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第70話 荒野

 前方に何かが見えてきた。赤くてとても大きい。

 近づくにつれ、形がはっきりしてきた。燃えるような赤色の大きなトリのモンスターだ。


 モンスターに見つからないよう、近くの岩陰に身を隠す。

 どうやら巣で休んでいるところのようだ。クグたちの方角からだと、ちょうど背中を向けている。

 全長は10ミーターほど。翼を広げた大きさは、ゆうに30ミーターを超えるだろう。長い尾羽が特徴的だ。


 ドンナモンド・レーダーが反応している位置と、前回のゲンブルの件を考慮すると、今回もモンスターの中にドンナモンドがあることは間違いない。


 岩陰に身をかがめシラベイザーでチェックする。

『巨鳥「スザクス」。火属性。燃えるような赤い鳥。戦闘態勢に入ると全身に炎をまとう。火属性の攻撃が効かないのはもちろん、高レベルの水属性の攻撃でなければ、まとった炎でかき消されてしまう。羽ばたけば熱波が襲い、口から強力な炎の玉も出す』


 ゲンブルに続き、このモンスターもかなり手ごわそうだ。普通の冒険者ではまずかなわないだろう。

「調べ終えたから帰るぞ」

「戦わないんすか?」

「ゲンブルでは手も足も出なかったのを忘れたのか? 勇者が倒すんだから、戦う必要がない」


 クグは帰ろうと立ちあがる。

「なにしてんのよあんたたち」

「何って、シラベイザーで――」

 クグは不意に後ろから話しかけられ、言いながら振り返った。見覚えのある3人組が立っている。チョコレイツだ。

 ゲンブルの衝撃波で飛んでいってお星さまになったと思ったが、無事だったようだ。


「なんでお前らがこんなところにいるんだ?」

「それはこっちのセリフよ、なんであたしたちの行く先々に、あんたたちがいるのよ」

 ミルクは不満そうに言った。


「知るか。好きで先回りなんかするか。こっちは暇じゃない。もう用事が済んだから帰るところだ」

「獲物を前にして逃げ帰るなんてモブらしいですわ」

 ホワイトは高圧的だ。


「獲物? なんのことだ」

「火の鳥の羽根が激レアアイテムなの知らないの?」

「倒せば、一躍有名冒険者の仲間入りなのですわ」

「1本たりとも渡さねえ」


 スザクスを倒そうとでもいうのか。結晶石ドンナモンドを持っているので、勇者レベルでないとかなうわけがない。


「いらない。そんな危険な思いまでして入手してもうれしくない」

「じゃあなんでこんなところにいるのよ。どうせ横取りでもしようと企んでいるんじゃないの?」

「わたくしたちをだまそうとしてもムダですわよ」

「人としてカス」

 またもや、まだ何もしていないのに、腹黒い冒険者に仕立て上げられた。


「そんなの興味ないから、勝手にやってくれ」

「言ってくれるじゃない。あたしたちの実力を見せつけてやるわ。行くよ、ホワイト、ビター」


 ミルクのかけ声とともに、3人はスザクスの方へ駆けていった。ゲンブルで痛い目にあったにもかかわらず、懲りない人たちだ。


 戦いを挑む3人に気づいたスザクスが立ちあがり向き直った。翼を広げ威嚇のポーズをとると炎が全身を包んだ。足元には大人の人間の大きさほどの卵が1個ある。休んでいたのではなく、卵を守っていたようだ。

