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第73話 勇者、聖剣グラディウス


 エルフの女王から伝説の武具が世界のどこかにあることを聞いた勇者一行は、ゲイムッスル王に会うため、シュトジャネまで戻って来た。

 そしてゲイムッスル王から、『聖剣グラディウス』がシオサインの町の方面にあることを聞いた。


 久しぶりにシュトジャネまで戻ってきたモモガワたちは、次の冒険の準備などもあったので、その日はゆっくり過ごすことにした。

 イヌコマ、サルミダ、トリゴエは、それぞれ故郷のドッギア、モキニア、バドシアに顔を出し、土産話をした。

 翌日、気分をリフレッシュできたモモガワたちは、シオサインへと向かった。


 シオサインで情報収集をすすめていると、伝説のマズさとウワサされるコーラの情報を得た。

 モモガワたちは、興味本位でグビグビドリンコへ向かった。

 そして、タコビッチ社長の歓迎を受け、社長の案内で倉庫へ直行した。

 社長から自社商品のすばらしさを散々聞かされた挙げ句、どういう流れでなぜそうなったのかわからないが、イカコーラを試飲することになってしまった。

 モモガワは禍々(まがまが)しいオーラを放つ瓶を片手に、意を決してイカコーラを一気に喉へ流し込んだ。

 仲間たちもつられてイカコーラを飲んだ。


 モモガワは「あれ? 結構イケるな。適度な甘さが爽やかな生臭さを運んでくる。イカのブツブツなツブツブが炭酸と相まって新感覚のノドゴシ。常備してハードなボス戦の後に、グビッと一気飲みしたいな」と思った。

 しかし仲間の様子をうかがっている。なぜなら、自分だけバカ舌だと思われ、仲間外れにされたくなかったからだ。


 イヌコマは、あまりのマズさに泡を吹いている。

 トリゴエは、あまりのマズさに凍りついている。

 サルミダは、あまりのマズさにブワッハーと盛大に吹き出した。

 モモガワは、吹き出されたイカコーラを顔面に浴びた。顔に浴びたイカコーラをハンカチでフキフキした。


 仲間たちは状態異常『イカ』になり動けない。

 モモガワは仲間たちにスコヤカンをかけた。

 仲間たちは状態異常『イカ』から回復した。


「マズすぎて一瞬、死んだかと思ったぜ」

 イヌコマは半分キレている。

「人が飲むものではありません」

 トリゴエの声にも怒りがにじみ出ている。

「うげー」

 サルミダは言葉にならない。

「そ、そうだよな。ク、クッソマズイいよな」

 モモガワは仲間に同調し、仲間外れを回避した。


 イカコーラを、戦闘アイテムとして販売してもらえることになった。

 モモガワはSNSに、『ピンチのときはこの戦闘アイテム「イカコーラ」。敵を状態異常「イカ」にして形勢逆転だ!』と宣伝を兼ねて投稿した。

 お礼にイカコーラを1ダースもらった。


 お口直しに、自販機で『あっためた~い』温度のビタニュー・ブーストを買った。

 微妙な温度なので、『あったか~い』のか、『つめた~い』のか、どっちかにしろ。ぬる~いじゃねえか、とモモガワは思った。でも、残さず飲みきった。もったいないからだ。

 イヌコマもサルミダも、「ぬる~い」とグチりながら飲んだ。

「冷たいものをたくさん飲むと、胃腸の働きが弱まるのですよ。健康のためにはこれくらいがいいのです」

 トリゴエだけが満足そうに飲んだ。



 イカコーラを手に入れたモモガワたち。情報収集を続けていると、サハギンの村に、黄金に輝く聖剣グラディウスがあることを聞いた。

 町を出て東へ進むが、サハギンの村へ行くとなんかイベントが始まりそうな気がしたので、北東の方へ寄り道をしてみた。

 町で、カメキノコランドという施設が建設中だと聞いたので、一度見てみたいと思ったからだ。

 遠くに何かを建設している場所が見える。一直線に向かうと、看板には『カメキノコランド建設中』とある。どうやら目的の場所に着いたようだ。


 遊園地エリアはまだ造成中で、アドベンチャーエリアも仮コースの状態だ。

 しかし、仮コースの先には2頭のゴリラがいる。


「大変です。あんなところに、ゴリラに捕らえられた人質がいますよ」

 トリゴエが言ったとおり、ゴリラの足元には、ロープでぐるぐる巻きにされた人がいる。

「よく見るとカメじゃね? カメだからカメ質じゃね」

 モモガワは、どうでもいい言い回しにこだわるタイプだ。


「助けてくださいでゲス。ヘンなゴリラに捕まってしまった挙げ句、謎の空飛ぶ円盤に連れ去られたと思ったら、こんな訳のわからない所に連れ回されて困ってるでゲス。営業に行けないでゲス」

