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第80話 勇者、ダンケ到着からの


「まったく動きがないな」

 スマホに映る偵察機からの映像を気だるそうに見ながら、イラサは言った。

 机の上に置かれたスマホの画面は、朝から何も変化がない。


「こっちが焦ったところで、相手が都合良く動いてくれるわけじゃない」

 パシュトは背もたれにもたれてコーヒーをひとくち飲むと、まるで自分ごとではないように言った。


 ダンケの町の端にある廃業した小さな町工場。今はブレッシング・スター教団の支部になっている。作業場を改装した教会。横には2階建ての事務所がある。

 表の通りに面した木には、パシュトの偵察機のドローンが、事務所の裏手には壁にはうツタの陰にイラサの偵察機ゴッサマーが配置されている。

 支部から200ミートルほど離れた所にある空き家で、パシュトとイラサは数日前から張り込みをしている。


 今日も朝から張り込みをしているが、目立った変化は何もない。日が沈み、薄暗くなってきた。

 警備のために雇われたと思われる冒険者が、表と裏にそれぞれ2人ずついる。メルシの支部が襲撃された直後に比べれば、警備の数はかなり減った。


「相変わらず夜の警備が手ぬるいな。こんなんで大丈夫だと思ってるのか?」

 イラサはバカにしたように言った。

「『神の試練だから門戸は常に開かれるべきだ』とかいう本部の意向らしい」

「頭がお花畑なヤツらだな」

「おかげでこっちはやりやすくなる」


 イラサは立ち上がり、窓の外を見ながら伸びをした。

「だったら、さっさと乗り込んで、白状させたほうが手っ取り早いんじゃないか」

 窓からは、町の中心の方にいくにつれ明かりが増えていくのが見える。一方、支部のある方は明かりがほとんど見あたらない。


「素直に話すと思うか?」

「力ずくで脅せば、なんとでもなる」

「そんなことで済むんだったら、とっくにSNSのやりとりで情報を得られている。それに、脅迫状が来ているらしい。犯人と間違われたら面倒だ」

「むしろそっちの方が手っ取り早い」

「で結局、メルシでは失敗して、愛機の偵察機を壊された挙げ句、取り逃がした」

「失敗するのも想定済みだろ?」


 パシュトは仕事を実行する上で、最悪の事態は想定するが余計な心配はしない。

 メルシでの一件は、想定外といえば想定外だが、最悪のケースは常に考えており、ああなることもまったく考えになかったわけではない。

 とはいえ、イラサの偵察機を購入し直したのは痛い出費だった。ひと言、釘を刺しておこうとパシュトは思った。


「突っ走るならコンビ解消だ。ひとりで好きなようにやってくれ」

「まあ、そう言うなって」


 パシュトが本気で言っていないことをわかっているのか、イラサはそれほど気にしていない様子で言うと、立ったまま机の上のスマホをのぞき込んだ。

「おい、これを見ろ」

 先ほどまでのイラサの声とは違い、緊迫感がある。


 パシュトも立ち上がり横からのぞき込む。

 裏手側に配置した偵察機からの映像に、見慣れない人影のようなものが写っている。

 薄暗いせいだけでなくローブをまとっており、姿は判別できない。

 警備の2人がローブの人影に気づき近づく。何かが一瞬キラッと光った。

 警備の2人が地面に倒れ動かなくなった。ローブの人影の手に剣のような物が見える。


「顔が見えるようにもっとズームしろ」

 パシュトが言うが、画面はズームしない。

「どうした?」

「それが、さっきから動かないんだ」

「もう壊れたのか? 新品だぞ」

「クソッ。不良品じゃないのか?」

 イラサは焦っている。


 すると、画面にノイズがはいったかと思うと、急に真っ暗になり何も見えなくなった。パシュトは慌てて自分のドローンを裏手に移動させる。

 ローブの人影はどこにもない。裏口から入ったのだろうか。イラサの偵察機があった所には、かつて偵察機であっただろう破片がわずかに残っていた。魔法か何らかの力で破壊されたようだ。


