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5 異世界、2日目

 宿で一夜を明かし、異世界2日目。受付のある1階にはスーパーなどで見かける様な休憩スペースがあり、そこで朝食を食べられるらしい。ありがたく朝食を頂くことにする。



 出された朝食は、黒パン、サラダ、スープ、それにローストポークとスクランブルエッグ。

 黒パンは少し固かったが、ハード系のパンと思えば十分美味しく食べられる。サラダに使われていた野菜は見覚えのあるものだったが、見た事のないカラフルな色合いをした木の実も入っていた。爽やかな酸味が朝にピッタリでとても美味しかった。スープは温かいコンソメスープで、具はクルトンと玉ねぎくらいだがじっくり煮込んでいるのだろう。濃厚な味わいが口に広がる。玉ねぎも甘くて美味い。ローストポークとスクランブルエッグは見た目も味も馴染みのあるものだが、使われてる食材は魔物の肉と卵。うん、新しい体験。異世界って感じでいいね。




 美味しい朝食を楽しんでいる俺の隣に誰かが座る。アリアだ。彼女も朝食を頂くらしい。



「おはよう、アリア」

「あぁ」



 短く挨拶を交わし、アリアは朝食を食べ始める。アリアは大食漢ではあるが食事する姿は貴族の様に優雅だ。黒パンは少しずつちぎって口に入れているし、スープも音を立てずに飲んでいる。俺は黒パンに齧り付いたし、勿論スープは音を立てて飲むどころかスプーンを使わず器を持って啜っていた。食事は各々が好きな様に楽しむべきだとは思うが、こうして綺麗に、優雅に食べられるってカッコイイな。俺も次はアリアを見習って優雅に食べよう。



 とはいえ、今日もこの宿に泊まる為にはお金が必要だ。いつまでもアリアに立て替えて貰う訳にはいかない。早急にお金を稼ぐ手段を見つけなければ……。





「アリア。俺、職を探そうと思う」

「いきなりだな」

「いつまでもアリアの世話になる訳にはいかないからな。ひとまず生活出来るだけのお金を稼がないと。



 何かいい就職先はないか?」




 ふむ、とアリアは食事の手を止め、考える。「俺としては冒険者になりたいんだが」と伝えたところ、「無理だな」と即答された。冒険者になるには一定以上のステータスが求められるらしい。俺はその条件を満たしていないので無理だそうだ。それなら仕方ない。冒険者になるのはステータスを上げてからのお楽しみという事で。




「お前は愛想が良いし、接客業の方が良いだろう。露店で働くのはどうだ?この町は露店が多いから働き口を探しやすい。町の人は勿論の事、冒険者や旅人、商人など色々な人種と関わる以上、愛想が良くて誰とでも上手くコミニュケーションがとれる奴は向いていると思うぞ。



 ただ露店業でも売り物を作るのには専門的な技術が必要だ。売り子を担当するなら、雇って貰ったとして1日だけや、1週間などといった短い期間だけだと思う」

「露店か!楽しそうだな」




 たとえ短期バイトでも、色んな露店で働ける方が楽しい。もしかしたら職人技を間近で見られるかもしれないし、それを見て学ぶ事が出来たら、長期的に雇って貰えるかもしれない。


 それで働きつつ鍛錬もして、いつかは冒険者に転職。うん、完璧な計画だ…!




「露店では雑用の力仕事もあるだろうし、もしかしたら“筋力”ステータスやHPを伸ばせるかもな」



 アリアがナイフで切ったローストポークを口に運びながら言う。うん?何で雑用でステータスが上がるんだ?



 尋ねてみると、どうやらこの世界では普通に生きて生活しているだけでもステータスが上がるらしい。例えば、重い物を持って運ぶを繰り返していると“筋力”のステータスが上がる。その上昇具合は微々たるものだが、塵も積もれば、というやつで、大人になる頃には特に鍛錬もしていない市民でも、そこそこのステータスに成長する事もあるそうだ。勿論、生活習慣だけでそこまで成長するには子供の時から重労働をしている者___例えば朝から晩まで畑の手伝いをしている農家の子とか___が殆どだが。




 「ステータスを手っ取り早く上げるのには魔物を倒すのが一番だが、お前の場合はそもそものステータスが低すぎるからな。働きつつステータスを上げていくのは悪くない」

 「お金も貰えてステータスも上がる。一石二鳥だな。早速働き口を探しに行こう!」

 「まだ道を覚えてないだろう。一緒に行くから少し待て。そういえばお前計算は出来るのか?」

 「足し算引き算掛け算なら」

 「売り子として働くなら十分だ。あとはこの世界についてもう少し知っていた方がトラブルが起こりにくいだろう。ついでに教えてやる」




 「急いで食べ終わるから部屋で待ってろ」というアリアに、ゆっくりで良いぞ、と答えて俺は宿泊部屋へ戻っていく。

 魔物を倒すだけがステータスを伸ばす手段じゃないなら、筋トレとかでもステータスは伸びるんだろうか。取り敢えずアリアが来るまで部屋で筋トレしてよう。





 そうして頑張って筋トレし過ぎた結果、アリアが来た頃には全身汗だくになってしまい、「汗を拭け!」とアリアに乱雑にタオルを投げつけられた。ステータスは上がっていなかった。まだ足りなかったか…、でもこの調子で続けていけばいつかは上がるだろう。今日から筋トレを日課にしよう。継続は力なり、だ!




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