「しゃべるカメだな」

 イヌコマは珍しいものでも見るように言った。実際に、しゃべるカメは初めて見たので珍しかった。


「あっしはカメじゃねーでゲス。カッパっちゅう種族なんでゲス。ちゃんとズンバビノ・ベンベロビッチっていう名前があるんでゲス」

「カッパってナニ?」

 モモガワはカッパが何なのかわからない。


「ナニって言われても困るでゲス」

「新種だな」

 イヌコマは断言した。

「わーい新種だー」

 サルミダは新種を発見できてうれしかった。


「古来から親しまれてるでゲス」

「あの方は東の端にあるトーイットコ国に生息するカッパという種族です。人質でもカメ質でもなくカッパ質になります」

 トリゴエの解説に一同は納得した。

「そんなことはどうでもいいでゲス。早く助けてくださいでゲス」


 ゴリラたちが何やらウホウホ言っている。

「ぼくはゴリッチャ。ぼくはラリッチャ。2頭そろってエグイサル・ブラザーズ。サルーズって呼んでね」

 トリゴエが訳した。

「ゴリラ語わかるってスゴくね」

「いえいえ、日常会話程度です」

「わーいゴリラ語だー」

 サルミダは、ゴリラ語は聞いたことがないのでわからない。とりあえずノリだ。


「なんかチョー怒ってるっぽいんだけど。ヤバくね?」

「どうやらサルーズは私たちのことを、カメキノコランドを破壊しに来た悪の手先だと認識したようです」

「なんでもいいや。勇者のオレが今すぐ助けてやるぜ!」

 モモガワはとにかくカッパ質を助けるため、仮コースのアドベンチャーエリアへと向かい、コース攻略に挑んだ。


 4ミーターの人工的な溝を跳び越え、横倒しになったドラム缶の上にバランスよく乗って進み、5ミートルの鉄パイプをぶら下がって進み、地面にあった美肌キノコを食べて美肌になり、ボルダリングウォールを登り、サルーズの待つ所までたどり着いた。

 仲間たちは、横の整地された所から行けよ、と思った。あと、キノコを拾い食いしてんじゃねーよ、とも思った。


 サルーズを前にしたモモガワは、ゴリラ専用おやつ『ゴリヂュール マジバナナ風味』を道具部から取り出した。

『ペット用おやつ、よだれヂュルヂュル止まらないヂュールシリーズに、ゴリラ用のゴリヂュールが新しく加わったよ。ゴリリンゴ風味とマジバナナ風味』とCMをやっている、ヤバウマフーズのグループ会社『ヤバウマペッツ』の新商品で、絶賛発売中だ。