「取っ捕まえて、ゴッサマー2台分弁償させてやる」

 イラサは部屋を飛び出して行った。

 パシュトは事務所の全体が見わたせる近くの木にドローンをとめ、現場へ急行した。





 ゲンブルを倒し土のドンナモンドを手に入れた勇者モモガワ一行は、ダンケに到着した。


 この日は町を散策し、チョコレートミュージアムを楽しんで終了。夕食後、宿屋に戻ると各自、自由行動になった。

 モモガワは「夜風に当たってくる」と言って、装備も道具袋も部屋に置いて夜の街へ繰り出した。


 仲間たちが宿屋でまったり休憩していると、町のはずれのほうで何かが爆発するような音がした。仲間たちは宿を飛び出し急いで現場へ駆けつける。


 現場に着くと、すでに人だかりができている。ブレッシング・スターという教団の支部が激しく燃えていた。「恨みをもつ何者かに襲撃された」とか、「内部抗争があった」とか、「天罰だ」などと集まった人たちがウワサ話をしている。


 消防団の人たちが消火をしているが、最初の爆発の威力が強かったのか、燃え広がりが激しいだけでなく、建物の破損がひどい。

 救助活動ができる状態ではなく、中にいる人はもう亡くなっているかもしれない。

 周りにほかの建物がない場所だったので被害はここの施設のみのようだ。


 遅れてモモガワがやってきた。

「どこに行ってたんだ?」

 イヌコマが聞いた。

「どこって言われても……べつに」

 モモガワは後ろめたいことがあるのか、はっきりしない。


「あやしいですね」

 トリゴエは疑いの目を向けた。

「いかがわしいお店?」

 サルミダはズケズケと聞いた。


「ちげーよ。そんなんじゃねーよ」

「白状なさい」

 トリゴエが強めの口調で言った。


「1人でこっそりチョコレートミュージアムに行って試食しまくろうと思ったんだけど、もう閉まってたんだって」

 モモガワはばつが悪そうに言った。


「くだらん」

 イヌコマはバカバカしいと思った。

「ずるーい」

 サルミダは自分も食べたかったと思った。

「勇者ともあろう人が抜け駆けして試食しようだなんて、いやしいにもほどがあります」

 トリゴエは心底情けないと思った。


「だから言いたくなかったんだよな。ところで、爆発したような音がしたけど、なんかあったの?」

「何者かにこの施設が襲撃されたようです」

 トリゴエが手短に説明した。


「ヤベェじゃん。チョーおっかねえんだけど。早く宿に帰ろうぜ」

「そうですね。私たちにできることは何もなさそうです」


 宿の前まで戻ってきたモモガワたち。

「あしたの予定なんだけど、土のドンナモンドを持って神殿に行くと、なんかスゲーいいことがあるって王様が言ってたじゃん。先に行っちゃうってのはどうかな」

 モモガワはゲイムッスル王の話が長かったので聞き流していた。具体的なことはよくわかっていない。


「俺様はどっちでもいいぜ」

 イヌコマは、面倒くさいことは考えないタイプだ。

「まだこの町で聞き込みしてないけど、まあいっか」

 サルミダは、考えてもよくわからないタイプだ。

「襲撃事件もあってか、町の人たちも少し落ち着かない様子ですし、ほかを優先してもいいかもしれませんね。テポトで行って戻って来られますし」

 トリゴエは、熟考したうえで答えを導き出した。


 ダンケでのイベントを後回しにして、先に土の神殿へ行くことになった。

 遠くで聞き耳を立てていた情報課の職員が、「こっちは前乗りでスタンバってんだよ! 先にこっちのイベント片付けろや!」と思っていることなど、モモガワたちは知る由もない。


 翌朝、テポトでマイニグの町へ。ロープウェイには乗らず、ハイキングコースで土の神殿へと向かう。スマホで写真を撮りながら、ハイキングを堪能した。

 神殿はパワースポットで有名な観光地ということもあり、人がたくさんいる。

 拝観料を払い行列に並んだ。なかなか順番がこない。


「勇者の権限で、割り込みしちゃってもいいんじゃね」

 モモガワは悪気もなく言った。

「勇者だからこそ、人々の手本なるようルールはきちんと守らなければいけません」

 トリゴエはモモガワをたしなめた。

「じょ、ジョークだって」

 モモガワは白々しく言い訳をした。


 すると、ウマに乗ったままの人がモモガワたちの前に割り込んできた。

 立派な白いウマにまたがった2ミーターほどの男性で、白いレザージャケット・レザーパンツを着ている。背中にはドクロの模様が入っている。髪型はシルバーのモヒカンだ。そして、誰がどう見ても魔族だ。


