第69話 土の神殿
勇者が土のドンナモンドを手に入れたら、土の神殿で土の精霊の加護を受けることになる。
シュトジャネから北東に位置する鉱山の町マイニグは、オヤンマ山のふもとにある。ここから交走式ロープウェイで土の神殿へと行くことができる。徒歩で登る場合はハイキングコースがあり、コースタイムは1時間だ。
豪華な石造りの神殿は観光スポットになっているので、いつも観光客でにぎわっている。
広い神殿の中央には、装飾の施された台座の上に土のクリスタルが鎮座している。
高さ3ミートル、直径1ミートルほどの大きさで、神聖な光を放っているさまは、まさに威風堂々と言うにふさわしい。
クリスタルに向かって行列が続いている。拝観料を払うとクリスタルにさわることができるので並んでいる人たちだ。
クリスタルの近くに、ウマに乗ったまま神殿へ入ってきている人がいる。クグは失礼だと思いながらよく見ると人間ではない。魔族だ。
毛づやのよい立派な白いウマにまたがった2ミーターほどの男性で、白いレザージャケット・レザーパンツを着ている。ゴテゴテした装飾がされており、よく見ると素肌にジャケットでムキムキだ。背中の部分にはドクロの模様が入っている。髪型はシルバーのモヒカンだ。
ウマに乗っているので騎士なのかもしれないが、騎士というよりハードなノリの音楽をやっている人に見えなくもない。
行列には並ばず、クリスタルを横から見ながらスマホを操作している。
神官や巫女たちもさすがに魔族に注意をすることはできないのだろう。
クグは背後から近づき、思い切って話しかけた。
「あのー、何をされているのですか?」
「めっちゃアヤシイっすね」
ウマにまたがったまま魔族の男性は振り返った。
「某は厄災の四騎士のひとりホワイトライダーと申します。魔王様より勇者を倒す役を仰せつかりました。そろそろ勇者が来るかと思い、事前に調査をしているところです。ゆえに、決して怪しい者ではございません」
その理由で来ていること自体が人間側からしたら十分に怪しい、とクグはつっこみそうになるのをぐっとこらえた。しかし、魔族側からすれば正当な理由なので、怪しくないというのも一理あると思った。
どちらにせよ、見た目に反して嫌がりもせず律儀に話してくれたので、話が通じるタイプの魔族のようだ。
「私は『週刊勇者タイムス』の記者で、魔族担当のヌルムギチャ・マズッソと申します。人間界で活動されている魔族の方を取材しておりまして、お話を伺ってもよろしいでしょうか」
「どうぞ」
「どうしてクリスタルを調べているのですか?」
「魔王様から、勇者を倒したあとクリスタルを奪うよう仰せつかっております。ゆえに、スマホで3次元点群データとしてスキャンし、大きさを計測しております」
そんな重要なことを簡単にしゃべってしまって大丈夫なのだろうかと思ったが、クグとしては情報が手に入ったのでありがたい。
「それはご苦労さまです。でも、クリスタルが欲しいのなら、勇者がいない今のうちに奪ってしまわないのですか?」
「勇者が来てからです。こちらとしましては倒してから奪う、という流れを考えております」
律義だ。騎士道精神というものだろうか。
「勇者は強いと思いますが、倒せそうですか?」
クグの質問を聞いたホワイトライダーは右手を手前にかざした。右手の前に黒い円ができ、中から大きな弓が出てきた。
「この大弓で射抜いてやります。地獄の四天使の異名で魔族からも恐れられておりますゆえ、大いに自信ありです」
「すごい弓ですね。どんな矢を使っているのですか?」
「魔力で生成した矢を使っておりますゆえ、魔力が尽きないかぎりいつまでも射ることができます。さらに、各種属性や状態異常を自由に付与できます。ゆえに、某の勝利は決まったも同然です」
なかなか手ごわそうだ。手の内を簡単に明かしてしまって大丈夫なのだろうか。それだけの自信があるということだろう。
