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2 戦闘指導、スタート

 

「さて、では早速指導に入るが__その前に、まだ名を名乗っていなかったな。


 私はアリア・シュザイン。アリアで良い」

「俺は伊月康平...こっちの世界風に言うとコーヘイ・イヅキか?とにかくコーヘイと呼んでくれ」



 分かった、と言うように頷いた騎士の姐さん__改めアリアは、「ではまず戦い方についてだ」と戦闘態勢をとる。敵を真正面から見据え、強く地面を踏みしめる。左手の盾を前に、その少し後ろ側で右手の剣を構える。その姿はとても勇ましく、様になっていた。カッコイイな。俺もあんな風になってみせよう。




「戦い方、と言っても人それぞれ違う。ジョブやステータス、それに使用するスキルや魔法によって最適な動きは変わってくるからな。


 私の今のジョブは《タンク》、敵の攻撃を受け止める戦い方をする。故に、この様に地面を踏みしめ、敵の攻撃で吹き飛ばされないよう構える必要がある」



 ふむふむ。確かに堂々としたアリアの出て立ちは正しくタンク。この人が前に立ってくれるとパーティーメンバーはさぞ安心感があるだろう。そういえばアリアはパーティーを組んでいるのだろうか。今の所アリア1人だけみたいだが。ソロのタンクって珍しい気もするが......まぁ細かい事は良いか。それより今は強くなる為努力あるのみ!だよな。



 アリアは構えをとくと、盾を地面に置く。そして今度は一転して足を上下に開き身体を半身に、剣は身体に密着させるように構える。盾を持っていない左手は背中に隠すように回される。



「今のお前の様に短剣の得物を持った__ジョブで言えば《アサシン》や《盗賊》が多いが__の場合はこの様に構える場合が多い。



 彼らは私の様な鎧では無く俊敏性に長けた装備をしているから、喉や胸などの急所をなるべく相手に晒さない為にも半身の姿勢が良い。足は直ぐに踏み出せるようにしておく事。重心を前におけば攻撃に入りやすく、後ろにおけば回避がし易い」



 おおっこの姿勢もカッコイイな。



「真似してみろ」とアリアが言うので、俺はアリアと同じポーズをとる。身体は半身に、左手は背中に、足は上下に開いて......と。うん、中々様になっているんじゃないか?ポーズだけなら熟練っぽい。



「__うん、まぁ良いだろう。一先ず戦闘ではこの姿勢を心掛けること。基礎中の基礎だからな」

「了解!」



 元気よく返事をした俺に苦笑するアリア。何だか会って間もないのにもう気心知れた仲みたいだな。異世界に来て初めの友達がこんな美人でカッコよくて良い人なんて最高。




「さて、次は攻撃と防御についてだ。まず、攻撃において最も重要なのは___敵の弱点を見極め、そこを突く事だ」



 うん、確かにゲームでも弱点属性で攻撃するのは基本だよな。火が効果的な敵には火属性攻撃を、ってな。



「例えば先程お前が戦ったスライムは斬撃が効果的だ。加えて、スライムの中に核があっただろう。あれはスライムの急所で、そこに攻撃を当てられれば大ダメージを与えられる。それこそ武器を使えばお前の一撃でも倒せるかもしれん位にはな」

「つまり次にスライムと戦う時はその核に狙いを定めろと」



「そうだ」とアリアは頷いた。良し、これで次にスライムと戦って勝つビジョンが見えてきたぞ。やっぱり出来る人に教えて貰うのはステップへの近道だな。勉強だって運動だって、それこそゲームだって、一人で頑張るのも素晴らしい事だが、得意な人に教えて貰った方が上達が早いからな。



「次に防御についてだが...武器による防御は初心者には難しい。盾による防御も上手く相手の攻撃を受け止めるにはコツがいる。そもそも盾は重いからな。お前に盾と剣を持てる程の筋力があるとは思えん。


 よって、必然的に防御は回避が中心となる」



 剣で攻撃を弾くのにも憧れるが...まだその段階じゃないって事だな。これからもっと強くなって戦闘にも慣れていつか華麗に剣で攻撃を弾いてみせる!

