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第0話 プロローグ

 これは、勇者部企画課総合戦略係で勇者支援という仕事をしているクグツィル・タナカッヒが体験した、今は亡き勇者フォールズ・ブライトをめぐる話である。


 彼にとっては、良い仕事をできたという思い出であると同時に、悪夢と言う以外に言いようのないおぞましい体験でもあった。


 彼は一連の仕事を終え、つい先ほど報告書をまとめ終えた。パソコンを前に、達成感とともに肩の荷が下りるのを感じた。

 ここに記された記録は国家機密として保存され、誰にも見られることなく忘れ去られるのか。

 それとも、いつの日か機密解除され、公開される時が来るのだろうか。


 もし、公開される日が訪れたときには、本当の意味での()()な世界であってほしい。彼は心の底からそう思った。


 しかし、今はまだその()が訪れることはないのを、彼はわかっている。生きている間は来ないかもしれないとも。

 しかし彼は、絶望しているわけではない。いつかきっと――100年後か200年後か、それとも1000年後なのか――その日が訪れると信じている。


 その日が訪れるまで、この報告書は日の目を見ることはないだろう。


 勇者は操り人形などではない。

 確固たる信念があり、意志をもった人である。尊厳をもった1人の人である。

 勇者フォールズには、彼なりの正義があり、絶望があり、そして、人々への希望があった。

 しかしそれが、人々が望まない最悪の結果を招くことになってしまったのは、不変の事実である。


 魔王が倒され当面は平和になったので、彼には今のところ急ぎの仕事はない。

 彼は、報告書に修正点がないか読み直すことにした。すぐに提出して、終えてしまうのが惜しい気持ちもあった。

 ファイルを開き、文字を追いながら、思い出す。

 ことの発端は、あの日からだ。


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