ドラフト1位
装備を整えた後、会議室のような場所に部隊長達と共に集まり、作戦会議を行った。
目の前で、ああでもない、こうでもないと議論がされるかと思いきや、会議はすんなりと終わった。
まあ、話し込んでいる時間がないからだとは思うが。
当然、俺が口を挟むことはない。ただただ話を聞くのみだ。
エグリゴリはソフィアを団長として、第1から第5まで部隊で組織されており、パブロは第1部隊の部隊長だ。
『警備』の第1部隊、『偵察』の第2部隊、『工作』の第3部隊、『補給』の第4部隊、『医療』の第5部隊。
こう聞くと、戦闘員が少なすぎると感じるが、それぞれがそれなりに戦うことができるようだ。
「よっ!新人!」
「あ、どうも。」
明るく声を掛けてくれたのは第2部隊の部隊長のエンソだ。
「話は聞いてるぜ。魔族とタイマン張って生き残ったんだろ?期待してるぜ!」
「期待に添えるように頑張ります。」
他の部隊長達も俺に対して好意的だ。
団長のソフィアが俺のことを認めたのなら、きっと大丈夫だということだろう。
部隊長達のソフィアに対する信頼の厚さが伺える。
パブロの後に続いて部屋を出る。
俺が最初に向かうのは、塔の頂上。
つまり、砦の一番高い場所だ。
状況を見て臨機応変にということだったので、戦況を広く見渡せる場所を選んだ。
パブロに場所の相談した際には、
「ここが砦で一番高い場所です。しかし、かなり高い場所なので降りていくのにも時間がかかってしまいますが…」
「このくらいの高さなら跳び下りるので大丈夫ですよ。」
「ハハハッ、御冗談を。ゼンさんなら本当に跳べそうですけどね。」
「え?本当に跳びますよ。」
「え?」
「え?」
「…」
というやり取りがあったが、最終的には信じてもらうことができた。
塔の頂上から地平線を見渡す。
『…来たか。』
遠くに魔族の群れが見える。
具体的な数までは分からないが、かなりの数の魔族がいるのが分かる。
緑色の塊がこちらに向かって進んでくる様子は、どこか芋虫のようだ。
俺は、子供の頃から虫が苦手だった。
大人になってからはさらに苦手になった。
当時の気持ちを思い出し、若干憂鬱な気持ちになったが、戦いの前に昔を思い出す余裕があるのは悪いことではないだろう。
もし、魔族の群れの色が赤や紫、青だったらどうしようかと不安だったが、今のところ緑色以外は見えない。
しかし、『油断大敵』という言葉がある。気を引き締めていかなければ。
地上に近いところではソフィアが兵士達を激励している。
ソフィアの檄に対する兵士の反応は様々だった。雄叫びを上げる者、表情を硬くし、今にも泣きそうな者、ソフィアをじっと見つめ、剣を掲げる者。
『一人でも多くの命を救う』
戦争では、そんな甘いことを言っていられないのかもしれないが、俺は助けられるのなら全員の命を助けたい。
なぜなら、彼らには帰りを待つ家族がいるはずだからだ。
そして、魔族の群れが段々と近づいてきた。
「撃てぇー!!!」
ソフィアの掛け声で戦闘が始まる。
まずは大砲で遠距離攻撃をする。
今回の戦闘はあくまでも防衛戦だ。
戦術には詳しくないが、平地に打って出るよりも砦を軸に防衛線を引いた方がいいのだろう。
地上に打って出て押し返す必要があるときもあるのかもしれないが、ここまで平坦な地形では得策とは言えないだろう。
この遠距離攻撃でなるべく敵の数を減らしたい。
ただでさえ、魔族の方が戦闘力は高いのだ。
そこに数の暴力まで加わってしまえば勝算はない。
大砲が発射され続けている様子を見るが、緑の魔族は大砲を1発食らったくらいでは死なないらしい。
2、3発食らってようやく倒れている。
個体によっては5発ほど耐えているものもいる。
順調そうに見えるが、どうしても仕留めきれないものが出てきてしまっている。
また、飛行型の魔族だろうか。半分人間、半分鳥のような形をした魔族もこちらへ向かってきている。
兵士達は銃や弓矢を放って対処しているが、鳥型魔族の速度がかなり速く、手を焼いている様子だ。
俺は、事前に用意しておいてもらった野球ボール程の岩を鳥型の魔族に向けて投げつける。
「ほれ。」
「…グェ゙ェ!?」
岩が命中した鳥型魔族は変な声を出して落下していった。
何だか的当てみたいだなと思いながら、どんどん当てて撃墜していく。
もちろん、飛び回っているため外してしまうこともあるが、かなりの確率で命中させることが出来ている。
何故か鳥型魔族が次にどう動くかが、何となく分かるのだ。
気付かないうちに筋肉の動きを観察しているのか、癖を読み取ることが出来ているのか自分にも理由は分からないが、とにかく面白いぐらいに命中している。
「うぉー!!すごい!すごいぞ!!」
「いけー!全部落としちまえー!」
味方の士気が、かなり上がっている。
大砲だけで倒せていなかった魔族も、砦の上から複数人で対処することで何とかなっているようだ。
この調子でいけば、時間はまだかかるが砦を防衛することには成功しそうだ。
しかし、先の見通しがつき、
『もう大丈夫だ』
と安堵してしまうときこそ、災いが降りかかるときなのかもしれない。
轟音を立てて、遠くから何かが飛んでくる。
いや、落ちてくる。
ズドンッと物凄い音を立てて、その"何か"が砦の目の前に落下した。
砂埃が舞っていて、まだ何が落ちてきたかが分からない。
段々と砂埃が晴れ、その正体が明らかになる。
「あー、届かなかったー!おしぃー!」
砂埃の中から現れたのは初めて見る青い魔族だった。