 またいい目標が出来たな。ますますやる気が出てきた。



「本当はギリギリで敵の攻撃を回避し、反撃に移るというのが理想だが、それも今のお前には到底不可能だろう。兎に角、相手との距離をとるつもりで大きく飛び退け。相手と自分との間の距離が出来るだけで相手の攻撃は空振る。反撃も一先ず置いておけ」

「反撃しなくていいのか?」

「攻撃を躱していればその内相手に隙も出来る。まともな防具も身につけてない以上、兎に角攻撃を受けない事を優先しろ。

 何なら別に無理に相手を倒す必要も無い。勝てないのなら素直に逃げるのも大切だ。命あっての物種、冒険者は臆病な位が丁度いい」

「命大事に、ってやつだな」

「その通りだ。それを忘れた奴から死んでいく。しっかり頭に刻んでおけ。



 __さて、戦闘においての基礎...というか心構えはこんな所か。

 次は実際に戦ってみるぞ。ここで講釈ばかり聞いていた所で経験を積まなければ意味が無い。習うより慣れろ、だ。安心しろ。この辺りにはスライムくらいしか居ないし、ピンチになれば私が助けに入る」

「よろしくお願いします!」



 遂に実践パートか。今度こそスライムを倒してみせるぞ!



 ・・・・・・



「では早速実戦に入る。本当はその前に私が相手になって模擬戦をしたかったが...万が一私が反射でお前に攻撃をしてしまったら、例え素手だったとしても大ダメージを与えてしまう気がするので止めておく」

「アリアとの模擬戦は俺の次のステージって事だな。その時を楽しみにしてる」

「次のステージどころの話ではない気がするが......」



「まぁいい」と話を終わらせると、アリアはおもむろに辺りを見回す。そしてある一点に目を留めると、その場所を指さした。



「あそこにスライムが居るな」



 アリアが示す方向に目を凝らすと、確かにスライムが居た。草原に隠れて見えにくい上に距離もそこそこあるのによく分かったな。索敵スキルとか持っているのだろうか。



「あいつを相手にするぞ。こちらに気付く前に不意打ちで仕留めるのも良いが...不意打ちは成功すれば良いが失敗すると面倒だ。先程教えた事の実践も兼ねて、普通に戦ってみろ」



 俺は慎重に歩いてスライムに近付く。スライムはこちらに気付くと戦闘態勢をとる。俺は少しスライムとの距離をあけつつ、先程習った通りの姿勢でスライムを見据える。回避優先と言われていたが、スライムは警戒しているのか攻撃を仕掛けてくる様子はない。ならばこちらから行く...!



 俺は素早くスライム目指して走り出した。そして手に持ったナイフをスライムの弱点__核に向けて振り払う。




 が、スライムは俺の攻撃を飛んで躱す。だがナイフの切っ先が僅かにスライムの身体を掠めた。さっき素手で戦った時よりも手応えがある。よし!次は一撃入れてみせる。



 もう一度距離をとると、今度はスライムが突進を仕掛けてきた。学んだ通りに取り敢えず大きく後退する。スライムの突進が外れ、更にスライムは突進の勢い余って地面に激突する。その隙を突いてもう一度攻撃を仕掛ける。核にこそ当たらなかったものの、俺の一撃は見事にスライムの身体に当たった。だがまだ倒すまではいかない。もう少し...!




 それから5分後、何度目かの斬撃でようやくスライムを倒す事が出来た。消えゆくスライム。よっし!結局核に攻撃を当てる事は叶わなかったけど、地道にダメージを稼いで倒せた!確実に成長している…!




「やったぞ!アリア!」

「いや、時間かかり過ぎだろ」



 アリアは信じられないという顔で俺を見る。ふむ...つまりアリアはもっと早く俺がスライムを倒せると期待してくれていたのか。その期待を裏切ってしまったのは申し訳ない。大分コツは掴めてきたし、次こそは5分未満でスライムを倒してみせる...!





 それから日が暮れるまで俺はスライムと何度も戦い続けた。アリアは呆れつつも、途中で帰る事もせずに俺を見守り、時にはアドバイスもしてくれた。優しさが無限大過ぎる。初めて出会った異世界人がアリアで本当良かった...!と俺は改めてアリアに深く感謝したのであった。

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