少女たちのお勉強部屋
自宅二階の一室。
通称、お勉強部屋。
一般的な一軒家の間取りからすると、その部屋は不自然に広かった。
まるで宇宙船のコクピットのような無機質で機械化された内装。
部屋の中央には、メンバーそれぞれが座るためのシートと、複雑な配線が張り巡らされた端末が備え付けられている。壁一面には、無数のモニターが埋め込まれ常に様々なデータやグラフが映し出されていた。
しかし、その異質な空間の中で、のどかの居場所はさらに異彩を放っていた。
部屋の一角にある押し入れの中。内部は徹底的に機械化されている、のどかの謎のこだわり個室だ。
メンバーたちは、それぞれの端末に向かい、難しい顔をしながらモニターを睨んでいた。
指先は忙しなくキーボードを叩き、時折、何かを見つけては小さく息を吐いた。
押し入れの中、狭く暗い空間で、のどかは膝を抱えながらモニターを見つめ、小さな端末を操作していた。窮屈そうな姿勢だが、その表情は真剣そのものだ。
「ふぅ。えいえいえい。ホイホイホイ。どうだっ。」
一息ついた後、のどかはモニターに表示されたデータを確認し、小さく呟いた。
「んー。そっかー。」
襖を少し開き、部屋の中に声をかける。
「こっちは異常なし、皆は?」
最初に答えたのはりりだった。
「私の方も痕跡なし。」
続いて、のあが少し疲れた声で言った。
「ダークフローも停滞、準結晶の影も薄いまま。」
「問題なし。」
うさの落ち着いた声が響く。
「なるほど。」
のどかは皆の報告に耳を傾け、再びモニターに視線を戻した。
「ちょっと待ってね、あーん。うさ、これどうすんだっけ??」
あいすが困ったように声を上げた。
「ん?あ、これは計算式がこう。」
うさがすぐに答える。
「えと、これで、これ?」
あいすが確認するように操作する。
「うん、あってる。」
うさは優しく頷いた。
「えーと、でた!大丈夫、整合性は取れてる。」
あいすはホッとした表情を見せた。
「とりあえず今は、あの黒目はこっちの宇宙にいないってことで大丈夫かな。宇宙同士の動きが複雑すぎて予測できないのが困るけど。」
りりは言った。
「とりあえずあいつのスピン、方曲線はセンサーで把握できたから、次こっちきたら感知できるはずよ。」
のどかは少しだけ安心させるように言った。
「今はできることはないわね。」
「はーい、お勉強タイム終わり!」
のあが勢いよく立ち上がりながら言うとさっそく部屋を出て行った。
「疲れた疲れた。」
りりも伸びをしながら後に続く。
「うさ、ありがとね、なかなか覚えられなくて。」
あいすはうさにお礼を言った。
「ほとんどできてたじゃん、大丈夫大丈夫。」
うさは笑顔で答えた。
最後に部屋を出たのどかが小さく呟いた。
「全てを跳ね返す黒目か。ほんとにそうだったらまずいかも。」