 チョコレイツの3人は、そんなことも気にせず攻撃を開始した。


「シャイニングスピア!」

 ミルクの先制攻撃だ。高く投げた槍が、光り輝く3本の槍になりスザクスへ降りかかる。

 スザクスは右の翼で頭をガードし攻撃を難なく防いだ。


「アイスストーム!」

 続けざまにホワイトが魔法を放つ。冷気の嵐がスザクスを襲う。

 スザクスは左の翼を軽くあおぎ、冷気の嵐を難なくかき消した。


「ボーンクラーッシュ!」

 近くまで接近していたビターがハンマーを振り下ろした。

 スザクスは蹴りで相殺した。


「ちょっとストップや!」

 ビターが言うと、ゆっくり歩いてミルクとホワイトの方に戻ってきた。


「アカン」

「え? ナニが?」

 ミルクが聞いた。

「いや。だから。ムリ」

「それは、どういうことですの?」

「めっちゃ手がシビれてんねん。あんなイカツイ攻撃、何発も耐えられへんて。腕がもげるて」


「腕の1本や2本、もげちゃっても大丈夫ですわよ」

「アホ言え。腕は2本しかあれへんちゅーねん」

 ホワイトは相変わらず言うことがブラックだ。


「でもたしかに、あたしの渾身のシャイニングスピアーが簡単に防がれちゃったし」

「わたくしのアイスストームも防がれてしまいましたわ」


「おーい。そんなとこで話し合いしてたら――」

 クグの忠告が届く前に、スザクスは3人を翼で思いっきりはたいた。ペシッという音とともに、3人ははるか空の彼方へ飛んでいきキラーンと光った。きっとお星さまになったのだろう。これで2回目だ。あの3人は何をしに来たのだろうか。


「しまった。3人が戦っている間に逃げればよかった。私としたことが」

「明らかに怒ってるっすね」

 スザクスはクグたちに狙いを定めてきた。とんだとばっちりだ。3人がいなかったら、じっとしているところを調べて何事もなく帰ることができたはずだった。これも2回目だ。


 スザクスは翼を広げて猛スピードでクグたちの方へ走ってきた。

「ヤバい。逃げるぞ!」

 クグのかけ声のほうが先か後か、2人はダッシュで逃げる。


 逃げながら後ろをチラッと見ると、スザクスは激しく首を前後に振りながら追いかけてくる。しかし、走るのがあまり得意ではないようで、距離は縮まらない。

 このままライドドラゴンの所まで戻ることができれば、逃げ切れるかもしれない。ライドドラゴンのダッシュの方がダンゼン速い。


 スザクスが口から炎の玉を吐いてきた。距離を縮められないよう、左右へ蛇行してよけながら走る。


「これでもくらえっす」

 ゼタが直径30センチほどの筋肉圧縮魔法(マジッスル)を放った。

 魔法がさく裂する前に、スザクスが魔法の玉を食べてしまった。スザクスは炎の玉を放ってこなくなったが、追いかけてくる。

 ゼタは連続で3発の筋肉圧縮魔法(マジッスル)を放った。

 スザクスは放たれた魔法の玉をすべて食べ、ゲップをした。

 クグは、襲われているというより、もっとくれと追いかけられているような気がした。


 ライドドラゴンから降りた場所が見えてきたが、肝心のライドドラゴンがいない。危険を察知して勝手に戻ってしまったようだ。ピンチだ!


 クグたちを飛び越えたスザクスが、進行方向に着地した。逃げ道を塞がれた。さらにピンチだ!

 90度方向転換して逃げる。しつこくスザクスが追ってくる。


 つかず離れず走っていると、行く先には地面が見えない。崖だ。崖が徐々に迫ってきた。


「どうするっすか? ガケっすよ!」


 クグは迷っていた。このままぐるぐる走り回っても埒が明かない。いずれ先にこちらの体力が尽きてしまう。

 一気に辻の駅まで戻る方法といったら、テポトしかない。しかし普通のテポトでは、飛び出す前のタイミングで捕まってしまうかもしれない。

 確実に逃げ切るためには、急激に飛び出せるゼタのテポトしかない。しかし、あんな強烈な衝撃の着地など、1日に2回もするものではない。

 それに、この非常時ならばさらに衝撃が強くなるかもしれない。そうなれば足が折れるか、膝軟骨が一瞬で吹き飛ぶのは確実だ。

 自分の体をいたわりたいが、命の方が最優先だ。クグは決心した。


「このまま崖まで走る!」

「落ちるっすよ」

「いいから聞け! 崖に飛び出した瞬間、全力でテポトをかけろ!」

「やったー! いいんすか?」

「とにかく、タイミングだけは間違えるなよ!」

「うっす!」


 ラストスパートをかけ崖へ飛び出す。クグは同時に、道具袋から出しておいた、空気で膨らむダミー人形を2つ投げた。ボンッとダミー人形が一瞬で膨らむ音がした。


 その瞬間、ゼタのテポトが発動し急激に体が上昇した。クグは激烈テポトで飛びながら、視界の端で下を見る。崖を落ちていくダミー人形が、スザクスにつつかれて割れるのが見えた。

