山登り
昨日もまた夢を見た。
元々、あまり夢を見るタイプではないのだが、この世界に来てからよく夢を見るようになった。
内容としては、元の世界の日常が主な内容である。
特に変わり映えしない平凡な内容だ。
この世界に比べると、元の世界はとても平和だった。
しかし、それは俺が日本にいたからであって他の国に住んでいたらそうではなかったかもしれない。
元の世界では戦争や紛争が起こり続けていた。
この世界も元の世界も争う相手が違うだけで、結局は同じなのかもしれない。
人間は何か共通の敵がいないと団結できないのではないかと考えると、実に嫌な生き物だ。
まあ、俺もその人間の内の一人なのだが…
ベッドから起きて支度をする。
不思議なことに、この世界で目が覚めたときに着ていた服は、元の世界の物ではなかった。
部屋で眠る時に着ていた半袖半ズボンはどこかに消えてしまった。
俺の寝間着を返してほしい…
まあ、セール品の寝間着代わりに服が手に入ったのだから良しとしよう。
寝室から出て居間に出る。
まだ誰も部屋から出てきていない。
どうやら、俺が一番乗りのようだ。
外の空気を吸おうと、玄関から外に出る。
外に出ると心地よい風を感じた。
高原の朝といった感じの雰囲気だ。ちなみにここが高原かどうかは知らないので深くツッコまないでほしい。
今、季節はいつなのだろう。
8月にしては涼しく感じる。
そもそも、この世界に四季があるかは分からないが、真夏という気がしない。
徐々に太陽が出て、日差しが強くなってきた。
…ここまで来ると、あれが太陽かどうかも怪しくなってきたな…
物思いにふけっていると玄関の扉が開いた。
「あ、おはようございます。もう起きてたんですね。」
「おはよう。昨日はゆっくり眠れたか?」
「はい、バッチリです!」
「ミゲルは、まだ眠ってるか?」
「いえ、眠そうにはしていましたが、もう起きてましたよ。」
部屋に戻るとミゲルが目を擦りながら椅子に座っていた。
「おはよう、ミゲル。」
「…!」
ミゲルがこちらに手を挙げる。
きっと、『おはよう』というジェスチャーだろう。
俺達は朝食を済ませ、身支度をし、教会へ向かった。
場合によっては、そのままポータルに乗るつもりだったため、結構な大荷物だ。
しかし、今の俺にとってはこの位の重さは大した事ない。
昨日、通った山道を登っていく。
二人も今のところは着いてこれている。
ルシアはわりと余裕がありそうだ。
ミゲルの額にうっすらと汗が見える。
「ミゲル、大丈夫か?」
「…!」
ミゲルが力強く頷く。まだまだ大丈夫そうだ。
念の為に感覚を研ぎ澄ませながら、歩いていく。
周囲には動物達の気配のみで、特に不審な点はない。
しばらく、険しい山道を登っていくと目的地が近付いてきた。
「よし、着いたぞ。」
「わあー、大きいですね。」
「中に入るぞ…!?」
入り口の穴から中に入ろうとした時、背後からとんでもない気配を感じた。
二人を連れて、すぐにそこから離れようと思ったときには既に手遅れだった。
「あれぇー?何でここに人間がいるんだ?」
その声に反応して振り向く。
その声の主は男?だよな?
身長は俺と同じ位に見える。
一見、人間のように見えるが、明らかに気配が違う。
「…ゼンさん。」
「ああ、分かってる。」
言葉は交わさずとも、ルシアの意図は分かる。
まずはミゲルをどうにかして逃さないといけない。
ミゲルの表情を見る。
ミゲルの様子がおかしい。
「…ぁ…ぁ…」
声にならない声を出して震えている。
「うーん、どうしようかなあ…」
謎の人物が顎に手を当て、考える素振りをする。
「まあ、いいや。」
そう呟くと、瞬間移動したかのように俺達の目の前に現れた。
「めんどくさいから、お前ら死んじゃえ。」