「なんでそんなもん持ってんだよ」

「冒険してたらさ、いつかゴリラと遭遇することがあるかもしんないじゃん。そのときに、ゴリラを手懐けられたらSNSでバズりまくりじゃん。今がその時じゃん」

 冷静なイヌコマに対し、モモガワの夢は膨らむ一方だ。


 しかし、サルーズの反応はよくない。何やらウホウホ話している。

「『食べ飽きた』『本物のバナナにはかなわない』だそうです」

「ゴリラのくせにぜいたく言いやがって」

 夢を一瞬で砕かれたモモガワは、勇者らしからぬ悪態をついた。


 モモガワは右手に持ったゴリヂュールを頭上にかかげ、「ゴリラとお友だちになりたいなー」と思いながら勇者の祈りをした。

 天から2本の光が降り注いだ。青リンゴ色の光が兄のゴリッチャへ、バナナ色の光が弟のラリッチャへ。2頭ともゴリヂュールをたいらげたときのような至福の表情になった。


 勇者の祈りを浴びたサルーズは、踊るように跳ねている。

「ユウシャ。トモダチ。と言っています」

 モモガワは、心が浄化されたサルーズとお友だちになれた。夢がかなった。


 モモガワは、ロープをほどいてあげたベンベロビッチに『ゴリヂュール マジバナナ風味』を差し出した。

「これもういらないからあげる」

「ちょうどおやつで何かたべたいと思っていたところなんでゲス。ありがたくいただくでゲス」

 ベンベロビッチは『ゴリヂュール マジバナナ風味』をおもむろに食べ始めた。

「バナナのフルーティーさがたまりませんな。これはやみつきになりそうでゲス。お土産に買って帰るでゲス。そうだ、助けていただいたお礼に、これを差し上げるでゲス」


 モモガワは、助けたベンベロビッチからスパリゾート・リューグーゼウの7泊8日宿泊券&フリーパスをもらった。仲間の分も合わせた勇者特別フリーパスだ。シリコダミン・デラックスをオマケで1箱もらった。モモガワは、怪しいオマケはいらないと思ったが、むげに断れなかった。


 モモガワはベンベロビッチに頼んで、サルーズとの記念写真をスマホで撮ってもらった。

 サルーズの間に立ったモモガワは、初ゴリラでいささか緊張しつつも、スタンダードなピースサインで自然な感じを出して乗り切った。


 モモガワは仲良くなれた記念に、イカコーラをあげることにした。サルーズとベンベロビッチはイカコーラを受け取り一気に飲み干すと、座りこんで動けなくなってしまった。ステータス異常イカだ。より仲良くなろうとしたモモガワの思惑がはずれた。イカコーラ好きは少数派なのだということを、改めて思い知った。

 モモガワは、怪しくて飲みたくなかったシリコダミン・デラックスをあげてみることにした。サルーズとベンベロビッチはシリコダミン・デラックスを受け取り一気に飲み干した。サルーズは急激に元気になり、飛び跳ねたりドラミングをしたりしだした。イカ状態から回復しただけではない。誰がどう見てもハッスル状態だ。ベンベロビッチは普通に元気な状態だ。


