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18話 探す者たち

割れた机を踏み潰し、超至近距離での格闘戦を展開する。


お互いに魔術で強化された肉体は人の限界を容易く越え、ぶつかり合う拳は衝撃波だけで窓ガラスを粉砕する。


この二人の本気の応酬はディーラーを除けば世界最高峰の殴り合いであり、肉を打つ音と衝撃波、備品が滅茶苦茶に吹っ飛び荒れ果てた部屋は、危険地帯と化した。


右、左、これはフェイントかな。


私はこれまでの戦闘経験と勘を駆使してバロックの拳を紙一重で避けていく。


そして、自分より身長が高いため狙いやすいバロックの腹を、打撃の間隙を見極め狙う。


「お前程度が私の価値を測るな!」


私の拳はバロックのみずおちにヒットし、バロックを壁に叩きつける。


「ガフッ!やるじゃねぇかクソガキ!接近戦が出来ること隠してやがったな!」


「当然だ!私は何でもできるスーパーウーマンだからな!」


腹を押さえてるバロックに、猶予を与えず猛攻を仕掛ける。


黒死会の幹部なら持っているだろう固有魔法を使わせる機会を与えない。


私は腹を殴ると見せかけ、柔らかい関節を利用した足蹴りでバロックの顎を打つ。


私の強化された足蹴りはバロックを宙に一瞬浮かせ、その隙に繰り出された私の渾身の掌打は、腹に突き刺さった。


壁を破り吹っ飛んだバロックは、隣の部屋に消えていった。


「ボス大丈夫ですか!?」


おそらく一対一で話すから入室しないように言われていた護衛たちも、流石に心配になったのか扉を開け入ってきた。


「ウェンデル!テメェ!」


懐からオートマチックのハンドガンを抜いたガルウィッチは、額に青筋を浮かべながら発砲する。


ババババン!


4発連続で撃ち出された銃弾は、魔術により最大まで強化された私の肉体を貫通する事は出来なかった。だが、ハンマーで指を叩かれたような、かなりの鈍痛を感じる。


「随分と小さい銃身だな。いや、お似合いと言うべきかな?」


クスッと笑いながらのガルウィッチの下半身に目を向ける。


「ブッ殺す!」


私のお下品な挑発に顔を真っ赤にしたガルウィッチは、残りの残弾を全てバラ撒いた。


流石に痛いのは嫌なので、高速で動き躱していく。


「速すぎだろ!」


一瞬でガルウィッチの背を取った私は、背後から左腕で首を絞め上げ、右手でガルウィッチの懐をまさぐり愛銃を探す。


そして、私の背後にある部屋の入口から、コッソリと私を狙っていたハンスをノールックで撃ち抜いた。


「クソが!離しやがれ!」


泡を吹きながら暴れるガルウィッチを抑えながら、私は隣の部屋にいるバロックを警戒する。


「暴れんなよ肉壁」


ガルウィッチは思い出したのか、魔力を練り上げ身体強化の魔術刻印に魔力を流し始めた。


今の時代、戦闘に身を置く者が緊急用として身体の何処かに身体強化の魔術刻印を刻むのはよくある話だ。ただし、デメリットが多くあるため普段は使われないが。


私の練度には到底及ばないガルウィッチの身体強化の効力を匙と切り捨て、これからの行動を考える。


(バロックが怒っているのは幹部会で何か言われたからだろうね。黒死会に報復とか言う言葉は似合わないし、アイツ等は仲良しこよしの集団じゃない。となれば、バロックと取り巻きさえ殺せれば平穏な日常に戻れるかな?)


そこまで考えた私は、ガルウィッチの首を折ろうと力を込める。


しかし、折る直前に隣室から物凄い勢いで、黒い鉄の濁流が押し寄せてきた。


私は即座にガルウィッチを濁流に突き飛ばし、割れた窓から路地裏に飛んだ。


その直後、3階の壁を突き破りながら溢れ出す黒い鉄の群れ。


木材にコンクリートと、壊れた建材が路地裏に着地した私の頭上に降り注ぎ、赤い肉片と赤い髪の頭部が目の前に落ちてきた。


「あ〜らら。ガルウィッチは私が殺してやる筈だったのに」


私は事務所の建物から少し離れ、様子を伺う。


穴の空いた3階から出てきたのは、全身をゴツゴツとした黒い鉄鎧(てつがい)に身を包んだバロックだった。


「イメージにピッタリだね。鈍臭そうで優雅さに欠けるところが特に」


鉄鎧の下から反響した声がする。


「俺の固有魔法を見た以上、貴様にはここで死んでもらう」


おそらく彼の固有魔法は、実態を持った鉄鉱類の大量創出。

本来必要な触媒の"価値"を無視した物質生成はまさに"原理未解明な魔術(魔法)"。


私はリボルバーを手の中で回すガンプレイをしながら攻略法を考える。


私の固有魔法ならバロックの装甲を突破できるが、生憎と必要な触媒の類は全て瓦礫の下だ。


バロックは3階から飛び降り、路地裏に敷かれた煉瓦を陥没させながら着地した。


「お前の戦闘能力は目を見張る物がある。故に、お前が"価値ある人間"である事は認めよう。ただしウェンデル。それは貴様が弱者と比較した時の話だ。全ての事柄は相対的で、貴様の"価値"も、"力"も、俺より弱い」


「馬鹿を言うなよバロック。『人の"価値"は測れない。』常識だぜ?」


私はニヒルに笑って、上から目線の物言いを否定する。


「だから黒死会がお前達の"価値"を選別する。俺達は"価値の探究者"だ」


私はリボルバーをバロックに向け、この世の常識を語るようにリラックスして話す。


「お前たち程度に測れるほど人は浅くないと思うけどね。ああ、それと言い忘れてたが、私はお前よりも強いよ。ヤク中の男娼野郎(価値なきゴミ屑)





啓かれた知識

人の価値は測れない

『この世界の大半の物は触媒に用いることができる。しかしながら出来ないモノもあり、その代表例が生きた人間である。

過去には様々な手段で、生きた人間を贄として儀式を行った歴史がある。(※詳細は2年次の世界変革史6で扱います)

それらの悲劇はひとえに、生きた人間がなぜ触媒に出来ないのかが不明であった為、"人は特別な触媒である"という誤った認識が周知されていたからである。現在でも触媒に出来ない事由を説明する仮説は多くあるが、原因は未だ証明されていない。

これらの事から『人の価値は測れない』という警句が生まれたとされる』

アカデミー指定教科書 基礎魔術概論1より一部抜粋

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