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質問攻め

その後も年齢や出身地、好きな食べ物や家族構成など、そんなことは強さには関係ないのではないかということまで根掘り葉掘り聞かれた。


「聞けば聞くほど、普通の人間だな。」


貶されているわけではないが、褒められてもいないな。


「ゼンの以前いた世界というのにも興味がある。その世界はこの世界と別の世界なのか?」


「それは俺にもよく分かりません。地名などが似通ってはいますが、文字は全く違いますし、少なくとも俺の世界には魔族は存在していませんでした。」


世界のどこかに悪魔みたいな極悪人はいたかもしれないが、魔族はいなかったはずだ。


「そして、こちらの世界に来てから異様なまでの力を手に入れたと。この世界に来たことが鍵になっているような気もするが…」


そう呟くと、先ほどのパブロのように考え込んでいたが、


「まあ、君のような力を持つものが人間側にいるというだけでありがたい。今は、それでよしとしよう。」


しれっと、呼び方が"お前"から"君"に変わっている。少しは親近感をもってもらえたのだろうか。


「これからの方針を確認しよう。君は仲間との合流を最優先に考えているのだな?」


「はい。」


「つまり、近い内にここを出発すると?」


「そのつもりです。」


「…ふむ、相分かった。きっと、止めても無駄だろう。それに君のことを力づくで止めることができる人間など、この砦にはいないだろうがな。

ちなみに、ここはナガサキという場所だ。フクオカからはさほど遠くない。君ならすぐにでもフクオカに戻れるはずだ。」


「情報、感謝します。食事も毎日食べたいくらい美味しかったです。」


「あんな量を毎日食べられたらたまらん!さっさと出発してくれ!」


そう言うと、シッシッと手を振る動作をする。


「それではこちらへ。」

パブロの後に続いて部屋を出た後に、

『ゼンさえいてくれれば…』というソフィアの声が聞こえたが、ひとり言のようなので敢えて答えなかった。


「質問攻めにしてしまい、すみませんでした。」


「いえ、自分でもこんなやつがいたら、いろいろ気になるだろうなとは思うので。」


「正直に話すと、ゼンさんには砦に残ってほしいんです。今は何とか魔族の侵攻を抑えることができていますが、これから先も抑えることができるとは限らないので…すみません、無理を言ってしまって…」


「…仲間が見つかったらまた来ます。そのときは仲間の分も食事を用意してもらえると助かります。」


「はい、お待ちしています!」


パブロと出口へ向かって歩いていると、こちらへ走ってくる男性が見えた。酷く焦った様子だ。


「部隊長!伝令です!」

男はそう言うと、パブロへ耳打ちをした。


男の言葉を聞き、パブロの表情が変わった。


「それは確かな情報か?」


どうやらあまりいい知らせではないらしい。


「分かった。各部隊長へ伝令を回せ。」


「ハッ!」


「ゼンさん、すみません。お見送りはできそうもありません。」


「何か問題が?」


「以前から確認されていた魔族の群れがこの砦へ向けて進軍してきているとの情報が入りました。今すぐ砦を出発されるのがいいかと思われます。」


「勝算はあるんですか?」


「大丈夫です。今までも食い止めてきましたから。」


パブロは嘘をついている。

確かに今までも侵攻を止めてきているのは真実だろう。

しかし、伝令の焦り方やパブロの表情を見る限り、今回の事態はただ事ではなさそうだ。


砦の規模を見ても、そこまで大量の戦闘員がいるとも思えない。


「俺に何か手伝えることはありませんか?」


「でも、仲間の方と合流を急ぐんじゃ…」


「食事をまた御馳走してもらう約束を守ってもらわないといけないのでね。」


「…ありがとうございます。では、団長のところに戻りましょう。」


ルシアとミゲルのことは気になるが、目の前の人々の命を見捨てられるほど俺の心は腐っていないようだ。


「団長!」


「ああ、だいたいは聞いた。しかし、何故まだ君がここにいる?」


「"働かざる者食うべからず"ってやつですよ。」


「ん?」


「え?」


「…」


やはり、この世界では、ことわざというものが伝わらないらしい。


「…まあ、そんなことよりも俺は何をすればいいですか?」


「自由に動き回り、なるべく被害を抑えてくれ。」


「分かりました。」


「具体的な指示でなくてすまないな。しかし、戦場というのは決まり切ったことばかりが起きるとは限らない。それに、共に訓練をしていない者同士が急に息を合わせるのも困難であろう。」


ソフィアの言っていることは一理ある。さすがは指揮官といったところか。


「さあ、装備を整えるぞ。ついて来い。」


ソフィアに着いていくと金属の扉が現れた。


「ここが武器庫だ。そこまで上等な物は残っていないだろうが無いよりはマシだろう。好きなものを選ぶといい。」


部屋を見渡すと様々な武器がある。剣や斧のような見知ったものもあれば、どう使うのかが分からないものもある。


「それでは、これをお借りします。」


俺に武術の心得はない。今の俺の強みと言えば、この身体能力だろう。

特にパワーに関しては普通の兵士とは比べ物にならないはずだ。


"重量こそ正義"ということと、リーチの長い方が戦闘に有利であろうという素人考えではあるが、他にいい考えが浮かばないため、この場で一番重そうで長い大剣を選んだ。


「ああ…それは作ったはいいものの、重すぎて誰も充分に扱えなかった剣だ。本当にそれでいいのか?」


「はい、これでお願いします。」


充分に扱えることを示すため、片手で剣を持ち上げる。


「よし、それでは戦場へと向かおうか。」




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