「勇者はきっと苦戦するでしょうね。ところで、なぜクリスタルを奪おうとしているのですか?」
「それは言えません。というか、正直なところ、よく知らされておりません」
さすがにここは口が堅い。知らないと言われた以上、聞きようがない。
「記念に、シラベイザーでスキャンさせてもらってもいいですか?」
「どうぞ」
ホワイトライダーはウマにまたがったまま大弓を構えてポーズした。クグはスマホでスキャンし終えると、礼を言ってその場を後にした。
神殿の巫女に勇者が来ることを伝えるため社務所へ行く。これが神殿へ来た目的だ。
「わざわざ伝えなくてもいいんじゃないっすか。勇者なんだから、ほかっといても勝手にやってとっとと帰るっしょ」
「もう魔族が来てただろ。事前にいろいろと準備が必要なんだ」
担当の巫女が出てきてくれた。
「勇者部の者ですが。勇者が加護を受けに来ると思いますので、今回もよろしくお願いします。あと、魔族の人が来てますけど、大丈夫でしたか?」
「はい。あの方でしたら、クリスタルを調べていいか許可を取りにこちらまでいらっしゃいました」
「それでどうされました?」
「ほかのお客さんに迷惑がかからないように、それから壊さないように、という注意点だけ伝えておきました」
「それで、注意事項を守って事前調査をしていたということですね」
魔族のくせに律義すぎる。しかし、ウマごと入ってくること自体が失礼だという感覚は欠如しているようだ。
「あと、勇者がいつごろ来そうか聞かれましたので、わたくしどもではわかりかねますと答えておきました」
「状況はわかりました。万が一のため、クリスタルの在庫は大丈夫でしょうか」
「問題ありません」
「在庫ってなんすか?」
「たくさんの観光客の方々がクリスタルに触れるので、消耗が激しいんです。なかには削ってカケラを持って帰ろうとする人もいるんですよ。そうしている間に商品としてダメになってしまうので、消耗具合をみて随時交換しているんです。そのため常にスペアの在庫は切らさないように管理しているんです」
「勇者が勝てば魔族はクリスタルを奪えなくなる。強行策で破壊してくるかもしれないだろ」
「ちなみに、クリスタルの製造をしているサバカリキラメケリー社から納品しているんですよ」
「神聖ってなんなんすかね」
ゼタにしてはまともな疑問だ。
「わたくしたち人間の信じる心ではないでしょうか」
巫女は笑顔で答えた。
結局は、どんなものでもその人が心から信じるかどうかだ。
勇者を英雄視している人たちが勇者部という裏側を知ってしまえば、英雄という定義に疑問を感じてしまうだろう。
同じように、クリスタルの製造元を知ってしまえば、神聖さが薄れてしまう。
しかし、知っても知らなくても事実が変わることはない。
「ということは、やっぱり筋肉を信じればいいんすね」
なぜそこで筋肉になってしまうのか。いや、信じるものが人それぞれ自由なら、ゼタにとって筋肉が信仰でもいいことになる。筋肉は裏切らないのだった。クグは何がなんだかわからなくなってきた。
任務を終えたので、拝観料を払い行列に並ぶ。
「すっごい並んでるっすね」
「神聖なクリスタルにさわれるからな」
「加護なんて受けられないのに、なんで並んでまで触りたいんすかね」
「それはやっぱり、なんとなくご利益があるからだろ。いわゆるパワースポットというやつだ」
「マッチョだらけのトレーニングジムも、いろんなマッチョのパワーを感じるスポットっすけど」
「そういうパワーのスポットではない」
マッチョなおじさんたちの暑苦しいパワーなど感じてもうれしくない。クグは想像したくもなかったのに、トレーニングジムでポージングしている暑苦しいマッチョに囲まれるのを想像してしまい、激しい胸焼けを覚えた。
「じゃあ俺たちが並んでも意味ないっすよね」
