30回目の誕生日
ーーーーどうやら寝てしまっていたらしい。
最近は、疲れきった体にムチを打って何とか風呂に入り、そのまま死んだように寝てしまい、気付いたら朝なんてことも日常茶飯事だ。
眠い目を擦りながら時計に視線を向けると、時計の針は午後11時50分を指していた。
誕生日になる瞬間には何とか起きていられそうだ。
年齢が1つ増えたからといって何かが変わるわけではないが、こういうイベントは意外と大事にするタイプだ。
それに、20代最後というのも趣き深い。
写真を見ながら、20代の思い出に浸っていると、スマホの画面が光った。通知を見てみると、
「誕生日おめでとう!いよいよ、30歳か…もう、おじさんだね!」
と、祝っているのか、馬鹿にしているのか分からないようなLINEが幼なじみから届いていた。
きっと、彼女のことだから悪意なく素直に思ったことを言ってるんだろうという想像がつく。
だから、あまり悪い気はしない。
しかし、まだ日付は変わっていない。
そう、フライングである。
ただ、日付が変わったらすぐにお祝いしようと思って準備していてくれたことを考えると、粗探しのように指摘するのも野暮な気がして、
「ありがとう。おっさんより。」
とだけ返信をしておいた。
スマホの時間を見ると、23時59分。日付が変わるまで、あと1分を切っていた。
「30歳もいい年になりますように。」
そんな、新年の挨拶のような言葉を呟いたとき、時計の時間が0時00分を示した。
そして、その瞬間に俺の意識は遠のいていった。