 ダミー人形につられたスザクスはクグたちの方には来ない。助かったようだ。

 いや、まだ助かっていない。体が急降下をはじめた。斜め一直線に辻の駅が近づいてくる。

 前回のテポトよりスピードが増している。このスピードなら着地で足の骨が粉々になる。着地に失敗すると死ぬ。防御力アップ魔法カタインをかけておけばよかった。いや、石化魔法イシナルンのほうがよかっただろうか。しかしそんなことを考えてももう遅い。地面はすぐそこだ。


 チクショー、こうなったら公務員魂で乗り切ってやる。クグは心の中で叫んだ。気合を入れて、いつでも着地の衝撃に踏ん張れるよう、万全の着地体制で構えた。


 次の瞬間、地面まであと50センチのところでピタッと止まり、クグは踏ん張る体勢のままゆっくり着地した。

「……」

「……」

 そのまま無言の間が過ぎる。


「プッ。なにひとりで踏ん張ってるんすか。ププッ」

 ゼタは普通のテポトのときのように、力まず普通に立っている。


 ゼタにしか見られていないとはいえ、クグはこの体勢でゆっくり着地したことが恥ずかしかった。

 文句のひとつも言いたかったが、ここで怒ると大人気ないし、話が長引けばいつまでもいじられることになるので、話題をすり替えたほうがいい。

 クグは体勢を戻すと、

「オ、オホン。ちゃ、着地は成功したようだな。ゼタ君、今後も精進するように」

 ちょっと偉ぶって言ってみたが、全然挽回できなかった。



 気を取り直し、任務を再開しようとクグは周りを見渡すが、遠くに辻の駅が見える。座標がズレすぎなのは相変わらずだ。


 近くにそびえ立つ赤い土の壁に、ぽっかりと穴が空いているのが見えた。洞窟の入り口のようだ。

 近くへ行って見てみると、入り口のすぐ脇に『株式会社魔王シュテン堂 ゼッケーナ支社』と社名プレートが貼ってある。ここは洞窟ホテルのある場所ではないので、ただの洞窟のはずだ。


