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お茶会

「毒なんか入れとらんから安心せい。」


「ありがとうございます。」


老人は、湯呑みのような器に入った飲み物を出してくれた。


「さて、何から聞けばよいのやら。」


「答えられる範囲なら何でもお答えします。その代わり私の質問にも答えていただけますか?」


「ほう、このわしに質問とな。面白い、よかろう。わしの名前は、アントニオ。おぬしの名は?」


「私の名前は、善です。」


「ゼンとな。魔族にしては珍しい名じゃな。」


「あ、私は人間なんですが…」


「何を今さら…それほどの力だ。さぞ名のある魔族なのだろう?」


「いえ、本当に人間なんです。」


「人間がここまでの力を持てるはずがなかろう。現にここに来る前に門番を倒したじゃろ?」


「広間にあったものですか?それなら動きませんでしたが…」


「反応せんかったじゃと!?魔族には必ず反応するように設定したはずなのじゃが…」


アントニオは整備不良か?などと、ブツブツと呟いている。


「反応しなかったことが、私が人間ということの証明になるのでは?」


「辻褄は合うな…よし、人間と仮定して話を進めるとするか。」


どうやら、まだ信じてくれてはいないらしい。


「先ほど、この森を通り抜けようとしていると言っておったが、この森をわざわざ通る目的はなんじゃ?普通は迂回していくじゃろ?」


「離れ離れになってしまった仲間と、いち早く合流するためです。」


「そうであったか。それでは、あまり長居はできんな…」


そう言うと、アントニオは少し寂しそうな目をした。アントニオは、ずっとここに一人でいるのだろう。


「わしばかり質問して悪かったな。さあ、わしに答えられることなら何でも教えてやろう。」


急がなければいけないが、俺はアントニオに少し興味が湧いてきた。

ここで一体何をしているのか。

そして、この世界についてどこまで知っているのかを。


「アントニオさんは、ここで何をされているのですか?」


「知的好奇心を満たすため、仲間の思いを叶えるためじゃな。」


「仲間の思いとは?」


アントニオは少し長くなるが、と前置きをして、話し始めた。

「わしの村は数十年前に魔族に襲われてなくなった。わしは命からがら逃げのびたが、同じ故郷の数人を除いて皆死んでしまった。わしらは復讐心に取り憑かれた。そして、仲間と共に旅を続け、この場所を見つけた。おぬしも見たと思うが、ここには見慣れぬものがたくさんある。それらを復讐のために何とか生かせないかと研究を続けていた。しかし…」


「ある日、わしが熱を出してしまってな。仲間の一人が近くの薬草を取ってくると言い、この洞窟の外に出たきり帰ってこんかった。きっと、魔族にでもやられたのじゃろう。残った仲間も病気や老衰によってこの世を去った。そして、最後に残ったのがわしということだ。」


「わしが仲間の思いを繋がなければならんのだ…しかし、研究を重ねるにつれて復讐心というものが段々と薄れてきてしまった。やはり、歳には勝てんのかのう。あの頃の復讐に燃えるわしはもうおらん。」


「研究というのは魔族についての研究ですか?」


「その通りじゃ。」


「魔族とは何ですか?」


「…はて、それは魔族という存在自体が何なのかを問うておるのだな?」


「はい。」


「魔族と人間は非常に近い見た目をしている者もいる。しかし、魔族と人間とは似て非なるものじゃ。何故なら奴らには心臓がない。」


「…心臓がない?」


「そうじゃ、心臓のようなポンプで全身に血液を循環させる必要がないのじゃろう。何かしらの方法で莫大なエネルギーを生み出し、動いているというわけじゃ。」


俺は、アントニオに砦での自分の変身について話をした。


「人間が魔族に変身とな…わしが知る限りでは聞いたことがないな。お主が元々魔族であるか、あるいはその姿は魔族のものではないかのどちらかじゃろう。」


俺は人間として生まれたはずだ。

しかし、俺は自分が思っているような存在ではないのかもしれない。


「その変身とやらは、自分の意思で出来るのか?」


「暴走してしまうと困るので、そのとき以来、試していません。」


「左様か…しかし、いずれはその力をコントロールせねばなるまい。己のためにもな。」


そう、俺はこの力をコントロールしなければならない。自分、そして周りのためにも。


「もう一つよろしいですか?」


「ああ、構わんぞ。」


「私はこの世界の人間ではありません。」


「…また不思議なことを言うものじゃな。」


「この奇妙な見た目の物に見覚えがあるんです。」


「ほう、それは真か?」


「はい、ちなみにこれはモニターといって電気を使って画面に映像が映し出すものです。そして、これは…」


俺は近くにある物を次々に説明していった。


アントニオは、俺の説明をじっと真剣に聞いていた。


たまに、そんな使い道だったのかと驚いている様子だったが、驚くことにほとんどの物の使い道を把握していた。


「フォッフォッフォッ、こんなに愉快なのは久しぶりじゃ。」


「私も懐かしい物がたくさんあって楽しかったです。」


「それでおぬしは、この世界の人間ではないと言っておったな。ゼン、元の世界に戻りたいのか?」


「はい。」


「そうか、ならばついてきなさい。役に立つかは分からんがの。」


アントニオはそう言うと、奥の部屋へと歩き出した。




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