ゼタのの言うとおりだ。クグは先代勇者の支援のときに来ているし、何回もさわったところで何も起きない。
「カナリーからもらった勾玉のネックレスがあっただろ」
「補助魔法の効果がなくなるとかいうやつっすよね」
「彼女の言ったとおり、勾玉に四大精霊の力を入れられるのかやってみようと思ってな」
「できたところで地味だし、実用性がなくないっすか?」
「効果はともかく、何も効果がないままより、やるだけやっておいても損はないだろ」
そんなことを話している間に順番が来た。クリスタルの周りにはもうホワイトライダーと名乗る魔族は見当たらない。調査を終え帰ったのだろう。
クグはクリスタルにカナリーからもらった勾玉のネックレスをかざす。灰色だった勾玉が光り、透き通った薄茶色になった。
ゼタは色の変わった自分の勾玉をまじまじと見ている。
「まず1つっすね。まだあと3つもあるっす。当分、ムリっすね」
「焦っても仕方がない。気長にいくぞ」
帰り際に、売店をのぞいていく。
土の神殿ガイドブックや各種お菓子のほかに、御朱印帳やミニサイズの土のクリスタルも売られている。
ミニクリスタルは神殿に飾られているのと同じデザインだが、こちらは精霊の力が入っていないただ薄茶色に着色したものだ。これもサバカリキラメケリー社のものだろう。4つのミニクリスタルを入れて飾ることができる透明のケースも売られている。
売店をまわっていると、クグの視界に白いウマが入ってきた。
ホワイトライダーがウマにまたがったまま売店をうろついている。そして、手には御朱印帳を持っている。まだ帰っていなかった。
「先ほどはどうも。お土産を買われるのですか?」
クグはそれとなく聞いてみた。
「はい。どうせなら記念に御朱印をもらっておこうかと。勇者が来てしまったら御朱印どころではなくなってしまいますので。では某はこれにて」
ホワイトライダーは会計カウンターへと向かっていった。わざわざ御朱印をもらおうと思うとは律義だ。
神殿からオフィスへ戻ってくるなり、ブレイズンがクグのデスクまで来てぶしつけに聞いてきた。
「この『品代』という高額の領収書は何ですか?」
また領収書にケチをつけに来た。どうでもいいことにばかり首を突っ込んで業務の進行を遅らせ、肝心の仕事をしない。クグはイライラしつつも丁寧に答えた。
「情報屋から、商品を買った見返りにエクスカリバーの情報を得られる、ということで買ったものです」
「その品はどうしたのですか?」
「ゴリラを転送するのに使いました」
「ゴリラを転送するのは任務には入りません」
「ゴリラを転送しなきゃ、ワーリザードの村の金のピコピコハンマーの調査ができなかったんだからしょうがないでしょ」
「しょうがなくありません」
「ゼタも何か言ってくれ」
「ついでにカッパも転送したっす」
「カッパ? なんですかそれは?」
話をこじらせるんじゃない。クグは、ゼタに話を振るのではなかったと後悔した。
「とにかく、私だって好き好んでゴリラとカッパを転送なんかしませんよ。緊急事態だったんです。それに買ったのは情報なのだから、何に使おうが問題ないはずです」
個人的なことに使ったわけでもないのだから、現場を知らない人にとやかく言われる筋合いはない。
「ゴリラだのカッパだの、そんな理由は通用しません。ダメと言ったらダメです」
「課長はなんて言っているんですか?」
「課長の前に、課長補佐であるボクが認めるかどうかです」
「課長がいいって言ったらどうするんですか?」
「そのときは課長に従うまでです」
「ここで話し合っていても平行線です。課長に聞きましょう」
クグはブレイズンと一緒にスタボーン課長へ聞きに行った。
金のピコピコハンマーは珍しいから入手するイベントをやるつもりなので、それに関する情報に支払ったのであれば許可する、ということで課長からあっさり認められた。