「この社名ってチューリッツのときと同じだよな。あの5人が移転して来ているということか?」

 たしか、チーム・スッキャキとかいう名前だった。


「豆大福をくれた人っすね」

「今回は洞窟内を事務所(アジト)にしたんだな」

「秘密基地っぽくていいっすね」

「普通、魔族は人間からバレないようにするから、常に秘密基地である必要があると思うのだが」

 わざわざ社名プレートを貼っていたら秘密にならない。


 そんなことを話しているクグたちの横を、数人の人たちがぞろぞろと洞窟へと入っていく。チーム・スッキャキの人たちではない。5人の女性魔族だ。

 クグたちは入り口のすぐ近くにいたのに、気にする様子もなく洞窟へと消えていった。まったくもって無視だ。


「前回の5人と違う人たちだったな」

「別のチームっすかね」

「そうかもしれないし、同じチームで、まだ会ったことがないメンバーかもしれない」

「さっさと直接聞けばいいんすよ」


 ゼタはズカズカと洞窟へと入っていった。クグは後ろからついていく。

 洞窟内の通路は明るい。魔道具の照明機器が等間隔で天井につけられ、照明魔法がかけられていなくても十分な明るさになっている。

 地面は平らにならされ、洞窟ならではの歩きにくさがない。

 通路から広いところへ出た。


「何者だ!」

 ビキニアーマーを着た魔族の女性が剣を振りかざし、斬りかかってきた。

 ゼタはメイスでとっさに受け止める。


「スミマセン。私たちは勇者部の者です」

 クグは慌ててスマホを取り出し、名刺を差し出した。

 女性は剣を下ろし、名刺をまじまじと見る。


「これは失礼。接客が面倒くさいから、とりあえず斬りつけて、生き残った人だけ対応することにしてるんだ」

 女性は剣をしまいながら言った。


「積極的というか、フレンドリーというか、アグレッシブすぎるというか……」

 斬りつけるほうが面倒なのではとクグは思ったが、言えなかった。


「話し合うより、剣を交えた方が早く分かり合えるだろ」

「それ、なんとなくわかるっす」

 どうやら、脳筋と波長が合うようだ。


「急に押しかけてしまって申し訳ございません。チーム・スッキャキの方でよろしかったでしょうか?」

「いや、あたいたちはチーム・オーデーンだよ」


「違うチームの方でしたか。実は、チューリッツの町でチーム・スッキャキの方たちとお仕事の話をさせていただいたので、今回もお話ができるかと思いまして」


「そうそう、チーム・スッキャキから業務連絡が来てて、勇者部企画課の人には勇者の件でとってもお世話になったから、ちゃんと応対するようにって」

「そうだったんですか」

「安そうな装備の冒険者っぽい2人組みが目印だったかな。うん、そのとおりだな」

 初対面なのに言われたい放題なので少し失礼だとクグは思ったが、言えなかった。


 チーム・オーデーンの方々と名刺交換をすることになった。

 ビキニアーマーを着ている筋肉女子、デーコンヌ。自慢は、見事なまでのシックスパックの腹筋だ。腰に手を当て、腹筋をアピールした。ここまで鍛えるのはなかなか大変だろうとクグは思った。


 茶髪お団子ヘアのツクネリエル。オフショルダーの花柄ワンピース。自慢はやっぱりお団子ヘア。広げた両手をあごにもってきて、上目づかいでおだんごヘアを微アピールした。クグはちょっとあざといなと思った。


 ゆるふわウェーブヘアのコンニャコチェ。全体的にゆったりとしたシルエットのコーデ。モヘヤタッチのニットカーディガンにチュールスカート。うるつやヘアが自慢らしい。何の脈絡もなくガオガオポーズをした。天然系なのか計算なのかクグにはわからない。


 ショートヘアのタマゴリー。パンツスタイルでリブキャミソールのへそ出しコーデ。オーバーサイズのシャツを羽織っている。スベスベ美肌が自慢らしい。腕を組んで斜めに構えるシンプルなポーズだ。クグは魔族の美肌がよくわからない以前に、人間の女性の美肌もよくわかっていない。


 モチキンチヤはドライなロングヘアー。頭にはカンピョウ色の紐状のヘアバンド。エスニック柄のカフタンチュニック、ベルボトムパンツ。ボヘミアンなライフスタイルが自慢らしい。ライフスタイルを自慢してくるタイプの人なんだ、とクグは思った。