 サルーズはウホウホハッスル状態でベンベロビッチを捕まえると、無理やりなでなでしたり、頬ずりしたりしている。

「カメもトモダチ。と言っています」

 冷静に通訳するトリゴエとは対照的に、サルーズは元気がおさまりそうにない。

「助けてくださいでゲス」

「なかよしになってよかったね」

 サルミダは、ゴリラとカッパの和解を見られて純粋にうれしかった。


 モモガワは、シリコダミン・デラックスの効果が危ないクスリレベルのヤバそうなやつに見えたので、残りのシリコダミン・デラックスを箱ごとそっと足元に置いた。

 一件落着したので、モモガワたちはカメキノコランドをあとにした。


 町へ戻る途中、サハギンの村が見えてきた。

「いっけねぇ。町でサハギンの村にグラディウスがあるって聞いてたの忘れてた」

 カメキノコランドが楽しかったので、モモガワのみならず仲間たちも完全にグラディウスのことを忘れていた。



 サハギンの村に到着したモモガワたち。

 聖剣グラディウスのある場所を、親切なサハギンさんから聞いた。サハギンの特殊メイクをした情報課職員による情報だとは知る由もない。


 聖剣グラディウスのある広場に着いたら、すでに誰かがいる。

 白衣を着ている高齢の魔族だ。頭頂部はツルツルだが、横と後ろの毛は白髪でモジャモジャだ。

「やっと来た。待ちくたびれたの」

「だれ?」

 サルミダはストレートに聞いた。


「わしは魔族一の天才科学者オンボ博士なの」

「へえ。なにしに来たんだ?」

 イヌコマはストレートに聞いた。


「勇者が聖剣を手に入れると聞いて阻止しに来たの。ついでに、ここがオマエたちの墓場なの」

「なぜここに聖剣があると知っていたのですか?」

 トリゴエはストレートに聞いた。


「親切なサハギンさんが、勇者が聖剣を取りに来るって教えてくれたの」

 この場にいる誰もが、サハギンの特殊メイクをした情報課職員による情報だとは知る由もない。


「チクショー。魔族に先を越されるとは、不覚だったぜ」

 モモガワは、悔しさをにじませて言った。

 グビグビドリンコとカメキノコランドがムダだったのではないか、とは誰も気がついていない。


「これを見るがよい! 超高性能AI(開発中)を搭載した人型ロボット、その名もオンボロイドン・プロトなの!」

 オンボ博士の横には、おもちゃのブリキのロボットをそのまま大人の大きさにしたような外観のロボットが立っている。

「ふーん」

 モモガワたちの反応はイマイチだ。


「もっとビックリしてよ。長年かけて勇者の不思議な力を研究し、ついに勇者フォース発動装置を開発したの。それを小型化して搭載したスゴいやつなの。それ以外の機能はまだプロトタイプだけど、なんとか間に合わせたの」

「っていうか、強いの?」

「当たり前なの。耐水仕様だから、川で1日中お洗濯をしても大丈夫なの」

「スゲェ! お洗濯のオニじゃん」

「さらに耐熱仕様だから、炎天下のバーベキュー場で1日中お料理しても大丈夫なの」

「スゲェ! バーベキュー・マスターじゃん」


「というわけで、先に聖剣グラディウスを手に入れるから、ちょっと待っててね。こういうのって先に並んだ順だもんね」

 モモガワたちは、どんなときも順番を守るタイプなので、オンボ博士の言うとおり待つことにした。


 巨石には、木でできた簡易の階段が設置してある。手すりはない。誰でものぼれるよう土木課の職員によって作られ、設置されたものだとは知る由もない。

「オンボロイドン、あの階段をのぼるの!」

「ワカッタ」

 オンボ博士から命令を受けたオンボロイドン・プロトがゆっくり階段をのぼりはじめた。


「スゴいだろ! 階段のぼれるんだぞ」

「めっちゃ遅いんだけど」

「いいの! 自力で階段をのぼれるようになるだけでも大変なの!」

 オンボロイドン・プロトが手すりのない階段をゆっくりのぼっていく様子を、みんなで固唾をのんで見守った。


「コロバズニ、ノボレタヨ」

 無事に上までたどり着いたオンボロイドン・プロトは、両手を挙げて喜んでいる。

「よくやったの。みんなも褒めてあげて。褒めたら伸びる子なの」

 なんで褒めなきゃいけないんだよ、とモモガワは思った。


「よかったね!」

 サルミダは元気よく褒めた。

「ロボのくせにやるじゃねーか。ヒヤヒヤしたぜ」

 イヌコマは、頑張っている人を見ると熱が入って応援してしまうタイプだ。

「頑張りは認めてやらんこともない」

 モモガワは上から目線で褒めた。

「頑張りましたね。見晴らしはどうですか?」

 トリゴエは温かい目で見守るタイプだ。


「ゼッケイデス」

「勇者フォースを発動させ、その聖剣を抜くの!」

「ユウシャフォース・モード、キドウシマス」

 聖剣グラディウスを前にしたオンボロイドン・プロトの周りに、オーラのようなものが漂う。

 謎のオーラをまとったオンボロイドン・プロトが聖剣グラディウスをつかむと、一気に引き抜いた。


「ヒキヌクコトガ、デキマシタ。ユウシャフォース・モード、シュウリョウシマス」

「よーし、次はオンボロイドンAI解析なの。オンボロイドン・プロトが武具を手に持つと、AI解析をして武具の強さや特殊効果がわかるの。解析が済んだらスマホにデータを送ってね」

「カイセキカンリョウ。データ、テンソウシマス」


「どれどれ。老眼だから画面が小さくて見にくいの。しかも、なんかところどころ文字化けしてるの。精度が不十分なのかな。えーと」

 オンボ博士は老眼鏡をかけ、スマホに表示されたデータを読み上げた。

『ゴールデン・ハリセン。その名も、グラディウス。

 攻撃力、あってないようなもの。特殊効果なし。全面に金を蒸着箔したゼイタクな逸品。金色でカッコイイ。これでたたくと、とてもいい音がする』


「チクショー! 魔族に伝説の武器を取られてしまったぜ」

 順番待ちをしていたモモガワは、悔しさをにじませて言った。


 ゴールデン・ハリセン(グラディウス)を装備したオンボロイドン・プロトが、階段をゆっくりおりてくる。


「いまのうちに、戦う際の注意事項なの。ロボットは精密機器だから乱暴に扱っちゃダメなの。転倒しちゃうと自力で起き上がれないから注意してね。それから、まだ耐雷コーティングしてないから雷魔法は厳禁なの」