クグは胸をなで下ろした。危うく2万モスルも自腹を切るところだった。
翌日。次はダンケを出発し荒野を抜け、オトナリナの首都サンクへ向かう任務だ。
ひとまずダンケへ行くため、庁舎前広場でクグがテポトをかけようとしたらゼタが声をかけてきた。
「ひさしぶりにテポト使わせてくださいっすよ」
「ダメだ。足が死ぬる」
「ちゃんと力加減覚えたっすよ」
「本当か? いつもそう言ってだまされているのだが」
「今回は本当っすよ。だまされたと思ってやらせてくださいっすよ」
「しょうがないな。やってみろ」
クグは渋々承諾した。ここでやらせてちゃんと成功させ、ゼタに後輩ができたときにケガ人や死人がでないようにするのも、先輩の仕事だ。でないと将来、安心して現場を退くことができない。
「そんじゃあいくっすよ。なんか気合はいっちゃうな」
ゼタはそう言うと、メイスを構え力一杯振り下ろした。
その瞬間、恐ろしいほどの衝撃にクグは「ぐはあっ」と叫んでいた。力加減が前回とまったく変わっていない。また魂だけ置いていかれたかと思った。今回もだまされた。そんなことを思ってる場合ではない。もう着地だ。
クグは、今度は失敗しないよう、着地のタイミングにあわせて衝撃を吸収できるよう踏ん張る体勢をとる。
次の瞬間、着地の衝撃で砂埃がおきた。クグは「うっっっ」と声がもれた。足が地味にしびれているが、なんとか着地に成功した。
「どーっすか? 成功したっしょ」
「及第点だ」
「よっしゃー!」
「そっちではない。私の着地が及第点なだけだ。テポトは赤点だ」
「うまいこといったと思ったんすけどなー」
クグは思った。何をさせられているのだろうか。ゼタよ、頼むからおっさんをあまり乱暴に扱わないでくれ。
ゼタのテポトで足を粉砕骨折したら、休暇をもらってホスピに行こうと思った。いや違う。そうなる前に阻止しなければならない。
「フワッと上がって、ビューンと飛んで、フワッと降りる。フワッ、ビューン、フワッだ。わかったか?」
「グオーッと飛んで、ズドーンと着地のほうが、オモシロくないっすか」
「おもしろくなくていい。それだと普通の人は体がもたん。安全第一で頼む」
最初のイメージから間違っていたようだ。いくら練習しても改善しないはずだ。
ダンケから東へ、ワイルドッスキャニオンという荒野を越えることになる。さすがに歩いて荒野を渡るのは大変なので、今回もレンタルマクーターで行く。
荒野にもモンスターは出る。
転がって移動する草のモンスター『タンブルウィードタン』。『マジアルマジロ』は、いろんな属性の魔法を操るアルマジロのモンスターで、とにかく硬い。
しかし、マクーターに乗っているので、止まることなくモンスターをかわして進む。
いや、モンスターをかわすというより、あちこちに発射されるゼタの筋肉圧縮魔法がさく裂する中、爆風を避けながら進む。
いつからただの移動がこんなに危険になったのだろうか。
兜とゴーグルはつけているが、クグはいつ死んでもおかしくないと思いつつも、進むしか選択肢がなかった。ゼタよ、頼むからおっさんをあまり乱暴に扱わないでくれ。
中継地点のゼッケーナポイントという高台に着いた。眺望が絶景だということで有名な観光スポットだ。星空スポットとしても有名で、星空を見るツアーもあるらしい。
ワイルドッスキャニオン・ビジターセンターと展望台デッキがある。辻の駅『星の郷ゼッケーナ』もあるので、休憩をとることにする。
サンクから専用の往復バスが来ている。一般の人たちはバスで観光に来るようだ。洞窟を観光客が宿泊できるように改装した『洞窟ホテル』もある。
辻の駅では、『岩おかき』が有名だ。荒野の赤い岩をイメージしたゴツゴツしたおかきで、レッドペッパーがかかっておりピリ辛だ。
ビジターセンターと辻の駅をひととおり見てまわるが、とくに変わったところはないので外へ出た。
