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少女たちが出会う

誰もいないはずの夜の小学校の校庭に、けたたましい爆発音が何度も響き渡った。


ドドーンドドーンドドーン。


地を揺るがすような重低音が三度繰り返されるたび、闇に光が走る。


「なんだってんだよ、くそっ!」


苛立ちを含んだこるねの声が爆音の合間に響いた。

こるねは宙空を忙しなく動き回る黒い影に向かって、光の弾を必死に投げつけていた。


相手は奇妙な魚の形をしており、つぶらな黒目が闇の中で不気味に光っている。

だが、その動きはあまりにも素早く、こるねの放つ光弾はことごとく当たらなかった。


「いてっ!」


黒い魚影が猛スピードでこるねに迫った。

紙一重でそれをかわすものの、全てはかわし切れずこるねの体には既にいくつかの切り傷が刻まれている。


息を切らしながら、こるねはなおも光弾を放とうとする。


「当たれよ!はぁはぁ。」


その頃、小学校を見下ろす坂道を、二つの影が慌てた様子で駆け上がってきた。

紙袋を提げたりりとうさだ。


「この辺だけど。」

息を切らしながらりりが辺りを見回す。


「あれ!」

うさが指さした先には、校庭で光と黒い影が激しく戦う光景が広がっていた。


「あいつ誰だ?」

りりが訝しげに呟く。


「戦ってる。」

うさも目を丸くして見入った。

二人は顔を見合わせると、迷うことなく校庭へと走り出した。


魚型の黒目の攻撃を避けようと、こるねは校庭から隣接する住宅街へと逃げ込んだ。

その瞬間、こるねの前に突然、見知らぬ少女があらわれた。あいすだ。


「こっちはダメ、被害が出る。」

「うお!誰だお前!なんだいきなり!」

突然の出現に、こるねは驚きの声を上げた。


「戻るよ。」

あいすはそう言うと、有無を言わさずこるねの腕を掴み、瞬間移動で校庭の中央へと引き戻した。

直後、魚型の黒目が猛スピードで二人に突っ込んでくる。


「え?殺す気かぁ!」


絶体絶命のその時、あいすは取り出したクナイで、魚の口を間一髪で押さえつけた。

凄まじい勢いを辛うじて食い止めたものの、その衝撃であいすは吹き飛ばされてしまう。


「うわぁ!」

あいすが苦悶の声を上げる。


「だ、大丈夫か?」

こるねは慌てて駆け寄った。


「私じゃパワーが足りないかも。」


あいすは顔を歪めた。

その時、坂道を駆け下りてきた二つの影が、持っていた紙袋を投げ捨て、こちらに向かってきた。


「あいす!」

「りり!うさ!ナイスタイミング!ちょっと手伝ってね。」


あいすはそう言うと、再び瞬間移動でうさの背後に回り込み、その腰を抱きかかえた。


「うさ、あいつ捕まえて。」


「あいよ!」


あいすと共に、うさは目にも止まらぬ速さで瞬間移動を繰り返し、翻弄されていた魚型の黒目を追い詰めていく。


「おっしゃ!」

うさが魚型の黒目を捕まえた。


「よし!りりに向かってるぶん投げちゃって!」

あいすの声に応え、うさは捕まえた魚型の黒目を渾身の力でりりの方へ投げ飛ばした。


「おいしょー!」

「りり、出番!」

あいすが叫ぶ。


「まかせなさーい!そーれ!」

りりは構えていた槍を手に、一直線に魚型の黒目へと突進した。

次の瞬間、黒い魚影は跡形もなく一瞬で燃え尽きた。


「よしと!」

りりは満足そうに頷いた。


一方、こるねは信じられない光景を目の当たりにしたように腰が抜けかけていた。

「お前ら、化け物か?」


あいすは涼しい顔でこるねに問いかけた。

「当たれば強いんでしょ?その光の玉。」


「当たり前だ!俺はこれで生きてきたんだ!魚があんなに速くなきゃやっつけてた。っていうかお前、あの魚より早かったな。すげぇな。」

こるねは興奮気味にまくし立てた。


「私じゃ追いつけるけど倒せないから。りりとうさ。私はあいす。」

「あたしは…こるね。」

そう言うと、こるねの体から一気に緊張が抜け落ちた。


「はぁ、疲れた。腹減った!」

その言葉に、りり、うさ、あいすは思わず笑い出した。


「うち、これからご飯だからこるねも来ない?」

うさが屈託のない笑顔で誘った。


「え?いいの?この街にはあんたら3人だけ?」

こるねは不思議そうに尋ねた。


「うちにのどかとのあもいるよ。おいでよ、今日はうさが当番だから美味しいご飯が出るよ。」

あいすはそう言いながら、うさが投げ出した紙袋を拾い上げた。


「材料は多めに買ったからおいでよ。」

うさも笑顔で続けた。


「う、うん。」

こるねは戸惑いながら頷いた。


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