 デーコンヌの名刺には『株式会社魔王シュテン堂 事業推進部総合リサーチ課』という社名・部署名と共に、『チーム・オーデーン リーダー』と肩書がある。

 チーム・スッキャキと同じ部署だ。目的は同じだと思われる。


 クグたちは応接テーブルに案内された。魔族と直接交渉するのはこれで2回目だ。

 クグは座って待っている間、室内を見渡し様子をうかがう。洞窟ホテルのように、壁や天井から十分な明かりがあり、室温は常に一定なので、思っていたより過ごしやすそうだ。

 しかし、整理整頓はされておらず、机の上や床に書類が散らばっている。片付けは苦手なようだ。


 デーコンヌとツクネリエルが、お茶を持ってやって来た。お茶は出たが、お茶うけのお菓子はない。

「チューリッツのときは豆大福を出してもらったんすけど」

「こら。はしたないことを言うんじゃない」

「魔王様から送ってもらった豆大福の差し入れなど、あたいらの手にかかれば一瞬でなくなる!」

 デーコンヌは高らかに言った。

「女子が甘いものを残すなんてないよねー」

 ツクネリエルも笑顔で同意した。

「というわけで、客人は『そばぼうろ』でもお食べ」

 デーコンヌが、そばぼうろの入った菓子鉢をテーブルの真ん中に置いた。

「『極悪堂』っていう魔界の菓子屋の銘菓だから、ふつーにおいしいよ」

 ツクネリエルは笑顔で説明した。


 ゼタは遠慮することなく、そばぼうろを食べはじめた。

 クグはゼタを無視して話をすすめる。


「まず、勇者の行動予定を説明します。ダンケでのイベントを終えるとサンクへ向かうことになります。ここへは必ず寄ることになりますが、よろしかったでしょうか?」

「確認なのだが、返り討ちにしても構わないんだよな」

「はい。構いません。しかし、勇者なのでめちゃくちゃ強いですけど、大丈夫ですか?」

「あたい1人で倒せるから心配ないぞ」

 デーコンヌは自信たっぷりだ。


「なんのはなしー? わたしもいれてー」

 コンニャコチェが横から入ってきた。

「おまえは来なくていい」

 デーコンヌは冷たく言った。

「えー、いいじゃん。あ、そばぼうろがある! わたしもたべるー」

 コンニャコチェはデーコンヌの言うことなどかまわず、空いた席に座ってゼタとそばぼうろを食べだした。

 クグはせき払いをして話を戻す。


「戦闘に関しては、みなさんそれで大丈夫ですか?」

「戦闘は任せてるから、それでいいんじゃない」

 ツクネリエルはあまり興味がなさそうだ。

「うーん、わかんなーい」

 コンニャコチェは、たぶん何も考えていないのだろう。しかし、天然を装っている、いわゆる養殖かもしれないとクグは一瞬思った。そんなことを考えている場合ではない。


「戦闘の前に、勇者と自然な感じで遭遇しないといけないのですが、何か良い案はありますか?」

「ビジターセンターと辻の駅しかないから、こっちから勇者を見つけるのは簡単だけど、どうしたらいいかなー」

 ツクネリエルは、人差し指をあごに添えて頬を膨らませた。クグはあざといなと思った。


「見つけしだい、いきなり戦闘でいいな」

 デーコンヌは好戦的だ。

「手っ取り早くて、ナイスアイデアっすね」

「どこがだ。それはちょっと困ります。お店の中だと、一般のお客さんの迷惑にもなりますので」

 勇者がSNSで炎上しそうな行動をするのはイメージ的によくないので、避けなければならない。『勇者が店内で戦いだしたんだけど。マジ迷惑』と拡散されてしまう。


「戦ったら、どこにいたって目立つもんだろ」

 デーコンヌは納得いっていない様子だ。

「目立つのはいいのですが、どうせならどちらも周りからいい感じに見えたほうが、お互いやりがいがあると思いますけど」

「なんか、見せ物みたいな言い方っすね」

「勇者の戦いなんて、見せ物みたいなもんだろ」

 クグは初めて勇者部の仕事を知ったとき、勇者に対して少なからず幻滅をしたが、今では、いかに勇者らしく見えるようにするのかが仕事のやりがいになっている。


「だったら、ビジターセンターの屋外イベント広場を使えば、目立つし派手にできそう」

 ツクネリエルが手のひらををポンとたたきながら言った。

「うーん、よくわかんなーい」

 クグは、コンニャコチェが天然なのか養殖なのかわからなくなってきた。頭が弱い可能性も出てきたからだ。しかし、そんなことを考えている場合ではない。


「では、その案で進めていただいてよろしいでしょうか。後日、担当がうかがいますので、詳細はそのときに詰めていただきます」

「じゃあ、大筋はこっちで考えておくね」

 ツクネリエルはウインクしながら言った。クグはあざといなと思いながらも、なんとか話が進んで一安心だ。


「最後にもうひとつ確認です。チーム・スッキャキの方は、サプライズでロキという強敵を用意していたのですが、こちらでも何かサプライズを用意していただけると助かります」


「いいなー。ロキさま呼んだんだ。うらやましー」

 ツクネリエルは、人差し指をあごに添えて言った。

「うちもロキさまにしよーよ」

 コンニャコチェは、そばぼうろをつまみながら言った。

「いいけど、イケメンすぎてみんな舞い上がっちゃって、勇者どころじゃなくなっちゃうね」

「勇者なんてほったらかしでもいいじゃん」

 ツクネリエルとコンニャコチェは、ロキの話に夢中だ。話を聞いていたタマゴリーとモチキンチヤもやってきた。

「なになにー、ロキさま呼ぶの? イケメンすぎて、わたし直視できないかも」

 タマゴリーはウキウキだ。

「わたしはべつに、イケメンとか気にしないし。でも、ロキさまがイヤってわけじゃないから、べつに呼べばいいと思うし」

 モチキンチヤはいわゆるツンデレなのだろうか。それとも、これがボヘミアンなライフスタイルというものなのだろうか。クグにはよくわからない。


「ロキのような軟弱なヤツは却下!」

 デーコンヌは、イケメンには関心がないようだ。

 みんなは会話が強制終了になり、言葉が出てこない。


「サプライズなんてなくても倒せるが、万が一のときのために強敵を用意しておくんで、心配するな」

 デーコンヌは自信たっぷりだ。


 具体的なことが決まったような、決まってないような、とにかく話がまとまったので、打ち合わせは終了となった。

 帰る前に、チーム・オーデーンメンバーをシラベイザーでスキャンさせてもらい、5人の集合写真も忘れずに撮る。それぞれ名刺交換のときにした、お決まりのポーズの集合写真だ。


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