「オレの前に割り込むなんて、いい度胸してんじゃねーか。ゴルァ」

 割り込みのことでトリゴエに怒られたばかりのモモガワは虫の居所が悪い。モモガワは割り込んできた人にヤンキー絡みをした。ヘヴィな格好の人になめられたらいけないと思ったのもある。


「某は厄災の四騎士のひとりホワイトライダー。魔界でも恐れられる某に戦いを挑むとは愚かなり」

「うっせー。勇者の前に割り込むなんて、そっちこそ相手が悪かったな」

「勇者? しょせん人間の小僧。片手でひねり潰してくれる」

「後悔しないうちに、魔界へ帰るんだな!」

「帰るのは貴様らの方だ。地獄へとな!」

 モモガワとホワイトライダーが、ちょうど戦闘ができるくらいに間合いを広げにらみ合う。


「なんだなんだー、ケンカか?」

「いや、あれは勇者じゃね」

「勇者と魔族の戦いがおっ始まったぞ」

「魔族のほうが強そうだな」

「勇者ーガンバレー」

「どっちもガンバレー」

 観光客たちはやんややんや、よいやよいやと野次を飛ばす。

 モモガワたちとホワイトライダーを中心に、観衆の輪ができた。


 ホワイトライダーはウマから下り、右手を手前にかざした。右手の前に黒い円ができ、中から大きな弓が出てきた。


「ウマに乗ったまま戦わないの?」

 モモガワは率直に思ったことを聞いた。

「おウマさんがケガしたらかわいそうではないか」

 ホワイトライダーは動物思いだった。

 白いウマから下りちゃったらホワイトライダーじゃないじゃん、とモモガワは思ったが、面倒くさくなりそうなので言うのをやめた。


「この大弓に射抜かれたらひとたまりもないぞ。近づくこともできまい」

 弓を構えるホワイトライダー。モモガワは剣を構えるが、うかつに近づけない。


「チクショー。こうなったら、必技! 勇者ぁ、反復横跳び!」

 モモガワは残像するほど素早い反復横跳びを繰り出した。


「そんなに激しく横に動かれたら、狙いが定まらないではないか!」

「当てられるかな? 外したら観客の皆さんに当たっちゃうぞ」

「くそう。観客の皆さんを人質に使うとは卑劣なり。勇者にあるまじき行為」

「勇者ぁ、反復横跳びしながら急接近!」

 モモガワの残像がホワイトライダーに迫りくる。


「ぬぉー。どれを狙ったらいいのかわからぬ!」

「勇者ぁ、残像反復横跳び斬り!」

 モモガワの一撃がホワイトライダーにさく裂した。


「ウボァー。某の負けだ」

「どうだ。参ったか」

 モモガワはたくさんの観衆の前で魔族を倒せ、鼻高々だ。


「しかし、このまま手ぶらで帰るわけにはゆかぬ」

 ホワイトライダーは、「はい、ちょっとスミマセーン」と言って観衆にどいてもらい歩いてクリスタルの場所へ行く。3ミーターもあるクリスタルを無理やり小脇に抱え、ウマのいる場所に戻って、「よっこいしょ」と言いながらゆっくりウマに乗った。

