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「これはカサゴだね。」
水族館の中で彼は魚の解説をしてくれた。
「食べられますね。」
「イソギンチャク、意外と愛着湧いてくるよな。」
「食べられないですね。」
「アジはこう見るとやっぱり綺麗だよねぇー。見てみなよ、ほら口空いてる。わこみたい。」
「食べられますね。」
私がそう答えると、彼が静かにこちらを見た。
「……。食べられる食べられないじゃないの!!もう、わこみたいだよねってボケたのに(=ε=)」
そんな彼の言葉を耳にアジを見ながら私はふと思った。
「置いて行かれる子って私みたいです。」
「うわお。答えにくいよ、わこちゃん。というか俺の言葉スルー?悲しー。」
彼と話しててふと思ったことが水族館の魚は、
「あの魚いつも食べるやつかとか、知らない魚は大体食べられないの多いなーとか。」
そんなことを考えていた。
「あのー、時差かな。会話に時差を感じるよ?アジの話どこ行ったのかな、わこさん。もしもーし!」
そんなことを考えていると彼が戸惑っていた。
「水族館の中で叫ばないで下さい。」
少し不機嫌そうに私が答えると、
「この上なく理不尽…!〣( ๐_๐)〣」
コロコロ変わる彼の表情はとても好きだと思った。
そんな下らない会話をしながらも彼が私に歩幅を合わせて歩いてくれていることには気が付いていた。
そんな小さな気遣いが嬉しかった。
きっと本人にはずっと言わないと思うけれど。
そんな彼といることが実はちょっとずつ嬉しくなってきて、魚より彼の顔を見ていたことは内緒にすることにした。