 階段を無事におりることができたオンボロイドン・プロトは、腕をグルグル回してゴールデン・ハリセン(グラディウス)を素振りしている。


「せっかく引き抜けたから、ちょっと休憩するのはどう? おいしいコーラがあるんだけど、飲んでみる?」

 モモガワはさりげなくイカコーラを差し出した。

「なんか怪しくない?」

 オンボ博士は怪しく黒光りする液体を見て言った。

「ゼンゼン怪しくないし。ゼンゼンふつうの、ゼンゼン大丈夫な、ゼンゼンおいしいやつだし」

 モモガワの語彙力では、説明すればするほど怪しくなることにモモガワ自身気がついていない。

「余計に怪しく見えてきたの」

「新発売のレアなやつだから。アレがアレな感じでチョーイケてるって感じ?」

「うーん。そんなに言うなら、せっかくだからいただくの」

 モモガワはイカコーラをオンボ博士に手渡した。

 オンボ博士は瓶をいぶかしそうに見ると、オンボロイドン・プロトに渡して言った。

「オンボロイドンAI解析するの」

「ワカッタ」

 オンボ博士はスマホに転送されたデータを読んだ。

「『名称イカコーラ。劇物。イカの呪いにかかる。人が飲むものではない』以上なの。ぜんぜんコーラじゃないの。危うく勇者にだまされるところだったの。捨ててしまっていいの」