「このクリスタルは某がもらい受けた。サラバだ!」

 ホワイトライダーが言うと、黒い大きな円が現れ、その中へ入った。黒い円が消えると、ホワイトライダーの姿は消えていた。


「し、しまったー! クリスタルを奪われたー!」

 モモガワは、クリスタルが奪われる様子をしっかり見届けてしまった。

 仲間たちは、戦闘に参加してないから関係ないと思ってしっかり見届けてしまった。

 辺りは騒然となった。


「何事ですか」

 騒ぎを聞きつけて神官が出てきた。

「かくかくしかじか、というわけでクリスタルを奪われてしまいました」

 トリゴエが説明した。

「それなら心配には及びません。在庫ならちゃんとあります」

 神官はそう言うと、どこかへと行ってしまった。


 モモガワたちが理解しかねていると、神官が戻ってきた。後ろから、4人の巫女さんが透明のクリスタルを台車に乗せてついてきている。

 巫女さん4人がかりででクリスタルを台座に設置し終えると、神官によるご祈祷が始まった。


 神官と巫女がクリスタルを囲み、なにやら呪文を唱えている。

 ご祈祷は滅多に見られない場面だ。観光客はこぞってスマホで写真やら動画を撮りまくる。モモガワたちも、もちろんSNS映えのチャンスは逃さない。

 クリスタルが神聖な光に包まれ、薄茶色に輝きだした。


「はいっ。これで元どおり」

 クリスタルを中心に神官と巫女が並んだ。観光客はシャッターチャンスだと、写真を撮りまくった。モモガワたちも負けじとアングルを変えて写真を撮りまくった。

 かなり貴重なものが見られ良い観光になった。モモガワは魔族を倒したことよりも、SNS映えネタを得たことの方が、満足感が大きかった。


 その後、行列に並び直したモモガワたちは、無事に土の精霊の加護を受けることができた。モモガワはスキル『カメの甲羅シールド』を取得した。硬い甲羅を出現させ攻撃を防ぐことができる。

 あと、新品のクリスタルだから、なんとなく得した気分になった。


「カナリーちゃんからもらったネックレスも忘れないでね」

 サルミダはお友だちとの約束は忘れない。

 モモガワは、あんまり意味ない効果なんだよな、と思いながらも土のクリスタルにネックレスをかざした。


 神殿を散策していると、『あなたもクリスタルになれる』という顔出しパネルを見つけた。


 中心に大きなクリスタルが鎮座し、周りに神官と巫女がいる絵だ。

 モモガワは中心の大きなクリスタルから堂々と顔を出した。全力で楽しまないと損だからだ。サルミダもノリノリでも神官から、イヌコマとトリゴエは恥ずかしがりながらも巫女から顔を出した。なんだかんだ言いつつも楽しそうだ。巫女さんに頼んで写真を撮ってもらった。


