人間の罪
「殺してやるッ!」
先頭を走る金髪の女性は俺に明らかな敵意を持っているようだ。いや、殺すと言っているし、殺意と言うべきか。
「おい!俺は魔族じゃない!人間だ!」
「戯言を!"大罪の森"から出てくるのが人間な訳がないだろう!」
どうやら、俺が出て来た場所が問題だったようだ。
しかし、木が高すぎること以外は特に変わったところがない森だったはずだが。
「とにかく、俺は人間だ!どうすれば信じてもらえる?」
「証明など必要ない!この場で死ね!」
そう言うと、剣を振り上げ、こちらへ襲いかかってくる。
「うわっ!だから、魔族じゃないって!」
魔族と戦った経験からか、攻撃自体は難なくかわすことが出来る。
相手は人間だ。
つまり、敵ではない。
こちらも攻撃してしまうと、魔族だろうが人間だろうが、いよいよ敵対関係になってしまうだろう。
話を聞いてもらえるまで、避け続けるしかないようだ。
しばらく、膠着状態が続いた。
もちろん、俺は一切攻撃をしていない。
「くっ!やはり、魔族にはこの程度の攻撃では通じないか…」
しばらくすると、彼女の仲間だろうか。10人程の集団が現れた。
「団長!危険です!一人で突っ込まないでください!」
「パブロ!陣形をとれ!奴の息の根を止めるぞ!」
「…?団長、何で人間と戦っているんですか?」
「人間!?お前には、奴が人間に見えるのか!?」
「え?は、はい…どう見ても人間に見えますけど…」
「なッ!?お前、人間…なの…か?」
「だから、さっきから人間だって言ってるじゃないか…」
「………」
「…オホン!これは失礼した!大罪の森から出てきたのが、まさか人間とはな!」
何か笑って誤魔化されているが先程まで殺されかけていたため釈然としない。
しかし、誤解が解けたため、よしとしよう。
「すみません、無礼をお許しください。」
そう言うと、パブロと呼ばれた男性が頭を下げてきた。
「いえ、分かっていただけたみたいなので大丈夫です。」
「寛大なご対応、ありがとうございます。私は、この近くを拠点に活動をしている"エグリゴリ"の部隊長のパブロと申します。」
「こちらこそ、ご丁寧にありがとうございます。私は善といいます。」
「失礼を承知でもう一度聞かせていただきたいのですが、あなたは人間ですよね?」
「はい、人間です。」
「そうですよね…見た目も人間ですし…」
ここまで疑われるのは、やはり彼らが"大罪の森"と呼ぶ森から来たのが原因なのだろうか。
「あの、あの森から来ると何か問題があったりするんですか?」
「…?大罪の森を御存知ないんですか?」
「はい、お恥ずかしながらこの辺りの土地勘が無いもので…」
「大罪の森とは、遥か昔に人間が罪を犯し、人間が立ち入ることが出来なくなった森です。」
「罪…ですか?」
「はい、罪と言っても何をしたのかは分かりませんが…」
「でも、それだけでは私が魔族であると疑う理由にはならないのでは?」
「それが…森に入って出てきた人間はいないんです。魔族が出入りしているのを見た者はいるのですが…」
なるほど、それで団長は俺のことを魔族だと判断したのか。
そうはいっても早とちりもいいところだ。
「あ、あの…すまなかったな…魔族と勘違いして…」
バツが悪そうに改めて謝罪をしてくる。
笑って誤魔化すのも違うと、思い直してくれたのだろう。
「いえ、事情は把握しました。幸い私も怪我をしていませんし、問題ないです。」
「お詫びと言ってはなんだが、我らの拠点で食事でも振る舞わせてくれないか?まあ、無理にとは言わないが…」
「分かりました。私もこの辺りのことについて詳しく聞きたいので、ぜひともよろしくお願いします。」
「よし、そうと決まれば…皆の者!砦へ戻るぞ!
我のガルーダに乗るといい。さあ、後ろに乗れ。」
この生き物はガルーダと言うらしい。随分と神々しい名前だ。
「自己紹介が遅くなってしまったな。我の名はソフィアだ。お主の名は善だったか?どこから来たのだ?」
その後、砦へ着くまでの間、俺がここへ辿り着くまでの経緯を一通り説明した。
「ふむ…魔族も乗ることが出来るポータルか…しかも、わざわざ地下に隠されていたというのも…」
俺の話を聞き、状況を整理するためか独り言を呟いている。
「それに何よりもお主が魔族と戦い、打ち勝ったというのが気になる。お主が戦ったのは人の姿に似た魔族と言ったな?」
「はい、人とほとんど姿が変わらずに人とは比べ物にならないほど強かったです。雷を使われたときはもう駄目かと思いましたよ。」
「その魔族、眼が紫と言ったな?」
「はい、確かに紫色でした。」
「紫か…聞いたことがないな。赤や青といったものは聞いたことがあるが…
それにしても、青眼の魔族に会ったのによく生きていられたな。」
「ポータルを使ったのは半分賭けでしたよ。本来なら魔族がいると作動しないと聞いていたので。」
「…青眼の魔族は強かったか?」
「はい、他の魔族とは比べ物にならないくらいの強さでした。」
「そうか、それならなぜ立ち向かうことが出来た?絶対的な力の差を感じたはずであろう?」
「もちろん逃げ出したかったですが…守らなきゃいけない人がいたので。」
「そうか…お主は強いのだな。」
そう言うと、どこか遠い目をしていた。
何か思う事があるのだろう。
「さあ、着いたぞ。ようこそ、我らが砦へ。」