「ワカッタ」

 オンボロイドン・プロトはイカコーラをその場に投げ捨てた。瓶が割れて、イカ臭さがあたりに漂った。

 モモガワは「チッ」と舌打ちした。それとなくイカコーラを飲ませてステータス異常イカにするというセコい計画は阻止された。


「気を取り直して。準備はいいかな?」

「バッチリデス」

「よーし。それじゃあ、あそこにいる人間を倒すの」

「ナンデ?」

「なんで? じゃないの。人間は悪いヤツらなの。倒さないといけないの。前回リハーサルで教えたでしょ。それに、さっきも劇物を飲まそうとしたでしょ」

「ワカッタ」

「わかったならよし。やってしましなさい」

「ガンバル」

「イケー! オンボロイドン!」

 オンボロイドン・プロトがモモガワたちに向かってゆっくり1歩ずつ歩き始めた。


「そりゃーっ」

 待てなかったサルミダが飛び蹴りをした。もろに蹴りをくらったオンボロイドン・プロトは倒れた。あおむけでじたばたしている。

「タスケテー」

「あちゃー。転倒させたらダメって言ったでしょ。まだオートバランサーの調整が不安定だから、倒れちゃったら自力で起き上がれないの」

「しょうがないですね」

 トリゴエがオンボロイドン・プロトを起こしてあげた。

「ありがたい紳士なの。ちゃんとお礼を言ってね」

「アリガトウ」

 オンボロイドン・プロトはオンボ博士に言われたとおり丁寧にお礼を言った。


「おりゃ」

 イヌコマは、起き上がったばかりのオンボロイドン・プロトを後ろから蹴り倒した。オンボロイドン・プロトはうつぶせでじたばたしている。

「タスケテー」

「だから、転ばせたらだめって言ってるでしょ」

「しょうがないですね」

 トリゴエがオンボロイドン・プロトを起こしてあげた。

「ありがたい紳士なの。ちゃんとお礼を言ってね」

「アリガトウ」

 オンボロイドン・プロトは礼儀を欠かさない。これもAI学習のたまものだ。


「あのー、ひとつお願いなの。せめて一撃だけでもいいから、攻撃を当てさせてやってほしいの」

 オンボ博士のお願いを聞いた仲間たちは、一斉にモモガワの方を見た。

「なんてこういうときだけオレなんだよ」

 モモガワはグチを言いながらも、オンボロイドン・プロトの前に行った。


「ヤレー! オンボロイドン・プロト!」

 オンボ博士の命令を受けたオンボロイドン・プロトは、ゴールデン・ハリセン(グラディウス)をモモガワの頭に勢いよく振り下ろした。

 スパーンといい音が鳴った。

 モモガワは思った。だからなんだよ。モモガワはイラッとして、オンボロイドン・プロトを蹴り倒した。

 オンボロイドン・プロトはあおむけでじたばたしている。

「タスケテー」

「もう1回、起こしてやってくれ。トリの紳士さん」


「しょうがないですね。サンダー!」

 トリゴエが杖を掲げて言った。

 オンボロイドン・プロトは、トリゴエの初級魔法一撃で動かなくなった。


「アチャー、だから雷はダメって言ったじゃないの」

「3回も起こすのは面倒です。戦いになりません。もう少しちゃんと調整してから出直してください」

 トリゴエは的確な指摘をした。


「うーん。言うとおりなの。それじゃあ、今回はこれで帰るの。はいこれ。いらないからあげる」

 モモガワは、オンボ博士からゴールデン・ハリセン(グラディウス)を手に入れた。

 オンボ博士はオンボロイドン・プロトを背負って帰っていった。


 ゴールデン・ハリセン(グラディウス)を手に入れたモモガワは、上に掲げて決めポーズをした。

 しかし、ゴールデン・ハリセン(グラディウス)は光の粒となって消えてしまった。


「あれ? 消えちゃったんだけど」

「おかしいねー」

「ロボットが持っていたときは、何もなかったのにな」

「何だったのでしょう。詳しく調べるにも、消えてしまっては調べようがありませんね」

 こんなことは初めてなので、モモガワも仲間も困惑した。


「どのみちダサいから使わないし。べつにいらないし」

 モモガワは、気にしてないそぶりで言った。珍しいものだったので、コレクターとしては少し残念だと本当は思っていた。



 町に戻り、海浜公園のカフェで休んでいると、『フォークジャンボリー・イン・海浜公園屋外ステージ』という壁のポスターを見つけた。開催は2日後だ。

 モモガワはスマホでイベント会社の窓口へ問い合わせてみた。チケットは売り切れだと言われ、まったく取り合ってくれなかった。

 しかし、イベント好きなモモガワは諦めきれない。

 屋外ステージまで行き、準備中の会場をウロウロして、偉そうな人がいないか片っ端から声をかけていった。


 粘り強く聞き込みをしていると、イベントプロデューサーの、フェスニ・イッテミーヤと名乗る人物に遭遇した。

 モモガワは、この機会を逃してはならないと直談判をした。長々と熱い思いをぶつけた。

 イッテミーヤは、最初は面倒くさそうに聞いていたが、モモガワが勇者だとわかると、態度が低姿勢に変わった。

「ここだけの秘密だけど、VIP用特別席がある」

 とイッテミーヤが教えてくれた。さらに、今回は特別に、勇者特権でVIPチケット4人分を無料でくれることになった。


 無事チケットをゲットしたモモガワたちは、海浜公園に併設されている海辺のオートキャンプ場で、フォークジャンボリー開催まで滞在することにした。


 モモガワはさっそくSNSに投稿した。

『フォークジャンボリーがあるから、開催までシオサイン海浜公園キャンプ場に滞在する予定。チケットは、勇者って言ったらVIP席が取れた。しかもタダ。ラッキー。チョー楽しみ。

 ちなみに、今日のディナーは海鮮バーベキューをエンジョイしまくりヒアウィゴーだぜ』

 この書き込みを見たフォロワーたちから『VIP席が簡単にもらえるなんて、上級国民だけズルい』と炎上したが、モモガワはまったく気にしていない。スルースキルが高かった。


 ちなみに、今回の動画が『ガンバレ勇者さん』にアップされたあと、道具屋などの業者からグビグビドリンコにイカコーラの注文が殺到したらしい。

 屈強なゴリラを一瞬にしてステータス異常イカにした威力が、強力な戦闘アイテムとして評価されたようだ。

 勇者審議会公式チャンネル『ガンバレ勇者さん』の動画は、勇者の動向を知ることができるだけでなく、武器やアイテムがバカ売れするきっかけにもなるので、経済界からも注目されているようだ。




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