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少女たちと博士

翌朝。


寝相の悪いあいすとこるねが折り重なるように同じベットに寝ている。


一階のダイニングから声が聞こえる。


ダイニングでは久しぶりに少女たちの家を訪れたえなぴ博士がのあに新しいバズーカをプレゼントしていた。


「ほれほれ、えなぴ博士特製超最新バズーカじゃ、ほいな。」

「ヤッタァ!最新型!今度はどんな機能がついてるの?」

「色んな弾が撃てる優れものじゃ。スイッチ一つで切り替え可能なのじゃ。」

「早く撃ちたーい!ズドーン!ズドーン!」

のあが博士から受け取ったバズーカをはしゃぎながら撃つ真似をしていた。


もじゃもじゃの白髪に白い口髭、いつもの白衣を着た博士は視線をのどかに移すと穏やかに尋ねた。

「もう大丈夫なんか?」


「うん。大丈夫です。」

のどかはわざと背筋を伸ばしたようにしながら元気に答えた。


「無理しちゃいけんよ。」

博士は穏やかな目で静かに頷いた。


「博士、こないだ会った黒目のデータって。」

りりがうさが淹れたお茶を博士に差出しながら聞いた。


「データの収集はできとるよ。こっちでも分析はしとった。ある程度わかったことがあるから来たんじゃ。それでな、小学校で戦ってた野球帽の坊やじゃがの。」


「あ、おはよー。」

丁度、起きてきたあいすとこるねにうさが声をかける。


「おはよー!博士きてたの?」

「おお、あいすも元気そうじゃな。お、お主がこるねじゃな?」


「そうだけど。」

こるねは初めて見る博士に対しいぶかしげに答えた。


「噂通りの清楚系じゃな。」

「ふざけんな!」


「えなぴ博士だよ。多重宇宙と素粒子物理学の第一人者。」

笑いながらあいすが博士をこるねに紹介した。


「多重宇宙?」


りりがこるねに説明を始めた。

「この宇宙以外にも他に宇宙は無限に近い位たくさんあって近づいたり重なったり離れたりしてるって聞いたことあるだろ?」

「なんとなくは。」


うさが続ける。

「通常、宇宙同士が重なっても素粒子の存在法則が異なるので何の影響も与えあわないのですが。」 


のどかが後を受ける。

「極々稀に存在法則が近い宇宙同士が重なると部分的に影響を与え合ってしまうの。」


あいすとのあが続ける。

「それが災害や黒目の原因じゃないかって。」

「存在法則が近くって影響を与え合う確率って一京分の一なんだだって。」


「一京分の一?」

「100億回繰り返しても普通はないくらいの確率なんだって!わけわかんない。」

こるねものあも、もはや理解をあきらめた様子だ。


「そもそも違う宇宙なんぞ素粒子の成り立ちから物理法則自体がこの宇宙と同じとは限らんから観測も予測も困難なんじゃ。」

「違う宇宙。ふーん。全然わかんないや。」


のどかがお茶を飲みながら続けた。

「ちなみに数少ない他宇宙の観測方法が準結晶とダークフローなんだけどそれでも他宇宙との距離や重なりが大雑把にわかるだけね。」


「準結晶?ダークフロー?はー聞いたこともない単語だ。」

「おぬしの光の玉、出してみてくれんかの?」


「これかい。」


博士に言われ、こるねが直径十センチ程度の光弾を手のひらの上に出して見せる。


小さなアンテナがついたゴーグルの様な機械を装着する博士。


「光というか根本は電気じゃの。」

「ん?そうなの?」

「おぬし器用じゃの。こんな形で電気を固定するなんて。」

「え?いや勝手にっていうか気づいた時からできるから。」

「この光の玉はどれくらい大きくできるんじゃ?」

「大きく?できないよ。この大きさしかできない、十センチ位かな。」

「ほう。」

「あと、連続三個までしかだせない。」

「ほっほっほっ。やはりわからんな、電荷もった粒子がどこから来てるのか。まぁみんなと同じで他の宇宙が源なんじゃろうが。」

「?」

こるねは不思議そうに博士の言葉を聞いていた。


あいすがこるねに説明を始めた。

「例えばね、博士によると私は地面を蹴ってないのに移動しているんだって。正確に言うとね、この宇宙の素粒子に影響与えてないのに作用と反作用が発生しているんだって。」

「あ、ああ?」

「観測も困難だからあくまで予想じゃが、あいすが移動するために蹴ってるのは他宇宙のどこかの地面、正確には他宇宙のどこかの素粒子を蹴って恐ろしく早く移動してるってことじゃ。」


「あー素粒子ねぇ!あははー。」

「ね、全然わかんないでしょ?」


のあは真顔でこるねに同意を求め、二人は見つめあったまま無表情に笑った。

「あははははー。」


のどかがいきなり出番だとばかりに、立ち上がり早口でまくしたて始めた。

「説明しよう!さぁてお二人さん。例えばここにある水はH2Oという分子でできていることは知っているかな?」


のあが答える。

「それくらいは知ってもん。」


「じゃあH2Oは水素原子2個と酸素原子1個でできていることは知っているかい?」


「わかる。」

こるねが自慢げに答えた。


「じゃあこの酸素原子は何からできている?」

「え?何って?」

「空気?」


「ぶぶー!酸素原子を分解すると原子核と電子になります。さらに原子核を分解すると陽子と中性子になって、陽子を分解するとクォークになります。さらにクォークにはアップ、ダウン、チャーム、ストレンジ、トップ、ボトムと種類がありその他、レプトン、ゲージ粒子、ヒッグス粒子などもありこれら現在の判明している物質を構成する最小の粒子を素粒子と言うのです!わかりましたか!」


のどかが一気にまくしたてると、頭脳がショートしたのかのように、のあとこるねは目を回して倒れた。


「あらー。初心者向けにずいぶん優しく説明したんですけどねぇ。ちなみに私は時間、リリがレーザーつまり電磁波、うさが重力、そしてこるねが電気って感じね。それぞれ他の宇宙の事象をこの宇宙に持ってきてるんじゃないかっていうのが博士の推論よ。」


「ほっほっほっ。しかも思い通りにそれをコントロールしとる。ありえんありえん。お手上げじゃ。(まぁこの宇宙ができた時にこの宇宙のエネルギーの総量は決まっとる。なのにそこに他の宇宙から違うエネルギーを持って来る時点でとんでもないことなんじゃ、本来ならその瞬間に宇宙が崩壊してもおかしくない。この子らの能力は一体?)それよりこるねや、少し散歩せんか、話したいこともあるでな。」


テーブルをつかみながらなんとか立ち上がったこるねが博士に答えた。

「ん?いいけど。」


博士はゆっくりと立ち上がるとこるねと共に玄関へ向かった。


二人を見送りながらりりが言った。

「あ、今日の朝食当番はのあじゃない?」

「いけない私だ!待ってて急いで作るから。」

のあが急いでキッチンへ入っていった。


のあの後姿を見つめながら何かを思いついたようにりりが言った。

「ねぇ、あいす、うさ、のどかちょっといい?」

「ん?」

「地下の倉庫をさぁ…。」


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