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少女たちのいつもの食卓

近未来の日本。

高層ビルが乱立する風景は現代とさほど変わらない。

しかし、この世界では他宇宙との重なりによって引き起こされる災害が日常の一部となっていた。

何の前触れもなく突如として空間が消失、または爆発する。

そして人知を超えた存在――黒目と呼ばれる存在が時に姿を現す。

それは人々にとって避けようのない災害そのものだった。


そんな日本のとある都市の住宅街にひっそりと佇む一軒の家。

そこで5人の少女たちが共同生活を送っていた。



夕日が差し込むダイニングルームでは、三人の少女たちが椅子に座り、今か今かと料理の完成を待っている。


「お腹すいたー!」

あいすがテーブルに頬をつけて声を上げると、のどかとのあも続けて声を揃える。

「お腹すいたー!」「お腹すいたよー!」


キッチンでは、エプロンをつけたうさが手際よくフライパンを振っていた。

「今作ってるってばぁ!」


うさが声を返すと、りりが笑いながらキッチンへ入って来た。

「手伝うよ。」

「ありがと。」


変わらず三人は騒いでいる。

「お腹すいたお腹すいたお腹すいたー!」


「もう、子どもじゃないんだから…。」

うさは肩をすくめた。


「うさお母さん、がんばって。」

りりのからかうような声にうさは眉をひそめて振り返る。

「やめて。」


「ドーン!」

その瞬間、外から鈍く響く爆発音が聞こえた。


「ん? 空中かな。」

りりが窓の外へのぞき込む様に呟くと、あいすが椅子からすっと立ち上がった。

「見てくる。」

その姿が一瞬にして消えた。


「一応、調べますか。」

のんびりとした声でのどかが言うと二階へと上がって行った。


「お腹すいたぁー!」

のあは変わらずばたばたと駄々をこねている。


「こないだ、うさが焼いたクッキー残ってんじゃん。ほら、これ食べときな。」

りりが戸棚から小さな缶を取り出し、中のクッキーをのあに差し出す。

「やったー! うさちゃんのシナモン入りのやつ、好きー!」

キッチンでトマトを切りながら、うさは微笑んだ。



住宅街から少し離れたビルの屋上。風が強い。

その場所に、あいすの姿があった。

「この辺かな……特に被害はないみたいね。空中でよかった。」

あいすは携帯を取り出し、素早く通話を始めた。


自宅の二階にあるお勉強部屋と呼ばれる一室は宇宙船のコックピットの様に機械化されていた。

正面には複数の大きなスクリーンが設置されており、四つの座席にそれぞれパソコンの様な端末がおかれている。

そのお勉強部屋の押し入れの中。

まるで秘密基地のように詰め込まれ機械化された小さなスペースで、のどかは器用に体を折りたたみながら端末のキーボードを叩いていた。

のどかの携帯が鳴る。


「はいはーい、どんな感じ?」

「空中で空間爆発だったみたい。地上には被害なし、黒目も出てない。」

「こっちでも調べたけど大丈夫そう。電磁波の乱れがあるくらい。いつもの軽いやつだね。」

「了解。じゃあ戻るね」

「ご苦労さまー。」



夕暮れが夜に変わり住宅街の街灯に灯がともっていく。

ダイニングには暖かな香りがたちこめテーブルには五人が揃っている。


「いただきます!」


食卓には、豚肉の生姜焼き、イカと里芋の煮っころがし、ほうれん草の胡麻和え、そして赤く熟れたトマトが大皿に盛られている。


「うさが当番のときは“ご飯”って感じでいいよね。」

のどかが箸をつけながらつぶやいた。


「え? 誰のときは“ご飯じゃない”みたいなの?」

あいすが目を細めてのどかを睨む。


「え? まぁ? ん?」

のどかが視線をそらす。


「ねえ、私、最近ちゃんと作ってるよね?」

あいすが不満そうに訴えると、りりが笑いながら答えた。

「こないだの親子丼、マジ美味かったじゃん。」

「でしょー!」

「のあもちゃんと作ってるよ。」

のあが里芋に箸を突き刺しながら言うと、りりとあいすが同時に突っ込んだ。

「のあ、サンドイッチしか作らないじゃん!」

「だって、サンドイッチしか作れないもん。何でもはさむだけ、カンタン。」

「今度パスタ教えてあげるからさ。茹でるだけ、カンタン。」

うさが微笑む。

「ほんと? じゃあ、作る!」


「あ、そうだ。」

りりが箸を止めて言った。

「そろそろ備蓄少なくなってきたから、明日みんなで買い出しね。」

「はーい。」

4つの声が、食卓に揃って響いた。

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