連戦
改めて、息を引き取った魔族を観察してみる。
やはり、見た目は人間とさほど変わりはない。
この世界に来て、いろいろな未知のものを見てきているので、こういう人種がいると言われれば納得してしまうかもしれない。
しかし、戦闘力は桁違いだった。パワー、スピードもそうだが、雷まで使うとは…
アニメや漫画であれば、かなりの強キャラの能力である。
人類側が劣勢というのも頷ける強さだった。
こいつが使っていたのは魔法か?
以前、ルシアも魔法を使っていたが、こういった攻撃魔法のようなものも使えるのだろうか。
また時間があるときにでも聞いてみよう。
教えてもらえれば戦いに利用出来るかもしれない。
それにしても、魔族が最後に残した言葉が引っかかる。
俺の目を見て、何かに気付いていた。
ちなみに俺の目は至って普通だ。
瞼は二重。黒目の色も、普通の黒だ。
しかし、問い詰めようにも魔族は事切れている。
考えても仕方ない。
まずは、二人が逃げた先に向かおう。
負傷した身体を自ら労りながら、二人が走り去った方向へ進もうとしたとき、俺の背後で物凄い地響きがした。
音に驚き振り向くと、そこには髭を蓄えた体格のいい男がいた。
俺が倒した魔族とは違い、青い目をしている。
「…ヴィオラを殺したのは貴様か?」
そいつの足元が抉れている。
俺がルシアの村で大ジャンプをした後の地面の様子に似ている。
きっと、空から降ってきたのだろう。
まずい、気配だけで分かる。
こいつは俺よりも遥かに強い。格が違う。
以前、山で熊に遭遇したことがある。命からがら逃げることが出来たが、その時の感覚に近い。
全身の細胞が『今すぐ逃げろ』と警告している。
「もう一度聞く。ヴィオラを殺したのは貴様か?」
「ヴィオラ?誰だそれは?」
「あそこで死んでいる者の名だ。貴様が殺したのか?」
「ああ、俺が殺した。復讐でもしにきたのか?」
「復讐?なぜだ?貴様は、何か卑怯な手を使って奴を殺したのか?」
「いや、1対1で正々堂々戦って、俺が勝った。」
「それならば、何の問題がある?」
「いや、お前、多分あいつの仲間なんだろ?仲間がやられたら敵討ちとかしないか?」
「強者が勝利し、弱者が敗北する。それが自然の摂理というものだ。そして、奴は敗北した。ただそれだけだ。」
魔族には仲間意識がないのか?
それならば、上手くこの場を切り抜けられるかもしれない。
「そうかい。じゃあ、俺は行かなきゃいけないところがあるから失礼するよ。」
「待て。貴様に用が無いとは言っていないぞ。」
「あいにく俺はあんたに用が無いんでね。」
「人の身体で魔族に勝った貴様に興味が湧いた。」
「残念ながら俺はあんたに興味はない。俺と話がしたければ綺麗なお姉さんでも連れてくるんだな。」
「減らず口を叩いている暇はないぞ、本気を出せ。さもなくば…死ぬぞ。」
言葉を言い終えると同時に奴が目の前に迫り、俺の顔面目掛けて攻撃を仕掛けてきた。
「…ッ!!」
攻撃は防いだはず。
しかし、攻撃をもろに喰らってしまったかの衝撃が両腕から全身に伝わる。
そして、その衝撃に飛ばされ、教会の中へ飛ばされた。
先程と同じ光景、同じ天井が見える。
「本気の一撃ではないとは言え、我の攻撃を防ぎ、意識もあるとは…期待以上だ。」
目線を下ろすと、両腕がだらんと垂れ下がっている。
腕に力が入らない。
あれだけの攻撃を受けたのだから、腕が千切れなかっただけ、まだマシか。
「とはいえ、その腕では話にならんか…もう少し楽しめると思ったのだが…」
「おいおい、勝手に終わりにするなよ。まだ俺は生きてるぞ。」
「その根性だけは認めてやろう。貴様に敬意を払い、最後まで相手をしてやる。」
奴の拳が再び俺を襲う。振り下ろされた拳を受けると、その重みに耐えきれず床が抜けてしまった。
落下した先は、あの赤い魔族と戦った広間だ。
「人間とは弱く、脆い生き物だ。貴様も魔族であれば…実に惜しい。」
「何勝った気でいるんだよ。まだまだこれからだろ?」
「くどいぞ。根性は認めてやるとは言ったが、貴様はここまでだ。」
こいつは絶対に倒さなければいけない。
もしここで俺が死んだら、ルシアとミゲルの身が危険だ。
だが、俺がこいつに勝つ方法が全く想像出来ない。
こいつを2人から遠ざける方法があるとすれば…
"あれ"をやるしかないか。
成功するかは分からない。でも、やるしかない。
「次は俺の番だな。」
「…まあ、よい。かかってくるがいい。」
全身がバネになったようなイメージで身体を縮める。
そして、その力を使って奴に向かって飛び、身体ごとぶつける。
一応、腕でも押してはいるが、ほとんど力が入らないため身体を使って押し込んでいく。
「ふん、なかなかのスピードだ。しかし、これにいったい何の意味があるというのだ?」
「お前、旅は好きか?」
「旅?…貴様!?まさか!」
「せっかくの二人旅だ。仲良くしようぜ。」
そして、俺達は光に包まれた。




