私の意識は闇に落ちた
神様、いるなら、私の願いを…聞いて
できれば、天国に行きたい
こんなに今世で苦しんで…死ぬ間際まで頑張ったんです…
暗い世界にそんな想いだけを残して。
いや、私の意識が暗転して、暗い世界にいた。
私の前には一つの大きな手があって。
私を明るい方へと連れて行ってくれた
あぁ、神様。
ありがとうございます
でも、と思った。
いるならこんな世界作らないでくれと。
親を、姉を兄を、殺さないでほしかったと。
そんな心でいっぱいになった
しかし、
「…え?」
「ゆら…ごめんね、お疲れ様」
そうやって、姉に抱擁された瞬間。
涙で何も考えられなくなった。
嬉しかった
よかった…
会えた
「お姉ちゃんッッッ」
「ゆらは頑張った。ごめんな、先に逝くことになって」
兄の手が、姉と抱き合う私の頭に優しく触れた
兄の優しい声がとても懐かしかった
いつもの兄の声だ…
安心した。本当に安心した。
気付けば私を連れてきた大きな手はいなくなっていた。
きっと、神様が天国に案内するために用意した牛車のような役割のものだったのだろう。
「ゆら」
お母さんと、お父さんの声…だ。
そう、この世界は。
化け物と人間の『過去』を賭けた
世界全部を巻き込んだ大きな、
_________ギャンブルである