「あんなところにライドドラコンがいるっすけど、なんかの店っすか?」
ゼタが指した方を見ると、辻の駅の横に、発達した後ろ足で立つ小型のドラゴンが3頭つながれて並んでいる。背にはウマの鞍のようなものが乗っている。店の横には厩舎もあり、そこにも何頭かいる。
たしかにライドドラコンだ。小型といっても人を乗せて二足歩行で走ることができる大きさだ。
「レンタル・ライドドラゴンだな。借りて乗れるぞ」
「ウマじゃないんすね」
「ライドドラゴンは乾燥した荒野の環境に適応しているからな」
荒野や森など過酷な道を走るのが得意だ。
スピードもウマに引けを取らないくらい早い。雑食で気性はおとなしく、乗り物用に飼い慣らされているので、人を恐れたり襲ったりすることもない。ウマ同様、人懐っこいヤツもいる。
マクーターができる前からあるので信頼性も高い。それに、ターボはないがその分、魔力の消費もないのはありがたい。
しかし、マクーターのリースやレンタルが身近になるにつれ、乗れる施設が急速に減ってきている。
「学校時代に、乗る教習があったな」
「そーいえばあったっす。軍にもたしか騎馬隊だけじゃなくて、ライドドラゴンに乗って戦う部隊があったっす。かっちょいいなーって思ってたんすよね。マクーターは飽きたんで、乗り換えたいっす」
「飽きるの早っ。それはムリだ。ここで借りられるのは町までの移動用ではなく、ゼッケーナポイント一帯を散策するためのものだ。案内板の注意書きにもあるだろ」
店の前にある注意書きには、
『当店で貸し出しているライドドラゴンは、ゼッケーナポイントを散策するためのものであり、冒険用途ではお貸しすることはできません。万が一、危険を察知した場合は、真っ先に戻ってくるようにしつけてあります。お客さまがライドドラゴンから降りている最中に、ライドドラコンが何らかの危険を察知した場合、お客さまを残して勝手に戻ることもあるのでお気をつけください。また、上記事項に伴う事故や怪我、その他お客さまの損失につきましては保証できません。ご了承くださいますようお願い申し上げます』
とわかりやすく書いてある。
「ザンネンっす」
「せっかくだから、近くを散策しに乗るか」
「遊びで乗っていいんすか?」
「いや、遊びではない。ちょっと寄りたいところがある」
実はクグには、ここに来るまでに気になる場所があった。
小休止してスマホで道のりを確認しているときに、地図の表示範囲を広げて見ていたら、赤い丸印がついている地点があった。ドンナモンド・レーダーの反応で、火のドンナモンドがあるということだ。
ゼッケーナポイントから寄れそうな場所だったので、ここでの休憩のあとに行ってみようと思っていたところだった。
マクーターで行って調査中に盗まれたり壊されたりしたくないので、できれば安全な駐車場に置いておきたい。歩いていこうと思っていたが、これに乗れるならちょうどいい。
2頭レンタルし、スマホの地図で確認しながら進む。
「なんか雰囲気あるっすね」
ライドドラゴンで赤い荒野を進んでいると、いかにも冒険している感じがする。観光客に人気のアクティビティなのだろう。
徐々に地図の赤い丸印へ近づいている。岩場からドンナモンドが出てきているのか、それともどこかに洞窟があるのか。
ロープが張られ行き止まりになっている所まで来た。ライドドラゴンもここから先へは進もうとしない。どうやらこれ以上進まないようにしつけられているようだ。
「これ以上、行けないっすけど」
「まだ中間地点だな」
クグは地図を確認しながら言った。
「どうするっすか? このまま戻るっすか?」
「歩いていこう」
ライドドラゴンはしつけられているので、降りても勝手に戻って行くことはない。
注意書きの事項も守っているので、早めに調べて戻ってくれば問題ないだろう。
ローブを越えて荒野を歩いていく。