 お土産屋での買い物も終え、御朱印帳に御朱印ももらい、ロープウェイで帰途につく。


「魔族はクリスタルを奪って、いったい何に使おうというのでしょうか」

 トリゴエは魔族の動向に少し不安を覚えた。

「魔族のヤツらのことだ、恐ろしい計画でも練ってるんじゃねーのか。まあ、ここで考えてもどうにもならないけどな」

 イヌコマは起こってしまったことは深く考えない。

「わーい。恐ろしい計画だー」

 サルミダは事の重大さをわかっていない。

「うんそうだね」

 モモガワはスマホをいじりながらテキトーに返事をした。SNSの更新に余念がない。ご祈祷の動画と顔出しパネルの写真を、今のうちにアップしておきたかった。


 それぞれの思いを胸に、勇者たちを乗せたロープウェイは進む。





 ゲイムッスル国の南西にあるアタカモ砂漠。海から冷たい空気が流れ込み、上昇気流が発生せず、ほとんど雨が降らない冷涼海岸砂漠だ。

 雨は降らないが空気は湿っているため、しばしば濃い霧が発生する。

 その砂漠の中ほどにある枯れることのないアタカモ・オアシスのほとりに水の神殿がある。


 水の神殿へは、スナイヤーンの町から観光用のシャトルバスが出ている。

 バスは砂漠を貫く1本の道をひたすら進む。

 何百年も前はかつて沼地だった地帯には、枯れた木が点々と立っている。木を分解する微生物さえいない、厳しい環境だということがうかがえる。

 砂漠でのキャンプ体験ツアーもあるらしい。物好きな人もいるものだ。都会で生まれ育った人には新鮮な体験なのかもしれない。


 シャトルバスが水の神殿に着いた。どこの神殿も観光客でいっぱいだ。

 クグとゼタは、ほかの観光客たちの流れにのって水のクリスタルを拝観できる行列に並ぶ。

 水のクリスタルに勾玉のネックレスをかざす。勾玉の中で薄茶色と赤色と水色が、ゆっくり渦を巻くように回っている。これで3つの精霊の力が入ったようだ。

 前の2つの神殿同様、神殿の巫女さんと打ち合わせをする。

 やはりこちらにも、ウマに乗った魔族がすでにきているようだ。


 神殿の周りを調べると、かわいい水玉柄のレジャーシートを敷いて座っている魔族がいる。

 今度は黒いレザー上下を着ている。素肌にジャケット、ゴテゴテした装飾と背中のドクロの模様は共通のようだ。髪型は金髪のロングヘアーだ。

 漆黒の毛のウマがすぐそばにいる。

 クグは今回も『週刊勇者タイムス』の記者を名乗って取材を申し込むと、快く引き受けてくれた。


「某は厄災の四騎士のひとりブラックライダーと申します。魔王様より勇者を倒す役を仰せつかり、クリスタルの事前調査を終えたところです」

「厄災の四騎士といえば、先日、ホワイトライダーさんが勇者に倒されたようですが」

「奴は我らの中でも最弱。人間の小僧ごときに負けるとは、厄災の四騎士の面汚しよ。そして、某を倒すことは不可能」

「クリスタルを奪うのは成功したみたいですが、何に使おうとしているのですか?」

「クリスタルの力があれば、魔界は変わることができる」

 四大精霊の加護を利用するのだろうか。

「どのように変わるのでしょうか?」

「これ以上は言えぬ。ちなみに、レッドライダーから受け継いだ御朱印帳を持ってきたので、社務所で御朱印をもらいました。勇者が来たら御朱印どころではなくなってしまいますので」

 ブラックライダーは、わざわざ御朱印が押された御朱印帳を見せてくれた。律義なのか、話をはぐらかされただけなのか。


 クリスタルについては聞けそうにないので、クグは話題を変えることにした。

「先ほど、倒すのは不可能とおっしゃられましたが、何かの武器の達人ですか?」

 ブラックライダーは立ちあがると右手を手前にかざした。右手の前に黒い円ができ、中から古めかしい天秤が出てきた。


「それは武器ですか?」

「某にしか扱えぬ特殊な武器だ」

「どのように使うのですか?」

「戦闘フィールドの状況を変えることができるのだ。天秤が右に傾くと武器の攻撃が一切、無効になる。魔法攻撃しか効かない。さらに、ステータスアップ効果がすべて打ち消される。某は、多彩な魔法攻撃で勇者たちを圧倒するのだ」

「逆だとどうなるんすか?」

「左に傾くと武器の攻撃が有効になり、魔法は封じられる。某は『闇の波動』を放つ。この波動はランダムで毒・マヒ・睡眠などの状態異常になる。という仕組みになっている」

「フィールドの状況を把握しなければならないのはもちろん、魔法が使えないのに状態異常になると苦戦しそうですね。詳しく教えてくださりありがとうございます」

「いえいえ。某が勝つのは決まっているので」

「ついでにシラベイザーでスキャンしてもよろしいですか?」

「どうぞ」

 ブラックライダーはウマにまたがり、天秤を構えてポーズした。クグはスマホでスキャンし終えると、礼を言ってその場を後にした。



 水の神殿から戻ってきたら、スタボーン課長に呼ばれた。

 先代勇者フォールズの元仲間から話を聞く許可が出た。そのうちの1人に会えるよう今、調整しているところらしい。


「残りの2人は君たちの裁量に任せる、とのことだ。どこで何をしているかわからない。敵対する関係になることはないと思うが、万が一のことがあったら、ことを荒立てないようにだけは注意してくれ」

「はい、わかりました」

 気をつけるに越したことはない。いきなり「実は影で冒険の支援をしていました」なんて言って、「はいそうですか」と素直に話を聞いてくれるほど甘くはないだろう。


 キャサリンにも空いた時間で残り2人の居所を調べてもらうよう、スタボーン課長から伝えてもらうことになった。


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